坂元裕二氏ら輩出『フジテレビヤングシナリオ大賞』、大賞に36歳の会社員・石田真裕子氏「戸惑う気持ち半分」
フジテレビで6日、『第36回フジテレビヤングシナリオ大賞』記者会見が行われた。大賞(賞金300万円)は『人質は脚本家』会社員の石田真裕子(いしだ・まゆこ、36)氏に決定。また、佳作(賞金50万円)には『天才クイズアカデミー』ゲーム会社勤務の三嶽咲(みたけ・さき、33)氏に決まった。

『人質は脚本家』で大賞受賞、応募総数は1585編
フジテレビで6日、『第36回フジテレビヤングシナリオ大賞』記者会見が行われた。大賞(賞金300万円)は『人質は脚本家』会社員の石田真裕子(いしだ・まゆこ、36)氏、佳作(賞金50万円)には『天才クイズアカデミー』ゲーム会社勤務の三嶽咲(みたけ・さき、33)氏に決まった。
ヤングシナリオ大賞は、過去に坂元裕二氏、野木亜紀子氏などの名脚本家を輩出してきたコンクール。応募総数は1585編(前回1679編)。平均年齢は33.7歳(前回28.8歳)、最年少応募者13歳(前回13歳)、最年長応募者75歳(前回74歳)。
石田氏の選考理由は「このキャラクターたちとシチュエーションを思いついたことが勝利だったのかもしれません。ある種リアリティは度外視したファンタジーのようなコメディで、どうすれば面白い状況になるかだけをシンプルに突き詰めていった印象です。かと思えば、そこにいる人物たちの台詞はすごく現実的でそのミスマッチが笑いを誘う…状況はおかしいのに話す言葉はリアルという”熱を出した時に見る夢”のような脚本に、ページをめくる手が止まりませんでした。発想の力・台詞の力を感じ、大賞に選出いたしました」と説明された。
大賞を受賞した石田氏は「私は唯一の趣味がテレビドラマを見ることです。今までたくさん見てきたドラマが今の自分を作ってると言っても過言ではないかなと思います。ただ書くことに関してはすごく初心者なので、私なんかが大賞でいいんだろうかと戸惑う気持ちもまだ半分ぐらいあるというのが正直な気持ちです。なので、少しでも早く一人前の脚本家になれるように、今度は私が誰かの人生にとって大切なドラマを書けるように、ここから精一杯頑張っていきたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします」と意気込んだ。
脚本家を目指すきっかけは「元々大学生ぐらいまでは小説家になりたいなと思って小説を書いていたんですが、その夢は一旦そこで諦めて社会人生活をしばらく続けていました。2年前くらい前にまた物語を作るっていう夢をもう1回追いかけたいなと思った時に、もともとテレビドラマがすごく好きだったということもあって、脚本書いてみようかなと思い立ったいきさつです」と説明した。
お気に入りの作品についても「大好きなドラマはものすごくたくさんあるんですけど、三谷幸喜さんとか宮藤官九郎さんのようなわかりやすい天才的なコメディ、ああいうのが書けたらいいなと思います」と憧れを明かした。
今後の活動についても「とにかく自分が面白いドラマが好きなので、面白いドラマが描きたいです。なおかつ私は今普通の会社員で子育てもしていて、普通の母親なので、その辺りの視点をきちんと落とし込んだドラマが書けたら、自分らしさが出るんじゃないかなと思っています。コメディが書いてみたいです」と話した。
シナリオの書き方は“独学”。「特に教室とかには通っていなくて、本を買ったりとか、プロの方のシナリオを読んでみたりとか、そういう勉強方法をしてきました」と振り返る。
自身の強みを聞かれると、「正直、シナリオ書き始めてかなり日が浅く、あまり自分の強みをよく分かっていないんですけど、ドラマをたくさん見てきたことかなと思います」とアピールした。
『第37回フジテレビヤングシナリオ大賞』は25年3月中旬より募集を開始。締め切りは5月15日午後11時59分まで。発表は25年冬頃を予定している。募集要項・募集規約は、募集開始時にフジテレビホームページ内「ヤングシナリオ大賞」で発表される。
作品紹介
『人質は脚本家』
脚本家の小泉拓哉(35)は5年前に担当したドラマ「ルーザー」の失敗をきっかけに脚本が書けなくなっていた。ある日拓哉は郵便局で人質事件に巻き込まれる。しかし様子のおかしい犯人の三枝誠(60)。三枝は生き別れた娘に会いたいー心で事件を起こしたのだと泣き崩れる。計画性の無い三枝にやめるよう説得する拓哉だが三枝の意志は頑なだ。三枝は「ルーザー」で失敗ばかりの主人公が何度もやり直し前を向く姿に励まされたという。拓哉が「ルーザー」の脚本家だと知った三枝は事件の脚本を書いて欲しいと無茶な依頼をする。仕方なく引き受けることにした拓哉。まずはパソコンが必要だと局員を一人連れてきてもらう。そこで名乗りをあげたのが拓哉の元カノ・鮫島音(35)だった。「ルーザー」の最終回のやけくそなセリフが好きだったと拓哉に伝えて去っていく音。拓哉は猛スピードで脚本を書きあげる。脚本通りに演じる三枝と、警察官2人との間で巻き起こる、噛み合ったり噛み合わなかったりするちぐはぐなやり取り。滅茶苦茶だが楽しそうな三枝に拓哉は思わず、自分は失敗するのが怖くていつも逃げてきたことを打ち明ける。すると三枝もまた「ルーザー」の最終回のやけくそなセリフが好きだったと拓哉に伝える。
脚本のフィナーレ。ギターを片手に歌う三枝のもとに音がやってくる。三枝の娘は音だった。怒り狂う音にショックを受けた三枝は自暴自棄になり拓哉に拳銃を突きつける。絶対絶命のピンチの瞬間、拓哉は音と三枝の言葉を思い出す。「ルーザー」の最終回のやけくそなセリフ。それはまさに自分自身に向けた「失敗してもやり直せばいい」というメッセージだった。セリフを叫ぶ拓哉に驚き拳銃を落とす三枝。三枝は駆け付けた警察官に取り押さえられ、事件は終焉を迎えた。三枝の乗るパトカーに向かって「頑張れルーザー」と叫ぶ拓哉と音。そして拓哉自身もまた「やり直す」決意を新たにするのだった。
