『おむすび』のクセ強薬剤師でインパクト大…女優・辻凪子の素顔「私自身は“ザ普通の人間”」
俳優・辻凪子が薬剤師・篠宮朱里役で出演するNHK連続テレビ小説『おむすび』(月~土曜午前8時)について取材に応じ、役作りの様子や役と自身と相違、さらに今後の抱負などを明かした。演じる篠宮は主人公・米田結(橋本環奈)が勤務する病院の薬剤師。協調性ゼロの設定で抑揚のない低い声で話すなど独特の雰囲気を漂わせる。SNSでは「クセ強」「面白い」「ちびまる子ちゃんの野口さんタイプ」と言った声が飛び交うなど注目を集めている。

『おむすび』で風変りな篠宮朱里役 大学時代から映画監督、「劇団間座」に参加
俳優・辻凪子が薬剤師・篠宮朱里役で出演するNHK連続テレビ小説『おむすび』(月~土曜午前8時)について取材に応じ、役作りの様子や役と自身と相違、さらに今後の抱負などを明かした。演じる篠宮は主人公・米田結(橋本環奈)が勤務する病院の薬剤師。協調性ゼロの設定で抑揚のない低い声で話すなど独特の雰囲気を漂わせる。SNSでは「クセ強」「面白い」「ちびまる子ちゃんの野口さんタイプ」と言った声が飛び交うなど注目を集めている。(取材・文=中野由喜)
今回で朝ドラは8作目の出演となる。これまでの朝ドラへの思いを尋ねた。
「大学生の時からヒロインオーディションがある時は毎回受けていました。2次、3次審査と進める時もありましたが、最終的には今年もヒロインになれなかったという連続でした。でも、朝ドラはたくさんの役があるので、その中のどれかを演じたいという思いがいつもあり、毎年、初詣に行くと神社で『朝ドラに出られますように』と願っていました」
今回、出演者が決まった際はどんな気持ちだったのか。
「今まで7作品出演させていただいていますが、今回が一番長く出演する役なんです。大阪出身の私はこれまで関西弁を強みに演じてきましたが、今回は標準語の役です。役者・辻凪子に出てほしいと言われている気がしました。今まであきらめずにお芝居を続けてきて良かったと思いました」
取材時の辻はユニークなキャラの篠宮とは違い、明るくさわやかな印象。役作りが気になる。
「どう演じようかとなった時、脚本家の根本さんから篠宮のプロフィールを頂いたんです。神奈川県出身、協調性ゼロでちょっと風変わりな人と書いてありました。私自身は“ザ普通の人間”。辻凪子として演じたら普通になってしまうので、しゃべりだした瞬間から変わった人に思われるようにと考え、普段の声より2オクターブ低い声で演じようと決めました」
アニメの野口さんタイプとの声もある。
「私が演じるなら、ただ変な人ではなく愛嬌のある、ユーモアのある人にしたかったということです。演じるにあたって自分と違う人になれるのがすごく楽しくて……。いつもの自分とは違う顔を作品で見たいので結構、役作りします。全部の作品が違う人でありたいという思いから声のトーン、見た目、姿勢、内側、外側からも作っていきます」
篠宮は猫好きで同じTシャツ10枚所有し、酒癖がちょっと悪い設定。辻との相違点を聞いてみた。
「好きなことにガーッと向かう点は似ていると思います。声のトーンは違うもののボソボソとしゃべるのは似ているかもしれません。違う点は、私、酒グセは悪くないです。ひょう変もしません。普段は明るく、周りの空気を読み、人が好きで、誰とでも仲良くなれるタイプだと思います」

個性派演じ「今までで一番、大きな反響です」
インパクト大の役。周囲の反響も気になる。
「今までで一番、大きな反響です。朝ドラの力はすごいと思いました。一番うれしかったのは辻凪子ではなく篠宮さんがトレンドに入りしたこと。演じた役を視聴者さんが気になってくれたことはうれしかったですね。お母さんが私の演技を見ていつも笑っているので、多分、家でも笑ってくれていると思います」
辻は2015年の20歳の時に映画監督を務め、長編映画にも出演した。16年には間寛平の劇団『劇団間座』に参加するなど幅広く活躍している。そもそもなぜこの世界で生きようと思ったのだろう。
「最初はお笑い芸人になりたかったんです。小学生の時です。でも、すごく引っ込み思案で人前に出るのが苦手で、人前でしゃべると涙が出てきてしまうような子でした。私には人前に立って人を笑わせることは無理だと思っていました。でも中学時代に全校生徒の前でお芝居をする機会があり、犬を演じた時、私が放ったあるセリフで全校生徒600人が爆笑したんです。顔は出ていますが犬の着ぐるみを着ていたので全然、恥ずかしくありませんでした。その時、自分は役を通してなら人前で面白いことができるんだと気付きました。それで役者になろう、コメディエンヌを目指そうと思いました」
根底にあるのは人を笑わせ楽しませることが大好きという思い。引っ込み思案だが役を通してなら秘める力を発揮でき、根底にある思いを実現できる。全校生徒が笑った時は辻の生きる道が見えた瞬間でもあった。
「『Mr.ビーン』が大好きで、演じているイギリスの俳優・ローワン・アトキンソンさんは自分で脚本も書き、動きで人を笑わせるんです。私もできるんじゃないかなと思って大学時代に自分で脚本を書き、映画を作り始めました」
今後エンタメの世界で目指すことを尋ねた。
「女優としては息の長い女優さんになりたいです。おばあちゃんになっても朝ドラに出続けたいという思いがあります」
朝ドラにこだわるのはなぜ?
「朝ドラは見ていて元気をもらえるじゃないですか。これから仕事に行く人を楽しませたり、皆さんが明るい朝を迎えられるようにできる女優さんになりたいです」
監督としての夢はどうか。
「映画が好きなので、映画館を盛り上げられるようになりたいです。今、配信が多い時代なので映画館に足を運んでくれる人が少なくなっている気がしますので」
作りたい作品、演じたい役を聞くと根底にある思いがあふれてきた。
「憧れのMr.ビーンになりたいというのもありますが、テレビに人が戻ってきてくれるようにコント番組をやりたいです。志村けんさんのバカ殿みたいなコント。もう一つは、日本で一番尊敬するコメディアンの間寛平さんとまた舞台で共演したいです。寛平さんが自らの体を使って全身全霊で人を笑わす姿に、自らアホを演じ、アホになりきって人を笑わせる姿に本当に感動します。だから私も人を笑わすため、いつまでも“アホでいたい”と思います(笑)。それが私の芯になるものかもしれません」
□辻凪子(つじ・なぎこ)1995年9月1日、大阪生まれ。京都造形芸術大学映画学科俳優コースに進学し、関西を中心に舞台やインディーズ映画に出演。2016年には間寛平の劇団「劇団間座」に参加。同年後期のNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』に出演以降、17年後期『わろてんか』、18年後期『まんぷく』、19年前期『なつぞら』、19年後期『スカーレット』、20年後期『おちょやん』、23年後期『ブギウギ』に出演し、朝ドラは『おむすび』が8作目。俳優としてだけでなく映画監督としても活躍。大学2年の時に『ゆれてますけど。』で初監督を務め、22年の『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』まで6作品を手掛ける。特技はアコーディオン。
