スーパー撤退の過疎地にコンビニ出店、なぜ好調? “買い物難民”救うだけじゃない店舗運営の工夫

スーパーマーケットが撤退した跡地に、あえてコンビニエンスストアを出店――。大手コンビニチェーン「ローソン」が、過疎地への新規出店を進めている。人口減少・少子高齢化によって、地方では“買い物難民”の問題が深刻化。そこで、地域のスーパーや生鮮品販売店が維持できなくなったエリアを対象とし、「生活インフラの確保」を念頭に、出店を強化しているのだ。地域事情に合わせて生鮮食品を充実させたり、コミュニティースペースを設置するなど工夫を凝らしている。そもそも、スーパーでさえ経営が厳しくなった地域で採算はとれるのか。同社に実情を聞いた。

肉パック商品がコンビニの冷凍ケースにぎっしり【写真:ローソン提供】
肉パック商品がコンビニの冷凍ケースにぎっしり【写真:ローソン提供】

和歌山、北海道、長野、大分、鳥取などで続々開店 ローソン「社会インフラとしての役割」

 スーパーマーケットが撤退した跡地に、あえてコンビニエンスストアを出店――。大手コンビニチェーン「ローソン」が、過疎地への新規出店を進めている。人口減少・少子高齢化によって、地方では“買い物難民”の問題が深刻化。そこで、地域のスーパーや生鮮品販売店が維持できなくなったエリアを対象とし、「生活インフラの確保」を念頭に、出店を強化しているのだ。地域事情に合わせて生鮮食品を充実させたり、コミュニティースペースを設置するなど工夫を凝らしている。そもそも、スーパーでさえ経営が厳しくなった地域で採算はとれるのか。同社に実情を聞いた。(取材・文=吉原知也)

 冷凍ケースに、鶏のムネ肉・モモ肉、国産牛のロースステーキや、ロースショウガ焼き用豚肉などのパックが敷き詰められている。店内の一角や冷蔵コーナーには、ダイコンやキャベツ、タマネギやキノコ類といった野菜に加えて、果物が何種類も置かれている。魚の干物などの冷凍食品も充実した品ぞろえだ。これはコンビニの商品売り場。2024年10月に、スーパー跡地に出店した「ローソン龍神村西店」だ。

 同店は、和歌山・田辺市の山間部にある。高齢化が進む地域では、23年7月に地域唯一のスーパーが閉店してしまい、最寄りのスーパーまで車で30分以上かかる状況になっていた。同社は出店計画を検討。最寄りのローソン店舗まで約18キロで物流網が確保できたこともあり、出店が実現したという。

 和歌山以外にも、北海道や長野、大分などでスーパー跡地がローソン店舗に生まれ変わっている。地方の過疎エリアへの出店攻勢。その理由についてローソンの担当者は「地方・都市部にかかわらず、少子高齢化や人口減少の影響などで地域のスーパーが閉店することで、買い物困難な方が増えてきています。また、全国には、公共料金の支払いやチケットの発券をするだけでも車で長時間移動しなければならないエリアがあります。ローソンは約3500種類の商品をそろえています。生活必需品だけでなく、マルチメディア端末やATMなどのサービスも充実しているコンビニが買い物困難エリアに出店することで、社会インフラとしての役割を果たせると考えています」と、コンビニの存在意義を強調する。

 ただ、企業活動を行ううえで、「利益の追求」は前提条件だ。それに、出店した以上は店舗運営を継続していかなければ、地域のためにならない。売り上げを見込んだ出店計画であるのか。スーパーが諦めたエリアで採算をとれるのか。気になるところだ。

「ローソンでは、以前より生活インフラとして地方への出店を進めています。特に地方では、高齢化・人口減少による買い場の減少が進んでおり、自治体からの出店要請も増えてきています。出店にあたっては、ビジネスとして成り立つことを前提に事前に商圏調査を行い、深夜帯の来客が見込めない立地については、時短営業を実施することで店舗運営を維持できるようにしています」と担当者。

 コンビニはスーパーよりも小商圏・少人数で営業できる業態であること、全国各地に細かく物流網が構築されているといった特長があり、「生鮮品や冷凍食品など生活ニーズに合った品ぞろえをすることで、お買い上げ点数や単価が上がり、店舗運営を維持できると考えています」。高い客単価での売り上げが見込まれ、商機を見いだしているとのことだ。

スーパー跡地に出店したローソン龍神村西店【写真:ローソン提供】
スーパー跡地に出店したローソン龍神村西店【写真:ローソン提供】

地域事情に合わせた店舗づくり、「憩いの場」を整備

 閉店したスーパー跡地に出店した事例では、「想定以上の売り上げ」(担当者)になっている店舗があるという。24年4月に北海道・厚真町でオープンした「上厚真店」は、想定の3割超の売上を記録。近隣にスーパーがなく、最寄りのコンビニまで約10キロの困難エリア。買い物に困っている地域住民に重宝されているという。同年11月に開店した鳥取・八頭町の「八頭町丹比店」は想定通りの売上になっており、同社は成功と位置付けている。

 地域の特色に合わせた店舗づくりも、大きなポイント。担当者は「取り扱い商品や店舗のレイアウトをエリアや町の特性に合わせて展開しています。和歌山の龍神村西店では、憩いの場としてご利用いただけるように、小上がり式のイートインスペースを導入したほか、商品についても野菜・魚・肉を充実させることで多くの方に日常的にご利用いただいています」と説明する。北海道の上厚真店でも、木製の棚に工芸品を飾るなど、アットホームなコミュニティースペースを設けている。

 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の統計資料によると、最新の国内のコンビニ店舗数は5万5732店。近年は飽和状態であることが指摘されている一方で、「いつでもどこでも買い物ができる」という社会的ニーズが高まっていることも確かだ。同社は「人口減・高齢化などによって、地域のスーパーや生鮮品販売店が維持できなくなったエリアや、物流負荷の大きさなどからローソンがこれまで出店できていなかったエリアに、自治体や地元企業、地域の皆さんと連携をすることで、誰もが便利に楽しくお買い物を続けていける“地域共生コンビニ”の実現に取り組んでいます。日本が抱える課題をローソンがハブとなり解決できると考えています」と今後の展望を明かした。長期的な構想としては「ハッピー・ローソンタウン」と銘打ち、商品をドローンやロボットを駆使した住宅への配送、医療や介護・保育のサービスを提供するなど、地域全体を支える取り組みを推し進めていくという。

次のページへ (2/2) 【写真】スーパー跡地が生まれ変わった注目コンビニ、店舗の実際の様子
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