キャンプ場でガス缶爆発、事故はなぜ起きた? “原因究明”の管理人投稿が反響「とても勉強になりました」

先月24日、神奈川県内のキャンプ場で調理用のカセットボンベ(CB)缶が爆発する事故が発生した。幸いけが人はいなかったものの、キャンプ場の管理人が事故の詳細を伝えた投稿は、1600件を超えるリポスト、3000件の“いいね”が寄せられるなど、大きな反響を呼んでいる。一歩間違えば命にも関わるガスボンベの爆発事故。通常この類の注意喚起には、過失のあった当事者への批判の声がつきものだが、投稿者は「炎上はさせたくなかった」と投稿に込めた思いを語る。湯河原町のキャンプ場“GROVE camping hill”オーナーのまこじろうさんに、「慎重に言葉を選んだ」という投稿の真意を聞いた。

キャンプ場でカセットボンベ缶が爆発する事故が発生(写真はイメージ)【写真:写真AC】
キャンプ場でカセットボンベ缶が爆発する事故が発生(写真はイメージ)【写真:写真AC】

寒さでガスの出が悪くなったカセットボンベ缶を暖房器具の近くに置いて過熱

 先月24日、神奈川県内のキャンプ場で調理用のカセットボンベ(CB)缶が爆発する事故が発生した。幸いけが人はいなかったものの、キャンプ場の管理人が事故の詳細を伝えた投稿は、1600件を超えるリポスト、3000件の“いいね”が寄せられるなど、大きな反響を呼んでいる。一歩間違えば命にも関わるガスボンベの爆発事故。通常この類の注意喚起には、過失のあった当事者への批判の声がつきものだが、投稿者は「炎上はさせたくなかった」と投稿に込めた思いを語る。湯河原町のキャンプ場“GROVE camping hill”オーナーのまこじろうさんに、「慎重に言葉を選んだ」という投稿の真意を聞いた。

「みんなに知ってほしい! キャンプのガス事故で命を失わない為に」

 今月26日、まこじろうさんが行った注意喚起の投稿では、「朝6時ごろ、寒さでガスの出が悪くなったCB缶を暖房器具の近くに置いていた結果、過熱して爆発に至りました。不幸中の幸いで、当事者さんはちょうどトイレに行っており無傷。周囲のお客さまにも被害はなく、すぐに消火したため延焼もありませんでした。しかし、当事者のテントやギア一式は一瞬で全焼し、ガス缶の破片は20m先まで飛散しました」と事故の経緯を詳細に紹介。

 その上で、「寒い冬は燃えやすいフリースやダウンを着ている場合が多く、もしテント内にいる時に爆発し、至近距離で飛散した燃料を浴びていたら…消火困難な着衣着火状態に至り、少なくとも重傷、下手をすれば命を失っていた可能性もあります」とCB缶爆発の危険性を伝えている。

 投稿はそれだけにとどまらず、「今回の事故の原因は、ガス缶を暖房器具で温めてしまったこと。それがやってはいけない事だということは、おそらく皆さんなんとなく知っていると思います。それでもこの事故は起きました」「そもそも、温める必要なく普通にガスが使えていれば、根本原因は発生しませんでした」と事故が起こった根本の原因にも言及。CB缶にも通常期用と寒冷期用などの種類があることを紹介しつつ、「『キャンプ地の最低気温に応じて、適切な燃料と器具を使う』これが今回の事故の根本原因を取り除く為に必要なことでした」と具体的な防止策を示している。

「人間は必ず油断や判断ミスをします。これは、初心者でも上級者でも同じです。ミスを100%防ぐことは、誰にもできません」ともつづられた投稿。まこじろうさんは、「まず念頭にあったのは、『どうしたらこの経験を炎上させず、キャンプかいわいの安全意識向上につなげられるか?』でした」と投稿の意図を説明する。

「今回のようなガスの事故や、刃物による事故などは、キャンプ界隈で定期的に話題になります。また、キャンプ場が『こんな迷惑なお客さんがいた』と、注意喚起の形をとってバッドマナーの事例を拡散することもよくあります。その際、必ずと言っていいほど、事故や問題を起こした当事者へのバッシングが起こります。当事者の不注意や過失による事故なので、責めたり非難しやすいからです。この『一度失敗した人は遠慮なくたたいてもいい』という風潮が、僕はとても嫌でした」

 当事者は事故を起こした本人でありながら、同時に被害者でもあるはず。不注意が招いた事故の事例をそのまま紹介するだけでは、当事者への攻撃が巻き起こってしまう……。悩んだまこじろうさんは、慎重に言葉を選び、「事故は誰にでも起こしうる。あなたも例外ではない」というメッセージが伝わるような文章を心がけたという。

 狙い通り、投稿には「とても勉強になりました」「教訓として肝に銘じておきます」「ガス缶を加熱するなんて事はしませんが、意図せず暖房器具の近くに置いてしまう可能性は否定出来ないので、気を付けてアウトドアを楽しみます」など、冷静かつ前向きな意見が多数寄せられている。

 一連の反響については「想定していたよりも多くの方の目に留まることとなり、驚いています。そして、大部分の方が『自分も気をつけよう』と言ってくれていることに感謝と安堵(あんど)を感じています。中には『寒冷期用のガス缶があるなんて知らなかった』という声もありました」とまこじろうさん。「原因の手前の根本原因を分析し、リスクをあらかじめ排除する」という考え方に共感する声も多く寄せられたといい、「これはアウトドアだけでなく、日常生活やビジネスでもとても役に立つ考え方です。アウトドアで学ぶことが日常をより豊かにしてくれる、そんな醍醐味(だいごみ)を多くの人に知ってもらえたらと思っています」と話している。

次のページへ (2/2) 【写真】爆発の衝撃をものがたるカセットボンベ缶の残骸
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