林家木久扇「もうお弟子は取りません」 最後の弟子・林家木久彦は「知り合いを作るのがうまい」

落語家・柳家さん喬(76)が会長を務める落語協会が25日、都内で、新真打ち昇進襲名披露会見を行った。弟子3人がいっぺんに真打ちになるという柳家花緑(53)、最後の弟子を一人前に育て上げた林家木久扇(87)、歌手でタレントの尾藤イサオ(81)の父の寄席芸人としての名跡・松柳亭鶴枝をやっと弟子に付けることができた柳亭市馬(63)。場慣れした3人の師匠たちの笑顔とは対照的に、新真打ちは緊張の面持ちを写真撮影まで崩さなかった。(取材・文=渡邉寧久)

新真打ち昇進襲名披露会見を実施した【写真:ENCOUNT編集部】
新真打ち昇進襲名披露会見を実施した【写真:ENCOUNT編集部】

歌手・尾藤イサオの父が名乗っていた名跡「松柳亭鶴枝」約78年ぶりに復活

 落語家・柳家さん喬(76)が会長を務める落語協会が25日、都内で、新真打ち昇進襲名披露会見を行った。弟子3人がいっぺんに真打ちになるという柳家花緑(53)、最後の弟子を一人前に育て上げた林家木久扇(87)、歌手でタレントの尾藤イサオ(81)の父の寄席芸人としての名跡・松柳亭鶴枝をやっと弟子に付けることができた柳亭市馬(63)。場慣れした3人の師匠たちの笑顔とは対照的に、新真打ちは緊張の面持ちを写真撮影まで崩さなかった。(取材・文=渡邉寧久)

 3月21日より上野鈴本演芸場で始まる新真打ち昇進襲名披露興行でトリを務めるのは、花緑(かろく)の弟子の柳家緑太(やなぎや・ろくた=40)、柳家花飛(やなぎや・かっとび=40)、柳家吉緑(やなぎや・きちろく=40)、木久扇(きくおう)の弟子の林家けい木改め林家木久彦(はやしや・きくひこ=33)、市馬(いちば)の弟子の柳亭市童改め四代目松柳亭鶴枝(しょうりゅうてい・かくし=33)の5人。

 花緑は「弟子が3人いっぺんに真打ちになるのはあまり見たことがないようでして、かなり珍しいことが起こっているようです」と切り出し、緑太のことを「ハマればなんでもやる体験主義、そこがいい」とたたえ、花飛に関しては「発達障害の持ち主です。彼にとっては落語家であること自体がチャレンジ」と分析。演劇好きの吉緑については声のよさをほめつつ入門の経緯などを丁寧に回顧すると、吉緑は「ひとりひとりでこんな違うあいさつを考えてくれているんだと思うと感極まって」と声を震わせた。

「もうお弟子さんは取りません」と宣言する木久扇は「私の一門の8番目の真打ちの誕生で、ほっとしております。よその息子さんを預かって毎朝ご飯を食べさせます。いろんなおかずを考えないといけない。おかみさん(=妻)が一番大変です」とユニークにしゃべり出し、「お掃除は早いし、ご飯を食べるのも早いし、カクテルは何でも作れる。一門会の打ち上げに行てくれると便利というか、世の中に長けているというか。知り合いを作るのが非常にうまいんですね。お客さんも多い」と手放しでたたえた。

 古い本の表紙をめくったところに印刷されていた明治時代の噺家の番付に見つけて以来、「いい名前だな」とほれ込んでいた市馬は「実は(これまで昇進した弟子の)3人の真打ちみんなに勧めてきたんです」と舞台裏を明かす。「でも誰も見向きもしなかった」

 三代目松柳亭鶴枝は、歌手でタレントの尾藤イサオの実父が寄席芸人として名乗っていた芸名で、約78年ぶりの襲名にあたっては市馬が、尾藤に手紙で懇願したという。

「同じ歌手協会の会員なんですが、あいさつをした程度。手紙を書きましたら、尾藤さんが驚いていらした。3つのときにお父さんが亡くなったので、思い出ははっきりとないそうですが、大変喜んでくださった。尾藤さんをがっかりさせないようにやってください」と四代目に念を押すと、鶴枝は「亭号が変わる(柳亭から松柳亭に)っていうのは、抵抗がある人の方が多いのかな、と」と兄弟子たちをおもんぱかったうえで「私はその点、抵抗というのがなくて、何代目とか続いている名前を襲名できるのはうれしいなと思います」と率直に明かした。

【新真打ち5人に聞く得意な噺、芸のひと言アピール】

緑太「5年ぐらい『おしゃべり緑太の会』をやり、まくらを1時間をしゃべっています。それが毎月ある。ラジオみたいな感覚でその月にあったことをしゃべることをやっているので、日常(からネタ)を拾ってしゃべることが得意です」

花飛「新作落語を作っておりまして、どれも僕の中では愛すべき作品だと思っています」

吉緑「『厩火事』とか『夢の酒』とか『締め込み』といった夫婦げんかの噺が好きです。一人ものなんですけど」

木久彦「私の場合はものまねが好きなんで、ものまねを折り込んだ落語が得意。師匠が最近『お見立て』をほめてくれて、この頃はよくかけます」

鶴枝「歌舞伎がすごい好きなので、芝居噺が好きです。『猫忠』とか『一分茶番』とか芝居が出てくる噺が好きでよくやります」

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