ガレッジセール・ゴリ、映画監督を続ける理由 コントとの違い「夢を見てもらいたい」
「エンジョイプレイ」という持ちギャグで一世を風靡(ふうび)したお笑いコンビ・ガレッジセールのゴリこと照屋年之が監督と脚本を務めた最新映画『かなさんどー』が2月21日から全国公開される。そこで公開に先駆け『ダウンタウンDX』を20年以上演出した読売テレビの西田二郎氏がゴリに直撃。ゴリは「観た人に心のお土産を持って帰ってもらい」と作品への思いを語った。
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6年ぶりとなる長編映画『かなさんどー』が21日から公開
「エンジョイプレイ」という持ちギャグで一世を風靡(ふうび)したお笑いコンビ・ガレッジセールのゴリこと照屋年之が監督と脚本を務めた最新映画『かなさんどー』が2月21日から全国公開される。そこで公開に先駆け『ダウンタウンDX』を20年以上演出した読売テレビの西田二郎氏がゴリに直撃。ゴリは「観た人に心のお土産を持って帰ってもらい」と作品への思いを語った。
西田「今日はゴリさんではなく、映画監督・照屋年之さんに来ていただいておりますので、映画作り、監督の話をたっぷりお聞きしたいと思います。すごく心に染みる映画で、観終わったら、僕はボロボロに泣いていました。感情が交差点のように入り混じるものの、出来事自体は家族の話で、そこまで大きなことではないんですよね。映画を作るとなると、もっと起伏がないといけない、カーチェイスがあって、大人数のエキストラを使ってとか、家族の話でもすごい事件が起きることを求められたりするんですが、そうじゃない。この映画にかける想いというのはどういったところでしょうか?」
照屋「沖縄国際映画祭があった時に、映画を作らせてもらえる機会を毎年いただいていたんですが、基本的に低予算でした。低予算で短編映画を撮るとなると、その作り方の脚本を書く癖が付いているんですよ。だから、物語を作ろうと思った瞬間に、大勢の人を使おうとは思わないし、カーチェイスや爆破シーンなんてもう考えようともしないです。常に人間関係の中で面白おかしく。かと言って飽きさせてしまったらエンタメって負けなので、とにかく席を立ちたいって思わせないために、飽きないような刺激をどんどん毎分ずつ入れていく。そういうことを考えながら短編映画の脚本を書いて撮影をしてきました。
今回で、もう14作品目になるんですけれども、僕が6年前に撮った長編映画『洗骨』という作品があるんですね。それは琉球の時代に沖縄全体で、亡くなった母親の遺体を火葬せずに、棺の中で何年も寝かせ、しばらくしてその棺を開けて、朽ちた母親の骨を家族全員で洗うという儀式があったんです。そこから火葬が進んだんですが、今でも沖縄県の粟国島には、一部に洗骨の風習が残っているという事実に感銘を受けて、長編映画を作ったんです。いち家族の出来事を、世界中の映画祭に呼ばれてものすごく絶賛してもらい、賞もいただいたんです。
そういう時に、爆破があるとか空撮があるとか、お金をかけているから喜ばれるわけじゃなくて、アメリカだろうがイギリスだろうがロシアだろうが、どこの国でも結局、みんな親、兄弟、友達といった人間関係や病気や死をしっかり描いたら、どの国でも刺さるっていうのが分かったんですよ」
『かなさんどー』の意味は沖縄の言葉で「愛おしい」
西田「それはすごい。そこで今回『かなさんどー』についてお話できる範囲でお聞かせてもらえますかね」
照屋「お母さんが先に他界してしまうわけで、そのお母さんが亡くなる直前にSOSの電話を浅野忠信さんが演じる旦那にかけていたんですが、旦那はその電話を取らなかったわけです。それがなぜ取らなかったのか、誰か他の女といたのか、そこははっきりさせません。ただ、そのきっかけ以来、娘は父親と絶縁して離ればなれだったんですが、父親に余命宣告がされ、島に帰ってきてくれと言われ、嫌々ながら伊江島に帰るんですが、かと言って父親が死ぬと言われても特に泣くわけでもなく、『ざまあみろ』という気持ちなんです。
それからまた浅野忠信さんが娘の感情を逆なでするように、娘を見て妻の名前を呼んじゃうんです。痴呆症も入っていて、娘が妻に見えてしまうわけです。でも、娘は『今更お母さんの名前を言ってんじゃない!』と余計に怒るんですが、でもやっぱりもう長くは生きられない。でも、自分を間違えるほどお母さんのことを本当に大好きでいてくれたんだって思った時に、お母さんの日記を見つけてしまうわけです。その日記の内容が、お母さんが“女”であった時の日記なんです。
やっぱり子どもから見ると、生まれた時からもうお父さんとお母さんですが、生まれる前は男と女の関係なんです。その男と女のピュアな内容の日記を見て、お父さんとお母さんはこんなにピュアに愛し合ってたんだって思うと、死んだお母さんのためにも、『じゃあ私のことをお母さんと勘違いしてるんだったら』ということで、タンスからお母さんの洋服や化粧品を出して、お母さんになりきり、父親が亡くなるまでお母さんとして接するんです。妻としての接し方が、もちろん僕が撮ったのでコメディー要素満載なんですが、最後見送った後は、ジーンと涙が出たという方が多くいらっしゃいます。
だから、娘がコメディーながら、ドタバタと一生懸命お母さんを演じる部分も面白おかしく見えるんですが、それが最後、伏線がすべて回収されて、『この子よく頑張ったな』って涙を誘ってしまうという、その娘の頑張りみたいなのを、ぜひとも観てもらいたいです。エンタメの役割のひとつって、生活が苦しい時に背中を押してもらえることが大きいじゃないですか。僕自身も苦しい時に救われてきたので、そういう皆さんの何か背中を押してあげられるような、心をヨシヨシってなでてあげられるような作品になれたらなって思って作りました」
西田「『かなさんどー』は2月21日から順次全国で公開されます。『かなさんどー』というのはどういう意味があるんですか?」
照屋「沖縄の言葉で『愛おしい』とか『愛してます』っていう意味です。僕はコントも書きますけれども、コントは笑ってすっきりしたなっていう時間であればいいと思っているんですが、映画は作り方を変えてなにか、“心のお土産を持って帰ってもらいたい”というそこは意識して作っています。皆さん現実でしんどい思いをしているので、自分の作品ぐらいは夢を見てもらいたい。希望を持てるような方向で作りたいっていうのは意識をしています。1日1日自分のために時間を使っていると思うんですけれども、その中の90分間だけ『かなさんどー』に使って頂けるとありがたいです」
記事提供:読みテレ(https://www.yomitv.jp/)
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