堀内敬子、ガレッジ・ゴリ監督作品で「涙が止まらなくなって…」 演出は絶賛「常に監督の言うことを信頼して」

劇団四季出身でドラマ、映画、舞台など多方面で活躍する俳優の堀内敬子(53)が映画『かなさんどー』(1月31日沖縄先行公開、2月21日全国公開)に出演した。お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリこと照屋年之の監督作で、主人公の美花(松田るか)が、亡き花の日記を通じて、父との知られざる愛に触れる物語だ。

インタビューに応じた堀内敬子【写真:荒川祐史】
インタビューに応じた堀内敬子【写真:荒川祐史】

沖縄民謡の歌唱シーンには四苦八苦

 劇団四季出身でドラマ、映画、舞台など多方面で活躍する俳優の堀内敬子(53)が映画『かなさんどー』(1月31日沖縄先行公開、2月21日全国公開)に出演した。お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリこと照屋年之の監督作で、主人公の美花(松田るか)が、亡き花の日記を通じて、父との知られざる愛に触れる物語だ。(取材・文=平辻哲也)

『かなさんどー』は、照屋年之監督(52)が前作『洗骨』(19年)以来6年ぶりに脚本・監督を手掛けた長編第3作。堀内は、『SHOGUN 将軍』 (24年/Disney +他)などハリウッドでも活躍する浅野忠信と夫婦役を演じた。

 舞台は沖縄・伊江島。主人公の美花(松田)は、亡くなった母親が助けを求めてかけた電話を取らなかった父親を許せずにいたが、母の死後、故郷の沖縄県伊江島に戻り、母の日記を見つけて、家族の愛と許しについて考えていく……。題名は沖縄方言で「愛しているよ」といった意味。「げんちゃん」の愛称でも知られる沖縄民謡歌手、前川守賢の大ヒット曲(1983年)として親しまれている。

 堀内が演じる町子は、病弱な妻。娘の目からは、自由奔放でいい加減な夫・悟(浅野)に振り回されているように見えるが、心底夫を愛している。劇中では、沖縄の民族衣装を着て、『かなさんどー』を歌唱するシーンもある。

「マネジャーから話を聞いて、沖縄に行けると喜んだのですが、言葉と歌はハードルが高いなと思っていました。実際、民謡がとても大変で、その独特な音色を出すようにとても苦労しました」と振り返る。

 撮影前には『かなさんどー』の作詞・作曲を手掛けた前川からリモートでレッスンも受けた。

「げんちゃんさん(前川)からは『まあ、そんな感じですね』と言われたので、『これでいいのかな』と思っていたら、照屋監督は『ちょっと違うな。こっち(沖縄)で先生に習ってください』と」

 指導したのは、前作『洗骨』で主題歌『童神』を歌った沖縄音楽を代表する大御所歌手の古謝美佐子(70)だった。

「弟子入りにすごい時間がかかってしまって、最初は驚きましたが、よく考えれば、沖縄民謡を歌ったことがない人がいきなり映画で歌うなんて、生半可なことではないんですよね。古謝先生にも照屋監督にも、ニセモノにはしたくないという思いもあったのだと思います。3日間ほどマンツーマンで教えていただいて、現場でも見ていただいて、なんとか撮影を終えることができました」

 堀内は劇団四季出身。ミュージカルの歌唱には慣れていたが、沖縄民謡の独特な音には苦労をしたようだ。

 照屋監督からは、町子役は亡き母をイメージしたとも聞かされた。『洗骨』も母の死からインスピレーションを受けて作った物語だった。

「町子さんは本当に理想的なお母さん。お父さんのことが大好きで、お父さんの目の前では常にきれいにしている。演じていても、気持ちよかったです。私も、こんな人でありたいけど、現実には難しい。でも、それが監督のお母さんであったことがすごいです。私と似ている部分はないです」と笑う。

 夫役の浅野とは初共演だった。

「浅野さんはハリウッドでもご活躍されている方。パンクをやっているので、最初は怖い方なのかなと思っていたら、実際にお会いしたら、全然そんな方ではなく、気さくで、一緒にいても気を使わせない優しい方でした。すごく波長があって、おかげで家族のように柔らかい雰囲気が出せました」

 照屋監督の演出はどうだったのか。

「普段は『ゴリさん』と呼んでみたり、『監督』と言ってみたりとバラバラでした。何を撮りたいのかというビジョンを明確に持っているので、とてもわかりやすかったです。カット割りも決まっていて、迷いがない。こちらから何かを提案することは邪魔になると思ったので、常に監督の言うことを信頼して、常にやるという感じでした。その期待に応えられないと困るというプレッシャーはありました」

 出来上がった作品では思わず泣いてしまった。

「客観的に見られると思ったんだけど、最後は涙が止まらなくなってしまって。何で泣いちゃうんだろうっていう風に思うぐらい涙が出ちゃいました。出演作で、そこまで泣くことはあんまりないと思います。これはゴリマジックですね」と少し照れながら微笑む。歌唱シーンでは苦労もしたが、その分、大きな手応えを得られたようだ。ラストは涙なしには見られない。堀内のフィルモグラフィーに、代表作がまた一つ加わった。

□堀内敬子(ほりうち・けいこ) 1971年5月27日、東京都生まれ。91年に劇団四季で初舞台。『美女と野獣』(ベル役)、『ウェストサイド物語』(マリア役)など数々のミュージカルでヒロインを務める。99年の退団後も鍛え抜かれた表現力でテレビ、映画、舞台など幅広く活躍し、2007年度、第33回菊田一夫演劇賞、08年度、第15回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。舞台『パレード』(17&21年/森新太郎、演出)、『ブラッド・ブラザーズ』(22年/吉田鋼太郎、演出)、ミュージカル『アナスタシア』(20&23年/ダルコ・トレスニャク、演出)の他、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22年)、NHKドラマ『犬神家の一族』(23年)、主な映画出演作に『羊と鋼の森』(18年/橋本光二郎監督)、『夜明け』(19年/広瀬奈々子監督)、『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』(21年/松居大悟監督)、『牛首村』(22年/清水崇監督)、『湯道』(23年/鈴木雅之監督)などがある。

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