尾上菊之助、菊五郎襲名後に目指すのは「広く開かれた歌舞伎界」 名題や部屋子とも芝居を
歌舞伎俳優の尾上菊之助が14日、都内で行われた歌舞伎座の5月、6月公演「尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎襲名披露 松竹創業百三十周年『菊團祭五月大歌舞伎』『六月大歌舞伎』」の取材会に出席した。

菊之助時代は「菊五郎になるための修行時代」 息子・丑之助を「見守っていきたい」
歌舞伎俳優の尾上菊之助が14日、都内で行われた歌舞伎座の5月、6月公演「尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎襲名披露 松竹創業百三十周年『菊團祭五月大歌舞伎』『六月大歌舞伎』」の取材会に出席した。
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菊之助は同公演で八代目尾上菊五郎に、菊之助の長男・丑之助が六代目菊之助を名乗る。菊之助の父で現在の七代目尾上菊五郎は、引き続き七代目尾上菊五郎を名乗る。音羽屋は今後、七代目菊五郎、八代目菊五郎と親子で菊五郎を名乗り活動していく。松竹によると、同じ名跡が並ぶことは近代の歌舞伎界では初。5月から約1年かけて襲名披露公演を行う。
『尾上菊之助改め 八代目尾上菊五郎 襲名披露狂言 尾上丑之助改め 六代目尾上菊之助 襲名披露狂言』と題し、襲名披露の『口上』のほか、『團菊祭五月大歌舞』として音羽屋にゆかりのある『京鹿子娘道成寺』を昼の部で、『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』を夜の部で上演する。続く『六月大歌舞伎』では、昼の部で『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』、夜の部で襲名披露口上と『連獅子』を上演する。
菊之助は、18歳から47歳の現在まで名乗った菊之助という名前について、「18歳で襲名した時も、今回やる『弁天娘女男白浪』と『鏡獅子』をさせていただきました。当時はとても自分では納得できず、『どうしたら先人たちのように舞台に立てるんだろう』というスタートでした」と襲名時を思い返した。「いろいろな先輩方、踊りの師匠から教えを受けて、『ファイナルファンタジー』のような新作歌舞伎をやることによって自分の至らなさをまた痛感して、とにかく自分の至らなさと向き合い、自問自答してきた菊之助でございました」と振り返り、「これからも『自分に厳しくする』ということは続けていきますが、菊之助というのは、『菊五郎になるための修行時代』でございます」と語った。
その菊之助を受け継ぐ息子の丑之助については、「丑之助も11歳で菊之助という名前を襲名させていただいて、これからの菊五郎、“次の名前”に行くための修行期間です。私も今回の演目の『連獅子』ではないですが、(子獅子を)谷に突き落として這い上がって来るような稽古をしつつ、見守っていきたい」といい、「芸に終わりもないですし、一生掛けて磨き上げていくものですから、焦らず長い目で、鍛え上げていこうと思っております」と語った。
菊五郎として目指すものを聞かれると、「菊之助の時もそうでしたが、古典演目を大切にしつつ、復活狂言、そして新作歌舞伎と、この3本柱に加え、菊五郎になった暁には、(尾上家のお家芸の)『新古演劇十種』を復活させたいです」と意気込んだ。また「名題さんや名題下さんとは新作歌舞伎で一緒に舞台を作り上げることがありますが、なかなか古典歌舞伎では難しい側面があります」と明かし、「門閥や幹部の方と芝居を作り上げていくというのはもちろんですが、謙虚さ、努力、芸に向き合う姿勢も含めて、広く開かれた歌舞伎界というのが、目指していくところだと思います」と語った。
歌舞伎には大部屋役者の「三階」、修行後に名題試験に合格しセリフがもらえる「名題」などの制度がある。名題役者の中でさらに認められると「幹部」となり「役」がつくが、一般家庭から入門する俳優は名題昇進までが多い。菊之助は「幅広く、七題さんや名題下さん、部屋子さんと門を開いて、皆さまと一緒に後進の指導をしつつ、開かれた歌舞伎を目指していきたい。実力のある方を起用し、ご一緒させていただくということが、私の目指すところでございます」と述べた。
また菊五郎という名跡については、「(江戸時代の)初代(菊五郎)さんもそうでしたが、最初は女方から始まり、江戸に出て立役に変わりました。その時代は女方と立役を両方兼ねるのは難しいと言われていましたが、初代さんはそれを成し遂げられました。三代目さんは立役、女方、敵役、道化方とこなし、天保時代には番付にも『幅広い役全てをこなす』と出ておりました」と振り返った。「歴代の菊五郎を築き上げてきた、立役と女方、その両方を研鑽するということは、私も引き継いでいきたい、大事にしていきたいところです」と語った。
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