「情報が入ってこない」埼玉の道路陥没事故 トルコ人オーナーの支援活動とその思い

埼玉・八潮市の道路陥没事故は発生から2週間が経過した。転落したトラック運転手の救助活動は難航する一方、12日には下水道の利用自粛が解除され、市民は徐々に日常生活を取り戻しつつある。そんな中、事故現場近くで大きな影響を受けながらも営業を続けているレストランがある。トルコ人オーナーに思いを聞いた。

通行止めとなった道路陥没事故現場の様子【写真:ENCOUNT編集部】
通行止めとなった道路陥没事故現場の様子【写真:ENCOUNT編集部】

地域住民は現在、ホテルへ案内されている

 埼玉・八潮市の道路陥没事故は発生から2週間が経過した。転落したトラック運転手の救助活動は難航する一方、12日には下水道の利用自粛が解除され、市民は徐々に日常生活を取り戻しつつある。そんな中、事故現場近くで大きな影響を受けながらも営業を続けているレストランがある。トルコ人オーナーに思いを聞いた。

 1月28日に発生した事故は、直径約4.7メートルの大型下水管の老朽化による破損が原因とされ、直径40メートル、深さ15メートルほどの巨大な穴が出現。約2週間にわたり県内120万人に下水道の使用が制限されたほか、現場周辺の半径50メートル圏内の住民に一時避難指示が発令されるなど大きな影響をもたらした。

 救助活動では、トラックの運転席部分の捜索に必要な環境整備として、現場付近の下水道管をう回するためのバイパス工事が行われる予定で、完成には約3か月かかると言われている。

 2月13日、現地を訪れると、周辺道路は至るところで通行止めになっており、エリア内に自宅や職場がある人のみ出入りが許可されていた。消防局や警察官、保全機器の社用車が通行している様子が見受けられた。また、バス停にはう回運行の規制を知らせる貼り紙が掲示されていた。

 そんな中、事故現場からおよそ400メートルの場所で営業を続けているのが、インドカレーとステーキを提供するレストラン「Smile Kitchen」だ。

 飲食店にとって長期間の下水道使用制限は死活問題。さらに事故の影響で客足が減少した。この日もランチタイムは、炊きたてご飯、日替わりスープ、自家製カレーが食べ放題で、ハラミやサーロインなどのセットが税込み1000円というコスパの良さにもかかわらず、客足は遠のいていた。

「米は無洗米を使ったり、(水の使用を)少しでも減らしています。普段だったらここのお店で日替わりカレーも作るけど、他のお店で作って持ってきたりしています」

 経費削減のため、アルバイトのシフトは最小限に抑えるなど、涙ぐましい経営努力を続けている。

 一時は店を閉めることも考えたほど。しかし、オーナーは営業を継続することを決めた。そこには理由があった。

「本当は一時閉店してもいいと思ったけど、閉めたら仕事がなくなる人もいる。そのために赤字でも、やるしかないですね。商売よりは、みんな(従業員)のことが心配です」と思いを吐露した。

 地元への愛着も人一倍だ。

「影響は受けているんですけど、一番心配なことは住民のこと。穴に落ちた方が、商売より大事かなと思っています。お客様もかなり減っていますし、いろいろ影響あるんですけど、協力していくしかないですね」

 さらに、「できる限り寄与していきたい。避難生活に慣れていない方たちに、ちょっとでも力になれるように……」という思いから、自ら市役所に連絡。「うちにできることなんですか、何かやりたいんですけど。もしかしたら避難されてる方も困ってるんじゃないですか」と伝え、避難所への弁当提供などのボランティア活動を率先して行っている。

 一方で、事故現場の最新情報については、テレビやネットの報道を通じて得ている状況で、県からの情報提供は足りないと感じている。「1回だけ『お水の使用を制限してください』という依頼はあったが、それ以外に何もない。現在の状況を教えてほしい」と改善を求めた。

 住民たちは不安を抱えながらも、1日も早い救助活動の進展と地域の復興を願い続けている。

次のページへ (2/2) 【写真】迂回運行の規制を知らせるバス停の貼り紙
1 2
あなたの“気になる”を教えてください