溝端淳平、ジュノンボーイでデビューも「劣等感の塊でした」 役者人生を変えた“恩師”との出会い

俳優の溝端淳平が、米映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(今月14日公開、ジュリアス・オナー監督)で主人公サム・ウィルソン/キャプテン・アメリカの日本版声優を務める。これまで映画6作品にわたり声を演じたサムが、本作で新キャプテン・アメリカになることに、“ある思い”を覚えたという。今回7度目に挑んだ心境とともに、俳優人生の転機について話を聞いた。

インタビューに応じた溝端淳平【写真:冨田味我】
インタビューに応じた溝端淳平【写真:冨田味我】

『キャプテン・アメリカ:BNW』で主人公サムの日本版声優

 俳優の溝端淳平が、米映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(今月14日公開、ジュリアス・オナー監督)で主人公サム・ウィルソン/キャプテン・アメリカの日本版声優を務める。これまで映画6作品にわたり声を演じたサムが、本作で新キャプテン・アメリカになることに、“ある思い”を覚えたという。今回7度目に挑んだ心境とともに、俳優人生の転機について話を聞いた。(取材・文=猪俣創平)

 2014年の映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』から19年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』までの6作品、サムの日本版声優を担当。もはや、ヒーローたちを描く米漫画「マーベル・コミック」原作の実写映画作品群「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」の“常連組”ともいえる。

 それだけに、サム役“続投”となる今作のオファーには「うれしかったですし、どうしてもやりたいという思いがあったので、念願がかないました」と素直に喜んだ。今回の吹き替えを務めた縁で、サムを演じる米俳優、アンソニー・マッキー本人との初対談も実現。「2代目キャプテン・アメリカとして、相当な覚悟と思いがあるんだなとインタビューを通じて感じました」と自らの責任も痛感した。

 今作では、サムが謎の陰謀に巻き込まれていく様子が描かれ、これまでのファルコンそのままに人工の翼で空を飛び、シールドも駆使した派手なアクションが見せ場となる。また、正式にキャプテン・アメリカとなったサムの迷いや葛藤など人間ドラマも見どころだ。溝端はサムの思い悩む姿に自身を重ね、強く共感したという。

「サムは先代のキャプテン・アメリカ(スティーブ・ロジャース)のように、今まで出会ってきたアベンジャーズのすごいヒーローたちを見ている分、自分にすごく劣等感があるんです。こんなに大きなものを受け継ぐのが“俺でいいのか”とずっと悩み続けます。僕らの世界も才能のある人ばかりなので、自分とも重ね合わせられました。俳優もいろんな人がいろんな個性を持っていて、本当に競争が激しくて生き残るのが大変な仕事なので、サムと同じ気持ちかもしれないです。僕も常に劣等感を感じています」

 意外な言葉が口を突くが、今の輝きを見れば、そんな“負の感情”も力に変えてきたのだろう。2006年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」グランプリ受賞をきっかけに芸能界入り。翌07年に『生徒諸君!』(テレビ朝日系)で俳優デビューし、同年『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)では高校生役を好演。08年の『ハチワンダイバー』(フジ系)でドラマ初主演を果たすなど、デビューから順風満帆なキャリアを歩んだ。

 しかし「(当時)根本はやっぱり劣等感の塊でした」と打ち明け、「ジュノンボーイとしてデビューしてからも、お芝居の大変さや難しさも分からないままの目まぐるしい日々で、本当の自分と仕事をいただける自分とのギャップを穴埋めすることが全然できなくて、つらかった20代前半でした」と振り返る。

舞台『ムサシ』への出演が転機となった【写真:冨田味我】
舞台『ムサシ』への出演が転機となった【写真:冨田味我】

蜷川幸雄さんの舞台出演で「スっと気持ちが楽に」

 そんな中、転機となったのは、16年に他界した蜷川幸雄さん演出の舞台『ムサシ』(2013年)への出演だった。「『やめちまえ』『下手くそ』って、本気で言われました」と苛烈な稽古に圧倒された。

「蜷川さんは命がけで作品を作られていて今まで自分が触れてきた熱量とは次元が違いました。僕はジュノンボーイでシュッとした形で出てきたので、そこまで熱く言ってくれる人はいなかったので、スっと気持ちが楽になったんです」。多くの仕事のオファーに「劣等感しかないのになぜ?」と疑問を抱いていた中で、蜷川さんからの厳しい言葉に胸のつかえが取れた。

 蜷川さんに怒られた後も「『淳平、こうだから』って藤原竜也さんや吉田鋼太郎さんとか先輩たちが助けてくれたんです。本当に濃密な経験があったので、自分の役者人生はその以前、以後とでは全然違います」

 確かな経験が自信にもつながり、その後は舞台にドラマに映画にと快進撃が続く。役者として着実に実績を重ねる溝端にとって、キャプテン・アメリカのようなヒーロー、リーダー像とは、と尋ねてみると「リーダーって、自然と周りが『この人のためなら』と思える人だと思うんです。これはスターという言い方もできると思います」と先輩俳優の姿を重ねながら語った。

「僕らの世界でも第一線でずっと活躍されている方って、わがままなところもあるし、意外なこともやるんだけど、人間的に魅力があるからみんな振り回されるのが嫌じゃないんです。そんな先頭を切って輝く人が僕のヒーロー像というか、リーダー像です」

 自身も「何かを背負いながら言うべきことは言うような一歩前に進み出る人になりたい」と明かす。理想の俳優を目指して、さらなる飛躍を誓った。

□溝端淳平(みぞばた・じゅんぺい)1989年6月14日、和歌山県出身。2007年にテレビ朝日系連続ドラマ『生徒諸君!』で俳優デビュー。08年、映画『ダイブ!!』で映画初主演を務める。近年の主な出演作にNHK大河ドラマ『どうする家康』(23年)、舞台『カラカラ天気と五人の紳士』(24年)、テレビ朝日系『民王R』(24年)、TBS系『まどか26歳、研修医やってます!』(25年)、映画『366日』(25年)など。

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猪俣創平

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