トークライブ終盤、話はMVP獲得後へと移る。川崎はその後、満足いく直球が投げられなくなり、野村監督からシュートを覚えるようアドバイスを受けた。これがきっかけで98年に17勝を挙げ、念願だった最多勝と沢村賞を獲得した。しかしその裏で三振を取ることに強いこだわりを持っていた川崎が、直球勝負を捨てる決断に至るまで、大きな葛藤があったという。

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「自分で満足いく直球が、ことごとく打たれるようになった。強打者が三振する、その悔しがる表情が楽しみだったので、内野ゴロで仕留めることに最初は満足できず、葛藤していました。ところがシュートで詰まらせて強打者のバットを折り、その悔しがる表情を見たときにこれでまた楽しめると。それでシュートを覚えられたんです。これはどの世界でも同じだと思いますが、今まで1番大事だったものを捨てないと、新しい大事なものは得られない。それに気付いたんです」

　川崎のこの言葉に山田が、「そのくだりを『かたり』に直してもいいですか?」と問いかけ、川崎も「もちろんです。お願いします」と返答。過去に山田が作り上げた『野村克也物語』の豊富なエピソードを交えながら、新たな『川崎憲次郎物語』を即興で披露した。BGMも映像も一切ない。落語でも漫談でもスポーツ談義でもない独自の「かたりの世界」。山田の言葉が立体となって観客、視聴者1人ひとりの脳内スクリーンに映像となって映し出されていった。

　山田は、大きな挫折を繰り返しながら野球人生をまっとうした川崎の物語を語り終えて、観客、そして視聴者に語りかけた。

「人間は1番苦しいとき、どん底まで落ちたとき、諦めずに明日を見たときに、新たな夢が叶えられるということを、今日、川崎憲次郎さんから学びました。野球をしている子どもたち、今年高校野球は中止になりました。夢が叶えられなかった子どもたちもいると思います。でもこのコロナウイルスのなか、どうか諦めないでください」

　この言葉に川崎の目は薄っすらと涙で光った。

　終演後、山田は楽屋で「ストップモーション」のステージについて「これは僕にとっては『かたりのジャズ』なんです。メインテーマに沿った僕のアドリブに、川崎さんが新しいテーマを与えてくれて、そのテーマに即興でアドリブを返していく。だから今日の『かたり』は今日しかできないものなんです」と語った。山田は話芸というエンターテインメントを通して人間・川崎憲次郎の魅力を観客、そして視聴者に最後まで伝えた。

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□山田雅人「かたりの世界」最新情報

かたりとピアノの鎮魂歌
「野村克也物語」
日程：2020年8月16日　開演：午後2時半
会場：東京・豊洲シビックセンターホール
出演：山田雅人(かたり)、鈴木和郎(ピアノ)
チケット詳細：03-6453-4848(楽工房)　https://bit.ly/3itPMoj

ドッキリ！ハッキリ！三代澤康司です　presents　LIVE「青春が止まらない」
日程：2020年9月22日(火・祝)　開演：午後3時
会場：大阪城ホール
出演：南こうせつ、森山良子、イルカ、杉山清貴、馬場俊英、押尾コータロー
司会・漫才：こうせつ市場(三代澤康司・ABCアナウンサー、山田雅人）
チケット発売日：9月5日(土)午前10時～
詳細はこちら：https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/1969