空気階段・水川かたまり、映画初主演オファーに「ドッキリかと」 コントとの違いに「感情の引き出し増えた」

お笑いコンビ・空気階段の水川かたまり(34)が『死に損なった男』(田中征爾監督、2月21日公開)で映画初主演を果たした。死に損なった男が、幽霊から殺しの依頼を受けるというコメディーだ。水川にとって新境地となる映画俳優としての挑戦。その感想や撮影秘話、演技に対する考えを聞いた。

『死に損なった男』で映画初主演を果たした水川かたまり
『死に損なった男』で映画初主演を果たした水川かたまり

KOC王者が面白いと思った「自殺しようとした構成作家が幽霊に依頼される、という設定」

 お笑いコンビ・空気階段の水川かたまり(34)が『死に損なった男』(田中征爾監督、2月21日公開)で映画初主演を果たした。死に損なった男が、幽霊から殺しの依頼を受けるというコメディーだ。水川にとって新境地となる映画俳優としての挑戦。その感想や撮影秘話、演技に対する考えを聞いた。(取材・文=平辻哲也)

「最初にお話をいただいたときは正直、ドッキリかと思いました。台本を渡されて『これは何かの冗談かな?』と思いながらも読み進めて、しっかりとした内容に驚きました。現場に行って、映画の規模感やスタッフの様子を見て、これは本当に映画の主演なんだと認識しました。それまでは半信半疑だったんです」

 水川が演じたのは、自殺に失敗した構成作家・関谷一平。殺伐とした世の中に疲弊し、自ら命を絶とうとした彼の前に、同じ電車で死んで幽霊となった男(正名僕蔵)が現れ、「娘(唐田えりか)に付きまとう男を殺してほしい」と依頼するという物語だ。

「自殺しようとした構成作家が幽霊に依頼される、という設定がものすごく面白いと思いました。特に『隣の駅で人身事故があって電車が来なくて(自分は死ねず)幽霊が現れる』という展開が、リアルとフィクションの絶妙なバランスを感じましたね。もし自分がコントでこの設定を思いついたら、その日はもう『ビール飲んじゃうな』と思うくらい良い設定だと感じました」

 主人公・一平という役柄に対して、「親しみを感じた」と話す。

「構成作家という職業自体が、普段自分が接している職業なので、とても馴染みがありました。全く知らない職業だったら戸惑ったと思いますが、構成作家というだけで『これはできるかも』と自然に感じました」

 性格面でも、自身との共通点を見出していたという。

「一平はすごく純粋で、不器用で、自分の中で折り合いがつけられない人間だと思います。やりたい仕事をして、生活にも困っていないのに『これじゃない』というモヤモヤを抱えてしまう。その結果、『もういいや』と思い詰める。その感覚は僕自身も共感できる部分が多かったです」

 撮影は2023年秋、約1か月間。ちょうど相方の鈴木もぐらも連続ドラマに俳優として出演中。コンビの仕事にも支障なく、こなすことができた。初めての映画現場に緊張もあったが、共演者やスタッフの支えが心強かったという。

「初日はすごく緊張していましたが、皆さんがとても気さくで優しく接してくださり、すぐに安心しました。正名さんはその直前でハリセンボンの近藤春菜さんと仕事したとか、唐田さんはNetflixの『極悪女王』を撮り終わったばかりで、ゆりやんレトリィバァさん、僕の後輩『マリーマリー』のえびちゃんと一緒に出て、ディズニーランドに行ってきた、という話もしてくださった。他の共演者の方々も、芸人に対して壁を作ることなく、温かく見守ってくださったので、『この現場なら大丈夫だ』と思えました」

コントと俳優業の違いを明かした
コントと俳優業の違いを明かした

 普段のコントとの違いについても、戸惑いや発見があったようだ。

「コントは『最終的に笑わせること』が目的ですが、映画ではシーンごとに『笑わせる』『泣かせる』『怖がらせる』といった感情表現の幅が求められました。特に寄りのカットでは、細かい表情まで映るので、普段の舞台では意識しない部分まで気を配らなければならず、それが新鮮で難しかったです」

 監督の田中征爾氏は気鋭の若手。2019年、デビュー映画『メランコリック』が国内外の映画祭で高く評価された。銭湯でアルバイトする大学生が、同僚が殺し屋であることを知り、風呂場が人殺しの場所として貸し出されていることに驚がくしながら、トラブルに巻き込まれていくブラックコメディーだった。

「田中監督は、設定の面白さから考えていく人なんだと思いました。本当に職人肌の方で、感情の出し方を『このくらいの割合で』と細かく指示してくださいました。感覚的で繊細な人だと思います。設定の面白さや絵作りへのこだわりがすごく印象的で、監督の作品に対する情熱が伝わってきました」

 映画出演を通じて得たものについて、「友情」と即答した。

「それと同時に、コントの演技に対する考え方も変わりました。コントでは『笑わせる』ことが目的ですが、その前の段階で『どうやって観客に感情を与えるか』を意識するようになりました。映画を通じて演技の引き出しが増えた気がします」

 また俳優業についても、前向きな気持ちを覗かせた。

「また機会があればぜひ挑戦したいと思います。映画という長い尺の中で一つのキャラクターを演じ切ることの面白さや、俳優としての新しい発見がたくさんありました。これまでは映画や小説などを「自分で作りたい」という思いはあまりありませんでしたが、この作品を通じて少し興味が湧いてきました」

 映画主演を経験したことで、演技にも新しい可能性を感じた水川かたまり。お笑い芸人という枠にとらわれない、今後の活動が楽しみだ。

□水川かたまり(みずかわ・かたまり)1990年7月22日生まれ、岡山県出身。岡山城東高卒業後、慶應義塾大法学部政治学科中退。2012年に鈴木もぐらとお笑いコンビ・空気階段を結成し、キングオブコント2021で優勝。特技はヨーロッパサッカーの知識を豊富に持つこと、人の血液型を当てること、テトリスなど。趣味は散歩や絵本を読むことなど。近年は、俳優としても活躍の場を広げている。

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