ヒット作を世に放った漫画家・山田玲司が「引退」の2文字を使わないワケ「クビになるんです」

漫画家の山田玲司先生といえば、ラブコメ漫画『Bバージン』や著名人とのドキュメンタリー対談漫画『絶望に効くクスリ』などで知られるが、現在は動画配信をメインに活動を続けている。5年近く新作漫画の発表からは遠ざかっているが、現状についてどのように考えているのだろうか。

山田玲司先生【写真:本人提供】
山田玲司先生【写真:本人提供】

漫画家から動画配信者に転身「引退ができる人は人気作家だけ」

 漫画家の山田玲司先生といえば、ラブコメ漫画『Bバージン』や著名人とのドキュメンタリー対談漫画『絶望に効くクスリ』などで知られるが、現在は動画配信をメインに活動を続けている。5年近く新作漫画の発表からは遠ざかっているが、現状についてどのように考えているのだろうか。

 動画配信を始めたのはおよそ10年前。当時は漫画家としての活動と並行していたが、現在では動画配信をメインに据えた活動スタイルを取っている。新作の漫画からは5年近く遠ざかっているが、「引退」の2文字は使っていない。その真意について山田先生は語る。

「引退ができる人は人気作家だけです。みんなクビになるんです。僕もその1人ですね(笑)。戦力外通告された人は引退宣言なんかできないじゃないですか。でもそういうものなんですよ。時代が変化して、自分とは合わなくなってきてしまったんです」

 その一方で、「自分と合う」ものにも出会うことができた。それが動画配信だった。

「青年誌の週刊連載と合わないと感じていた時に、配信がしっくりときたんです。儀式的に引退だ、再開だ、とやらなくても、気が向いたら戻ってくればいいものだと思っています。だから、決めなくていいんです。でも引退宣言したくなる気持ちも分かります。自分的に区切りをつけて、それに向かって頑張るという目標ができますからね。自分を奮い立たせたいんですよね」

 その上で今後の漫画家の再開についての思いも口にする。

「漫画を描き始めて40年近くになりました。漫画で成功しようと思ったら、また戦いが始まるわけです。売れることを目的にした場合は、失うものも大きいんです。今の読者の人たちの目線に立たなければいけない。それって結構しんどいことなんですよね。売れる漫画というのは一種の病気の共有なんです。一般の人たちと同じ病気を抱えてる人ほどヒット作を出せる。だからヒット作を生み出す人たちはみんな苦しそうなんです」

 現在は動画配信のほか、画家として個展を開いたり、2025年1月には主宰のミュージカル公演『サイケデリック キャットフィッシュ』を上演するなど、幅広く活躍を続けている。

「地球の歴史という長い視点で見た時、全てが諸行無常で流転していっているんです。それであれば、自分自身も流転していくのが自然だと思うので、どんどん変わっていきたいですね。漫画についてもそういうタイミングが来て、準備ができたらやりたいかなとは思っています」

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