四千頭身・後藤、お笑い第7世代を「忘れないで」 都心タワマンから郊外へ引っ越し「僕はこっちが向いてる」
お笑い第7世代ブームとともに都心で“セレブ生活”を謳歌していた四千頭身・後藤拓実(27)。一時仕事が減り、どん底を経験したが今は前向きに東京の東で穏やかな生活を送っている。目標は『M-1』王者。これからをどう描いているのか。後編。
タワマン時代は「無理して芸人といた」
お笑い第7世代ブームとともに都心で“セレブ生活”を謳歌していた四千頭身・後藤拓実(27)。一時仕事が減り、どん底を経験したが今は前向きに東京の東で穏やかな生活を送っている。目標は『M-1』王者。これからをどう描いているのか。後編。(取材・文=島田将斗)
“お笑い第7世代”の代表格とも呼ばれた四千頭身は2019年に大ブレイクした。後藤は20年から22年まで都心でタワマン生活を送っていた。しかし、23年ごろから仕事・収入ともに激減し、退去。一時は借金ギリギリのどん底も味わった。
その後の現在は東京・板橋の一般的なマンションに住んでいるという。「タワマン生活よりも僕はこっちが向いてるかもしれないです」と笑顔を見せた。
「いまは“普通”の生活ですよ。テレビをよく見るんですけど、芸人が出てると『芸人だ』って思うようになりました(笑)。なんか家が都心から遠くなると、テレビに出ている人が近くにいる感じがしないんですよね。移動が長いとオフがオフすぎて、芸人と一緒になると『芸能人だ』ってなります。取材前にホリケン(堀内健)さんを見かけたんですけど、声をかけることができなかったです(笑)」
さらにこう続けた。
「幼なじみがすごく近くに住んでいるんです。そいつといる方が芸人といるよりも楽しいですね(笑)。あの頃は無理して芸人といたかなというところがあります。何か試されているんじゃないかと思う。落ち着かないというか。気兼ねなくいれる芸人もいるにはいるんですけど、先輩とかは緊張します(笑)」
タワマン生活を送っていたブレイク中はお笑いへの情熱をあまり持てない時期もあったが、最近では「ちょっとだけ楽しい」に変化してきている。
「これまでよりはやる気はあります。『いつ辞めてもいい』って思ってたんですけど、辞めてできることもないし。やる気っていうよりもやらないといけない感じかも。何かで変わったとかはないと思ったけど(きっかけは)『M-1 グランプリ』ですね。いい感じで楽しかったなって」
毎月3本新ネタ作成「『M-1』獲れたら注目されるのは僕」
『M-1グランプリ』では17、18年は準々決勝進出、19年には敗者復活を経験したが、その後は4年間、3回戦止まりが続いていた。しかし24年は準々決勝にまで進出。毎月3本新ネタを作ったが、それが叩けなかった(ライブや寄席で試すこと)と悔しがった。
「形になりそうなネタは大分増えました。それをどうしていこうかなという段階です。いまライブに来てくれている人のためにも、新ネタライブを打たないと飽きられちゃうかもしれない。でも僕らのネタってネタばらしみたいなものが多くて。昔でいう“前半に畳み掛けるな”もそうですけど、知られていたらそんなにウケないと思うんですよ。だから叩くっていうのは難しいところではありますよね」
憧れの人に会いたいでやっていたお笑いだが、いまの目標は明確に『M-1』獲りだ。
「『M-1』獲れたら注目されるのは僕でしょう、相方の2人よりは(笑)。なんかひとりで脚光浴びたいですよね。ウエストランド・井口(浩之)さんみたいな。自分が井口さんみたいになって、2人が(河本)太さんぐらい言われたら、気持ちいいですよね。そう見えたほうが2人も面白いと思う」
スベることを気にしている。それは後藤にとって大きな変化だった。
「ウケるためにやりたいですよ。すべったら立ち直れなくなるぐらいきついので、すべりたくない。こういう本(『安心できる男(ひと)』)とか出るとちょっとうれしい。板橋のイオンの書店にも置いてあるんです。YouTubeショートとかで切り抜きされてたりとかがちょっとうれしい」
短期間で生活的に精神的にも浮き沈みを経験した後藤。生活を良くも悪くも一変させた第7世代ブームとはいったいどんなものだったのか。
「何だったんだろう。第7世代芸人はたまに会う人みたいな感覚。もっと仲良くなれたのかなと思いますけどね。芸人からそのワードを言ってる人はもちろんいない。でも思ったより広がって“第7世代の代表格”って言われ方までするとうれしかったですけどね。あれはあれで良かったんじゃないですか。そこからちょっと上の世代が出始めたじゃないですか。お笑い界的には良かったですよね。なんかね、忘れないでほしい」
「とりあえずウケたら楽しい」。ブームに流され浮き沈みしたからこそ気が付いたお笑いの楽しさ。声量は変わらず一定、それでも、地に足つけて、お笑いを語る後藤の目には力が入っていた。