フジ会見「役員全員が辞表を出すべきだった」 専門家は“失敗”と断言、主役の不在「異例の対処が必要だった」

フジテレビは27日、都内で会見を開き、中居正広氏と20代女性のトラブルを巡り、嘉納修治会長、港浩一社長が引責辞任すると発表した。会見は10時間を超え、記者からの質問が尽きるまで続けられたが、最後まですっきりしない空気が残った。危機管理の専門家はフジ側の対応に厳しい採点をつけている。

フジテレビが一連の問題について会見を開催【写真:山口比佐夫】
フジテレビが一連の問題について会見を開催【写真:山口比佐夫】

「みなさんが一番関心のあることをやらなかった」

 フジテレビは27日、都内で会見を開き、中居正広氏と20代女性のトラブルを巡り、嘉納修治会長、港浩一社長が引責辞任すると発表した。会見は10時間を超え、記者からの質問が尽きるまで続けられたが、最後まですっきりしない空気が残った。危機管理の専門家はフジ側の対応に厳しい採点をつけている。

 17日の会見が閉鎖的だと批判されたフジテレビ。“失敗できない”2度目の会見には191媒体、437人の記者が参加し、物々しいムードの中で行われた。

 冒頭で辞任した港氏は「人権意識に欠けていた」と被害女性に謝罪。「願わくば本人にお会いして直接お詫びしたい」と意向を示した。女性を接待に利用していたのではないかという疑惑には、「接待要員として私自身考えたことはありません。会社の風土としてそういう色がついているとは考えていない」と否定。騒動の真相を語らないまま引退を決めた中居氏に「怒りはある」と語気を強めた。

 会見では記者から怒号も飛び交い、フジ側は長時間にわたり説明に追われた。

 しかし、10時間半という時間を費やした割には、肝心な部分がはっきりせず、問題の究明とはほど遠い結末となった。

 その原因は何か。

「日枝(久取締役相談役)さんが出てこなかったこと。単純でしょ。あの人を会見に同席させられなかったのが失敗。みなさんが一番関心のあることをやらなかった。そこに尽きます」

 こう話したのは、元神戸製鋼所広報部長で広報・危機管理コンサルタントの山見博康氏だ。昨年7月、著書『危機管理広報大全』を上梓するなど、これまで数々の企業・団体の不祥事に携わり、解決へと導いてきた。

 山見氏によれば、通常、相談役が企業の不祥事の会見に出席することはあり得ない。しかし、日枝氏が取締役を兼ねていることから、そもそも責任は免れないとの見方を示す。

「取締役相談役になるか、相談役だけになるかは違う。取締役は権限がある。実権がある。例えば、1人辞めさせようと思ったらすぐ辞めさせられる」

 87歳の日枝氏は約40年にわたりフジの頂点に君臨。「フジの天皇」と呼ばれるほど絶大な力を持つ。主役の不参加により、会見そのものが説明の説得力を欠く結果になったといい、「異例の対処が必要だった」と指摘した。

 出席した港氏ら役員も、日枝氏の進退に対する質問には、“我関せず”を決め込んだ。「みんな部下だから。しかも(日枝さんは)実力があって当時はバリバリできた人だろうから、お手本として尊敬しますよ。それから40年ずっと。それは頭が上がりませんよ」。歯切れの悪い幹部の回答が、かえって日枝氏の存在感を際立たせたと山見氏は見ている。

記者会見を「再生の第一歩の場にすべき」だった

 日枝氏について、フジ・メディア・ホールディングスの金光修社長は「やはりその影響力は大きい」と明言。さらに企業風土の醸成についても礎を築いてきたことを認めた。

 大御所の続投は、フジの危機意識が欠如している証左だと山見氏は語る。

「日枝さんが辞めなくても我々がなんとかします、ということ。彼らもまだまだなんとかなると思っている。『殿は関係ありません』と。会社が末期的症状。存亡の危機。その問題を軽視している。軽視というか、事の重大性を分かっていない」

 フジのCMを降りたスポンサーは75社に及ぶ。これだけ批判にさらされても、まだ“ボス”を守っている印象を与えた。「企業は昨日の会見で許していますか。記者の人があれだけ同じような内容で質問することはあり得ないわけですよ」と山見氏は続けた。

 不祥事の会見は、時系列に基づく事実の開示、真摯(しんし)な説明によって、イメージ回復にもつながると強調する。

「私はこういう問題が起きたら記者会見を再生の第一歩の場にすべきと考えています。2人の辞任だけでなく、役員全員が辞表を出すべきだった。その覚悟があることを示すだけで世間は変わりますよ」

 そこにはもちろん、日枝氏も含まれる。「最初からじゃなくてもいい。会見の途中に出てきて、『俺も辞任するからみんな頑張ってくれ!』と言ったらどんなに喝采を浴びるか。自分が引くことによって再生しようという気持ちがないのが考えられない」と首をひねった。

 企業は人間の体に例えることができるという。脳が経営者で、指先や体の各部位が社員だ。血液がきれいに流れていれば、健全な経営が保てるが、体のどこかでトラブルや問題が発生すると、そこで血流が止まり、やがて脳が壊死してしまう。

「血流が滞り、血液ドロドロ。神経も鈍く、正常作動にはほど遠い」。山見氏は現在のフジテレビをこう表現した。

 山見氏は、中居氏が会見を開かずして芸能界を去ったことにも憤りを口にする。

「あれだけテレビに出て、テレビで売り出してきた。それが去る時は逃げるよう。しかも会社も経営している。社会に対して、失礼な話ですよ。あるまじきです。フジテレビとしても会見させるべきです」

 清水賢治新社長は「信頼回復なくしてフジテレビに未来はありません」と表明。再建を約束したが、イバラの道が続きそうだ。

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