斎藤工、主演ドラマで独身男も…養子縁組を真剣に考えた過去「ハードル高い」 作品で描くテーマは「家、家族」

俳優・斎藤工(43)がリリー・フランキー(61)とともにダブル主演したドラマ『ペンション・恋は桃色season3』(全5話)がFODで配信中だ。ペンション「恋は桃色」を舞台にしたハートフルコメディードラマの第3弾。企画・プロデュースしたドキュメンタリー映画『大きな家』(公開中)も話題になっている斎藤が作品への思い、自身の結婚観について語った。

インタビューに応じた斎藤工【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた斎藤工【写真:ENCOUNT編集部】

『恋は桃色』で恋愛できないイケメン役

 俳優・斎藤工(43)がリリー・フランキー(61)とともにダブル主演したドラマ『ペンション・恋は桃色season3』(全5話)がFODで配信中だ。ペンション「恋は桃色」を舞台にしたハートフルコメディードラマの第3弾。企画・プロデュースしたドキュメンタリー映画『大きな家』(公開中)も話題になっている斎藤が作品への思い、自身の結婚観について語った。(取材・文=平辻哲也)

『ペンション・恋は桃色』は富士山が見えるペンション「恋は桃色」を舞台に、ほれっぽいがすぐに振られるテキトーなオーナー、シロウ(リリー)、その娘でしっかり者のハル(伊藤沙莉)、住み込みバイトのヨシオ(斎藤)の3人が織りなすコメディー。斎藤が企画プロデュースした『MANRIKI』『その日、カレーライスができるまで』の清水康彦監督、小林有衣子プロデューサーが手掛けた。

 オフビートな展開に、会話の機微、アドリブのみの居酒屋トーク場面、ドローンを使うなど実験的な要素もユニークだ。

 筆者が「取材を機に作品を初めて知り、シーズン1、2を一気見したが、面白かった」と言うと、「そうなんです。知らなかったという人が多いんです。まだ届くべきところに届いていないんじゃないかな。それだけ、サブスクの作品が飽和状態になっているということだと思っています。FODには150万人が契約していると聞いているので、150万人に発掘されてほしいという思いがあります。できれば、1から見て欲しいですね」と話す。

 タイトルは細野晴臣の1973年発表の楽曲『恋は桃色』から。細野は主題歌を提供し、シロウの父役で出演している。

「リリーさんを軸に、清水監督、小林プロデューサーという座組で、フジテレビの深夜枠でやろうというのが始まりでした。監督も小林プロデューサーも僕と同い年で、細野さんには憧れがあるので、そんなカルチャー感が作品に宿っていると思います。本作りの最終段階では、リリーさんが整えてくれ、僕らのパーソナルな部分を加味してくれた。毎回、『こう来たか』という思いもあります」

 斎藤が演じるのは、裕福な家庭に育ち、定職につかないワケあり青年ヨシオ。ふとしたことからペンションで住み込みバイトをしていく。少し理屈っぽく、人付き合いが苦手。ハルとは回を経て、少しずつ近しい関係になっている。

「ヨシオはどこか冷めている部分があって、ひねくれている。生きづらさと救いが同時に描かれているキャラクターだと感じます。彼の中にある得体の知れない穴が少しずつ埋まっていくような感覚を持って演じました。このヨシオの青さ、理屈を持っているけど、行動が伴わない部分には、自分自身の10年前の姿が重なる部分もあります」

「3」ではメインの3人のほか、シーズン2から登場の山口智子が続投し、新たに稲垣吾郎、MEGUMI、鈴木慶一がゲスト出演。ハルがファンアカウントで知り合ったケイタ(稲垣)がペンションを訪れることで、ヨシオとハルの関係も変わっていく……。

「ヨシオは、恋に臆病な人間だと思います。このシリーズのライフラインは絶妙な(恋の)二等辺三角形の関係。そこに、豊かなゲスト陣が加わって、ドライブしていく。関係が成就すると、物語が終わってしまいますので、成就してほしいけれども、このままの関係を保ってほしい気もしますね」

斎藤自身が語る恋愛観、結婚観

 斎藤自身もヨシオ同じ独身だが、どんな恋愛観、結婚観を持っているのか。

「でも、僕の前に(独身の)リリー先輩もいらっしゃいますからね(笑)。僕は、リリー先輩といるから、結婚が遠のいているのかな(笑)。いい影響と、そうではない影響の両方をいただいている気がします。年代的に結婚するのが当たり前ということは分かるのですが、結婚すると、何がいいのか、その結果を見せて欲しいと思うんです。でも、そんな僕も『大きな家』をプロデュースした時に養子縁組を考えたこともあるんです」

『大きな家』(公開中)とは、斎藤が企画・プロデュースし、『14歳の栞』『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』の竹林亮監督がメガホンをとり、児童養護施設で暮らす子どもたちの日常に密着したドキュメンタリーだ。斎藤は4年間、子どもたちと触れ合った。

「撮影時に制度を調べたことがあるんですが、当時は養子縁組のハードルが高かったんです。それが制度改正(20年民法改正で特別養子縁組制度の対象年齢が6歳未満から15歳未満に引き上げ)されて、緩やかになったんですが、国としては、もっと養子縁組を増やしていこうという考えがあるんです。そこには、国際化、少子化もあるので、血縁関係だけじゃない家族の形もあるんだという方向に日本も向かっていくんじゃないかと思います。だからといって、僕がいますぐ養子縁組をやるということでもないですが……」

 ドキュメンタリー『大きな家』だけではなく、この『恋はペンション』も3人の疑似家族の物語にも見える。また、監督作のホラー映画『スイート・マイホーム』(2023年)も、郊外に念願のマイホームを建てた主人公の物語だった。家、家族は斎藤のテーマにもなっているのではないか。

「『スイート・マイホーム』は上海映画祭に持っていたんです。そこで、『テーマは母の愛ですか』と聞かれたんですが、振り返ってみたら、そうだったんです。僕は家、家族というのが主題にあるんだなと思います。幸せな家族に憧れもありますけども、今、まだ結婚していないというのが多分、答えなんだと思います。ただ、血縁関係だけではない家族という可能性もあるのかなと思います」。そんな斎藤が心を込めて演じた『ペンション・恋は桃色』は、家族を超えた絆と居場所探しの物語。2025年のスタートに見るのにふさわしい心温まるドラマになっている。

『ペンション・恋は桃色season3』は1月10日から第1話・第2話、1月17日:第3話~第5話。同日よりメイキング映像も配信される。

□斎藤工(さいとう・たくみ)モデル活動を経て01年に俳優デビュー。映画『昼顔』、『シン・ウルトラマン』『碁盤斬り』、ドラマに「君が心をくれたから」「海に眠るダイヤモンド」など話題作に出演。映像制作にも積極的に携わり、初?編監督作『blank13』(18年) では 国内外の映画祭で8冠を獲得。昨年12月公開のドキュメンタリー映画『大きな家』(劇場のみ公開中)やダニー・トレホら出演のハリウッド映画『When I was a human』(公開日未定)ではプロデューサーを務めている。また、被災地や途上国での移動映画館cinema bird主宰、Mini Theater Park、撮影現場での託児所プロジェクト、白黒写真家など、活動は多岐にわたる。

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