フジテレビの「対応判断ミス」連鎖を考察…閉鎖的会見の“強行”で米株主をさらに怒らせる懸念【記者コラム】

タレント・中居正広と20代女性の「性的トラブル」を巡り、幹部社員の関与が報じられたなどの問題でフジテレビの港浩一社長が17日、東京・台場の同局で記者会見した。しかし、同社は参加者を一般紙やスポーツ紙などで構成する「ラジオ・テレビ記者会」加盟社とNHK、在京キー局の記者に限定し、テレビ各局の映像撮影は認めなかった。記者会非加盟でウェブメディアであるENCOUNTは前日16日、同局企業広報部に「問題の大きさから記者クラブに限定しないオープンな会見にすべき」と訴えていた。それも聞き入れなかった同局は、長く「対応判断」のミスを続けているように感じてならない。

フジテレビ【写真:ENCOUNT編集部】
フジテレビ【写真:ENCOUNT編集部】

被害報告を受けても中居正広の番組を継続 社長は「社員を守る」とメールで局内は

 タレント・中居正広と20代女性の「性的トラブル」を巡り、幹部社員の関与が報じられたなどの問題でフジテレビの港浩一社長が17日、東京・台場の同局で記者会見した。しかし、同社は参加者を一般紙やスポーツ紙などで構成する「ラジオ・テレビ記者会」加盟社とNHK、在京キー局の記者に限定し、テレビ各局の映像撮影は認めなかった。記者会非加盟でウェブメディアであるENCOUNTは前日16日、同局企業広報部に「問題の大きさから記者クラブに限定しないオープンな会見にすべき」と訴えていた。それも聞き入れなかった同局は、長く「対応判断」のミスを続けているように感じてならない。(取材・文=柳田通斉)

「これは閉鎖的会見にしようとしている」。そう感じた私は、フジテレビ企業広報部に電話を入れた。同部はこの時代に「質問はファックスで」のスタンスだが、「そんな暇はない」と判断してスマートフォンを手に取り、担当者に思いを伝えた。しかし、彼はこう言った。

「今回は記者会から要望があっての会見なので、こういう形になります」

 私はその前に記者会幹事記者と話していた。そして、フジテレビ側が「会見場が狭いので」と主張し、記者会側が「昨年のジャニーズ会見と同様、広い会場でオープンな会見にすべき」と言っても、「まずは会見を開催することが大事なので」と伝えていたことを把握していた。

 その事実を担当者にぶつけ、「このままそれで押し通すと、さらに批判は大きくなると思います。再検討してください」と伝えた。担当者は「分かりました。ご意見はいただきました」と言い、その後の折り返しはなかった。つまり、「上層部の判断」に従ったということだ。

 その後、さらに驚くべき情報を耳にした。同局が当初、記者会側に「カメラなし、ペンのみでの会見にできないか」と求めていたという内容だ。結局は、スチールカメラでの撮影は時間を限ってOKになったようだが、生配信、生中継はNG。質問ができないオブザーバーで参加のテレビ局は映像撮影さえもNGになっていた。つまり、閉鎖的会見をさらに規制していたのだ。

 港社長はそれだけ、自身の姿を映されることが嫌だったのか。同局は報道機関であり、数々の不祥事会見でカメラを回してきたにも関わらずに。こうした判断は筋が通らず、さらなる批判を呼ぶことをイメージできなかったのか。

 会見の概要は深夜、同局の企業公式サイトで公開。だが、記者とのやり取りは記されていなかった。参加した新聞記者に聞くと「大半の質問に『プライバシーの保護や今後の調査対象であること』を理由に回答を控えていた」とのこと。被害女性の報告で昨年6月に把握しながらも、中居に聞き取り調査をせず、レギュラー番組を続けた理由についても「女性のプライバシーを守るためだった」などと釈明。ネット上では「苦しい言い訳でしかない」と断じられる状況にもなった。

 結局、新たに発表されたのは「第三者の弁護士を入れた調査委員会を立ち上げる」ことのみ。それこそ、企業公式サイトで発表すればいいことだった。では、この時点でなぜ会見に踏み切ったのか……。理由として考えられるのは、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが、フジテレビを傘下にするフジ・メディア・ホールディングスに対し、中居の問題に関する「事実を調査した上で社外の専門家による第三者委員会を直ちに設置と信頼回復」を求めてきたこと。15日、同社の公式サイトに掲載された英語の長文には「この問題への対応が遅れたり曖昧になったりすると、視聴率の低下やスポンサーの離脱につながり、株主価値がさらに損なわれる可能性があります」「貴社株式の7%以上を保有する大株主の1人として、私たちは激怒しています!」とまで記してあった。つまり、この大きな動きへのリアクションが「社長会見」。記者会からも「2月の定例会見を前倒し」するよう要求されていた経緯もあり、「ひとまず、それでいける」「記者会だけの会見なら、撮影なしでも」と甘く判断したとも考えられる。

 だが、怒りの声明を出したダルトン・インベストメンツは米国の会社だ。会見から、外国メディアも締め出して良かったのか。女性は週刊文春に対し、被害報告をした後、フジテレビ側が中居への調査にも動かなかったことへの不満を漏らしている。にもかかわらず、港社長は「フジテレビは社員を守る温かい会社でありたい」と全社員にメールを送って良かったのか。そんな「対応判断」への不満や不安は、社員の口からも出ている。そのリアルを把握し、メディア対応も再考することを切に願う。

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