西野七瀬、公私順調も「私は幸せのハードルが低いんです」 大きなことは望まず「ゲームや漫画読んでるだけで幸せ」
俳優・坂東龍汰(27)が単独初主演した映画『君の忘れ方』(1月17日公開、作道雄監督)で、ヒロイン役に抜てきされたのが、俳優の西野七瀬(30)だ。結婚を目前に事故で亡くなってしまった恋人役で、劇中では、ほとんど言葉を発しない謎めいた存在。西野が、本作への思いや役作りのエピソード、俳優としての転機について語った。
映画『君の忘れ方』でほとんど言葉を発しないヒロイン役
俳優・坂東龍汰(27)が単独初主演した映画『君の忘れ方』(1月17日公開、作道雄監督)で、ヒロイン役に抜てきされたのが、俳優の西野七瀬(30)だ。結婚を目前に事故で亡くなってしまった恋人役で、劇中では、ほとんど言葉を発しない謎めいた存在。西野が、本作への思いや役作りのエピソード、俳優としての転機について語った。(取材・文=平辻哲也)
本作は結婚直前に、恋人・美紀を失った青年・昴が喪失と向き合いながら再生への道を模索する物語。西野の役は、故郷の岐阜に帰ってきた昴の前に、幽霊とも幻影ともつかない存在として現れ、言葉を発しない美紀。劇中、セリフがほとんどない役は初めての挑戦だった。
美紀は幽霊なのか、昴の幻影なのか。その解釈については、西野が撮影に入る際に監督や坂東と話し合いを重ねたという。
「あんまり考えすぎないように演じました。思ったように演じてみて、分からなかったら、監督と相談するといった感じで、昴が美紀に話しかけてくるシーンでは、反応しそうになるのを遮断するのが新鮮でした。私が合流したのは撮影の後半。現場入りした時には、既に素晴らしいチームワークが完成されていて、とても良い雰囲気でした」
撮影の最後には、美紀が昴のボイスレコーダーに残していた声を録音した。
「他愛のない日常のことを話しているだけなんですが、すごく悲しくなってしまいました。自分がそう思うほどだったので、昴にとってはもっと大きな存在だっただろうと思います」と少し目を潤ませながら振り返った。
完成した映画も涙なしに見られなかった。
「自分が出演した作品で涙が出ることはあまりないかもしれません。全体的に『じんわりとした良い温度感』の映画だと感じました。美紀を失った後から物語が始まり、昴の日常が静かに流れていく様子がリアルで、まるでドキュメンタリーを見ているような感覚になりました。昴が新しく出会う人たち(岡田義徳、円井わん)もすてきで、お母さん(南果歩)との場面も距離感がリアルで、共感できました」
映画は見た人に大切な存在は何かを思い出させる作品になっている。西野にとって大切なものはなにか。
「自分の時間とか、周りにいる大事にしていきたい人との時間です。見てくださった方にも、それぞれ何か感じていただけていたら嬉しいです」
西野は2011年にアイドルグループ・乃木坂46のメンバーとしてデビュー。18年のNHK紅白歌合戦出演を以て、グループを卒業し、以後はかねてからの女優業を本格化させた。転機になった作品には、映画『恋は光』(22年)を挙げる。同作は、人気コミックを原作とした、松山の大学生たちの群像劇だ。西野は同作でヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞した。
「今でもみなさんから『好きです』と言っていただけることが多いんです。最初、本の読み合わせの時に、(小林啓一)監督とお互いにしっくりこない感じで、不穏な始まりだったんです。でも、完成した作品を見た時には、『なんて素敵な作品なんだろう! またこの監督の作品に出たい!』と思うようになっていました」と監督の再タッグを望んでいる。
昨年5月に30代迎えるも、「そんなに激変するわけでもありません」
女優業については「面白い作品や素敵な共演者の方々に出会えることは、自分にとってとても貴重な経験です。それらを楽しみながら、自分も少しずつ成長していければと思っています。それは毎回楽しみにしつつ、自分も作品をやっていくことで、何か少しずつでもレベルアップしていけたらいいなと思います」
昨年は5月に30歳という節目を迎え、プライベートでの幸せをつかみ、公私ともに充実した日々を送っている。
「(30代が)ついに来たなーみたいな気持ちもありましたが、1歳年を取っただけで、そんなに激変するわけでもありません。じんわりとまずはスタートみたいな感覚で30代が来ました」と心境の変化を語った。
今年の抱負については「私は大きなことを望んでいるわけではなく、幸せのハードルが低いんです。ゲームしたり、漫画を読んでいるだけで幸せだなと感じられる。なので、お仕事もちゃんと向き合って大事にしていきつつ、お仕事してない時間も楽しんで過ごせたら何よりと思います」と笑みを浮かべた。
□西野七瀬(にしの・ななせ)1994年5月25日生まれ、大阪府出身。2011年にアイドルグループ・乃木坂46のメンバーとしてキャリアをスタート。18年にグループを卒業後、本格的に俳優として活動。ドラマ『あなたの番です』(19/NTV)での演技で注目を集め、その後も数々のドラマに出演。主な出演映画に『あさひなぐ』(17)、『シン・仮面ライダー』(23)、『ある閉ざされた雪の山荘で』(24)、『52ヘルツのクジラたち』(24/成島出監督)、『帰ってきたあぶない刑事』(24)など。『孤狼の血LEVEL2』(21)では日本アカデミー賞優秀助演女優賞と新人俳優賞を受賞し、『恋は光』(22)でヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。公開待機作にW主演を務める『少年と犬』(25)がある。
ヘアメイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリスト:鬼束香奈子