横浜市「公園全面禁煙」決定の背景 全2700か所で実施、過料5万円以下も「すぐに罰則を科すとは…」
横浜市が管理する約2700か所の公園を全面禁煙とする改正公園条例が、2024年9月の市議会本会議にて全会一致で可決し、成立した。施行は2025年4月1日からで、違反した場合は5万円以下の過料を科す規定がある。すでにいくつかの行政が公園禁煙化に踏み切っているなか、人口370万人超の政令指定都市にある2700か所の公園で実施されるという、その規模の大きさが話題となっている。決定に至るまでの経緯と、施行まで約3か月となるなかでの準備や今後の対策について、横浜市の担当者に話を訊いた。
改正公園条例が全会一致で可決し成立、2025年4月施行へ
横浜市が管理する約2700か所の公園を全面禁煙とする改正公園条例が、2024年9月の市議会本会議にて全会一致で可決し、成立した。施行は2025年4月1日からで、違反した場合は5万円以下の過料を科す規定がある。すでにいくつかの行政が公園禁煙化に踏み切っているなか、人口370万人超の政令指定都市にある2700か所の公園で実施されるという、その規模の大きさが話題となっている。決定に至るまでの経緯と、施行まで約3か月となるなかでの準備や今後の対策について、横浜市の担当者に話を訊いた。(取材・文=藤井雅彦)
これも時代の流れだろうか。「他の都市の動向は調べていますし、参考にしています」と話したのは、横浜市みどり環境局公園緑地部公園緑地管理課長の関本直子さんだ。
今回の公園全面禁煙は、厚生労働省による健康増進法の改正(2018年7月改正、2020年4月全面施行)により、屋外でも受動喫煙の配慮義務が加わったことに端を発している。その決定を踏まえて、横浜市では「これまでも、例えば遊具があるような広場では受動喫煙に配慮してもらうための掲示をしてきました。実際に動物園やプールでは、すでに禁煙になっています」と関本さんは説明する。こうした現状がある上で、「横浜市は『子育てしたいまち 次世代を共に育むまち ヨコハマ』の実現に向けて、安心と安全を確保するために禁煙を周知徹底していきたい。現状でも、喫煙者の方々には受動喫煙にならないような配慮をお願いしていますが、明確に公園全面禁煙とすることで、お子様をはじめ多くの方々に安心、安全に使っていただこうと、条例を改正して明確に位置づけることになりました」と、今回の決定に至るまでの経緯を明かした。
禁煙化決定に向けて、横浜市はいくつかのステップを踏んできた。
2023年7月から8月に公園内における受動喫煙対策に関するアンケートを実施。同10月から11月には市内5か所の公園で実際に禁煙とし、施行前後の喫煙者数を調査するとともに公園利用者にアンケートを行った。そして最後に2024年4月18日から5月31日にかけて、市民への意見募集(パブリックコメント)を実施。その結果、公園での全面禁煙を望む意見が全体の62.6%、分煙環境の整備を望むものの全面禁煙に賛成する意見が9.8%と、合わせて7割以上が実施に肯定的な意見となった。
違反した場合に5万円以下の過料を科すというのは、従来から公園における禁止行為に対して規定されているものだが、金額面でのインパクトは大きい。もともと横浜市内では主要駅前を中心とした8地区を喫煙禁止地区に指定し、違反者には罰則として過料2000円を科す制度がある。今回の改正条例では、市内2700か所という膨大な数の公園を禁煙にすることになるが、今後はどのように取り締まり、違反者から過料を徴収していくのか。
「4月以降は、現状でよく喫煙者がいらっしゃった公園や吸い殻が落ちている公園を重点的に見回っていきます。もし見かけたらお声がけし、公園全面禁煙についてお知らせし、啓発します。タバコを吸っている方を見かけたからといって、すぐに罰則を科すとは考えていません。まずは周知徹底していくことが大切。目的は受動喫煙をなくすことですので、まずはしっかりとお伝えしていって、理解を深めていきたいと考えています」
分煙環境を望む声と禁煙化に否定的な意見も合わせて約3割
国際都市である横浜にとって、インバウンドへの対応も焦点になる。観光都市としての価値を維持向上させるのと公園の全面禁煙をいかにして両立していくか。そのためには外国人喫煙者も、すぐに理解できる工夫が欠かせない。「外国の方にもわかるように禁煙のピクトサインを使い、もちろん『NO SMOKING』の英字表記を掲示します。基本的な対策からスタートすることになりますが、観光地周辺は公園近くの喫煙可能店を利用してもらうなど、観光部門との連携も必要になると考えています」と、関本さんは今後の展望を語った。
横浜市の場合、観光スポットである山下公園を筆頭に、公園で大規模なイベントを実施するケースも少なくない。市内だけでなく市外からも多くの人が集まる。そういった際には「常設の喫煙所は設けませんが、イベント実施時は仮設喫煙所を設けることを検討しています。これまでも実施してきた対応ですが、制度上は4月以降も可能ですので、主催者側と協議していく形になります」と柔軟な姿勢をのぞかせている。
前述したアンケートでは、分煙を求める声や禁煙化に否定的な意見も合わせて約3割あり、喫煙者の権利も無視できない。
横浜市ではそうした声にも耳を傾けながら、「先ほど申し上げた8地区の喫煙禁止地区には、喫煙所をセットで設置しています。分煙環境をどのように考えていくか、今後の整備については、市全体として検討事項になっています。我々は公園管理者ですが、受動喫煙防止対策を行っているのが健康福祉局で、喫煙禁止地区は資源循環局の管轄なので、横の連携を深めながら進めていきたいと考えています」と見据えた。
2025年4月1日からの公園全面禁煙の施行に向け、すでに地域の町内会や自治会にチラシを配布し、地域の掲示板にも掲出を依頼するなど周知に努めている。日本屈指の規模を誇る大都市が打ち出した政策だけに、成否や成り行きが耳目を集めているのは言うまでもない。