「実写化のためならなんでもする」 漫画家・藤原さとしが実現させたい夢、天国に旅立った恩人との約束
自衛隊内部の描写をリアルな目線で描いた漫画『ライジングサン』は元自衛隊員の藤原さとし先生の言わずとしれたヒット作で、2012年から「漫画アクション」(双葉社)で連載がスタートした。現在も同誌で続編となる『ライジングサンR』が連載中だ。長期連載となった同作だが、藤原先生にはどうしてもかなえたい「映像化」という夢があった。
恩人への思い「エンドロールに『丹羽鉄平』というクレジットを必ず入れてあげたい」
自衛隊内部の描写をリアルな目線で描いた漫画『ライジングサン』は元自衛隊員の藤原さとし先生の言わずとしれたヒット作で、2012年から「漫画アクション」(双葉社)で連載がスタートした。現在も同誌で続編となる『ライジングサンR』が連載中だ。長期連載となった同作だが、藤原先生にはどうしてもかなえたい「映像化」という夢があった。
連載スタートから約12年。自衛隊での青春群像劇という映像化するには申し分のないコンテンツのようにも思える同作だが、まだその実現には至っていない。
「実写化はしてほしいです。むしろ、そのためだったら何でもしたいと思っているんです」
藤原先生がこのように語るのには、『ライジングサン』誕生にまつわる人物との約束があった。
「この作品には、初代の担当編集さん(現『ビッグコミックスピリッツ』編集長・加納由樹氏)と、もう1人重要な人物がいたんです。その方が、双葉社の営業担当・丹羽(鉄平)さんという方でした。3人でヒット作に育てたという経緯がありました。『ライジングサン』の連載開始当時、編集部の誰からも期待されていなかったんです。担当編集と2人で孤軍奮闘でどうにかしようとしていた頃に、営業の方が編集部にやってきて、『ライジングサンって担当誰?』と聞いてきたんです。それが丹羽さんでした。初めてお会いした時にも『この漫画、絶対売れるよ。営業もめっちゃ力入れて頑張るからやっていこう』と言ってくれたんです。すごく熱い方でしたね。
その後、編集の加納さんは小学館に移ってしまいましたが、丹羽さんと新しい担当編集の方でいろいろ頑張って、ことあるごとにお酒を飲みに行ったりしていました。丹羽さんからは『藤原さんはよそに行かないでほしい。他の出版社からも話がきているかもしれないけど、ずっと双葉社で描いてほしい』と言われていましたね。実際、他からも話はきていて、『大手だったらもっと売れるのかな?』とよぎることもありましけど(笑)、丹羽さん1人残して、そんなことはできないって思ったんですよね。続編の『R』が始まる時にも丹羽さんや編集さんと『どういう話がいいと思う?』など、話し合いもしていました。
そんな頑張ってまた売っていこうと話していた矢先に、丹羽さんが事故で亡くなってしまったんです。丹羽さんと約束しちゃったので『ライジングサン』はこれからもずっと双葉社で描いていきます。僕が映像化にこだわるのは、映像化された方がみんなに知ってもらうチャンスもあるし、もっと売れてほしいからというのはあります。それとは別に、丹羽さんとよく話していたのが映像化だったんです。丹羽さんを忘れてほしくないので、映像化された時にはエンドロールに『丹羽鉄平』というクレジットを必ず入れてあげたいんです。これが映像化する時の僕からの唯一の条件なんです」
これまでにも映像化の話がくることはあったが、実現には至らなかったという。「映像化しやすい方にシフトしているつもりではあります」と夢の実現に向けて、作品のストーリー展開も考えているようだ。「レンジャー編では見開きの絵を多用しているんです。それは、映像で撮った時のことをイメージして、そういったことを意識して作っていますね」。
映像化にはアニメだけではなく、実写化という選択肢もある。
「以前に実写キャストの想像とかもしたことがありましたね。主人公の甲斐(一気)は童顔っぽいイメージがあるので、菅田将暉さんとかにやってもらえたらうれしいですね。役者として、ストイックにやってくださいそうなイメージもあるので、ぜひやってほしいですね(笑)」
丹羽さんとの約束を胸に藤原先生はこれからも夢の実現のために筆を走らせる。