大人から冷たい視線を浴びた過去 “性別にとらわれない”とうあが表現する「ありのままの自分」

性別にとらわれない自由なビジュアルや考え方を発信し続けるインフルエンサー・とうあが、アーティスト・Touaとしての活動を本格的にスタートさせた。11月27日に初EP『I am I』をリリースするなど、新たなフィールドに挑んでいる。若者への絶大な影響力を誇り、今ではZ世代のアイコンと称されることもある22歳のこれまでとこれからを聞いた。

アーティスト活動もスタートさせたとうあ【写真:事務所提供】
アーティスト活動もスタートさせたとうあ【写真:事務所提供】

今後の目標は「唯一無二を表現して、新しい時代のアイコンに」

 性別にとらわれない自由なビジュアルや考え方を発信し続けるインフルエンサー・とうあが、アーティスト・Touaとしての活動を本格的にスタートさせた。11月27日に初EP『I am I』をリリースするなど、新たなフィールドに挑んでいる。若者への絶大な影響力を誇り、今ではZ世代のアイコンと称されることもある22歳のこれまでとこれからを聞いた。(取材・文=中村彰洋)

「とにかく有名になりたい」――。そんな漠然とした思いを幼少期から抱いていた。そんなとうあに転機が訪れたのは、将来に思い悩み、壁にぶつかっていた高校2年生の時だった。

 小さい頃から目立ちたがり屋だったというとうあ。きらびやかな世界に憧れ、ファッションデザイナーを目指し、地元・岐阜の服飾の専門高校に通い始めた。頻繁に隣県の愛知で開催されるファッションイベントに足を運ぶようになり、ファッション業界のキラキラした人たちに囲まれる中で、「もっと早く有名になりたい」という思いだけが膨らんでいった。

「高2ぐらいの時に『私はこの高校で何をやっているんだろう』と悩むようになりました。1週間ぐらい学校に行かなくなった時期もあって、とにかく『早く東京に出たい』とばかり考えていました」

 思い悩むとうあの背中を押したのが、同じ高校の1つ上の先輩だった。高校生ながらもカメラマンなどクリエイティブな活動をしていた先輩の姿に、以前から憧れは抱いていたものの、話したことすらもなかった。「この人なら分かってくれる」。ただその直感に突き動かされる形で悩みを打ち明け、人生が一変した。

「ちゃんと向き合ってアドバイスをくれました。『その気持ちも言いたいことも分かるけど、東京に行って何で戦うの?』と言われて、何も答えることができませんでした。何も武器を持っていないことを痛感しました。

 その先輩が『まずはインスタに顔を出してみたら?』とアドバイスをくれたんです。それまでは服や友人との日常を投稿していただけでした。田舎だったこともあって、SNSで顔を出すという発想がなかったんです。当時は度肝を抜かれましたね(笑)。そこからSNSの世界に足を踏み入れました」

 その後は、インスタやYouTubeと精力的に発信を行い、徐々に認知を広げていった。「ずっと珍しい存在として生きてきましたし、注目されることが心地よかったりもしたんです。私自身は、メイクをして、スカート履いたりと独特なファッションだったので、反応がいい自信はありました」。

 そして、高校在学中に現在の事務所・アソビシステムと出会う。高校卒業後には憧れだった上京を経て、紆余曲折がありながらも、現在はインフルエンサーとして絶大な影響力を誇るまでにいたった。

とうあを支えた母親からの教え「自分らしくいることは何も悪いことじゃない」

 とうあといえば性別にとらわれない個性的な姿がアイデンティティーとなっている。そんなありのままを発信するきっかけを与えたのは、母の言葉だった。

「私は生まれた時からこの性格なんです。父親がずっと仕事で家を離れていたこともあって、母・妹・従姉妹・従姉妹の母親と女性に囲まれながら毎日のように遊んでいました。自然と幼稚園や小学校でも、女の子の友達が圧倒的に多くて、行動や言動も女性っぽくなっていきました。昔から洋服が好きで、ある日母親から『スカート履いてみたら?』と言われたんです。母親は私が言わなくても気付いていたんですよね。それを言われて、『あ、スカート履いてもいいんだ』となってから、私の暴走が止まらなくなりました(笑)」

 時には、好奇な目で見られることもあったが「周りの環境に恵まれていた」とありのままを受け入れてくれた友人たちに感謝する。その一方で、「大人」や「中学校の先輩」といった存在がとうあの目には「敵(かたき)」として映っていた。

「小学生の頃は、田舎に住んでいたこともあって、まだジェンダーへの認識が今ほど広がっていませんでした。周りの友達は仲良くしてくれるのに、裏で大人に何か言われたり……。女の子と腕を組んで歩いてるだけで、三者面談の時に『大丈夫ですか?』と言われたこともありました。それ以来、大人という存在に対して敵対心を抱くようになりました。中学の先輩から冷たい視線を浴びせられたこともありましたが、友達が『うちらはうちらで楽しくやろうよ』と声を掛けてくれたので、気にせずに過ごすことができました」

 特に“カミングアウト”することもなく、自然な流れで現在のとうあが形成されていった。「自分らしくいることは何も悪いことじゃない」――。それが母親からの教えだった。「YouTube上ですっぴんを出すことも何も抵抗なかったです。恥ずかしい気持ちもなく、ただ自分の素を偽ることなくさらけ出してきました」。

 若い世代からの支持を集める理由については、「ありのままの自分を見せることが大きいと思います。自分の悩みや葛藤もさらけ出したりするので、親近感を持ってくれる人が多いと思います」と分析する。

 これまで一貫して、飾らない姿を発信してきたが、影響力を持つようになったことで自覚も芽生えたという。「言葉の言い回しは考えるようになりました。昔は思ったことをなんでもかんでも言っていましたが、受け取り方は十人十色だと学びました。過去に失敗もしましたし、その点は意識しています。でも、自分を偽りたくはないので、そこの塩梅は難しいですね」。

 YouTubeの切り抜きなどが意図せぬ形で拡散されることで、否定的な声を耳にすることもあるが、それをモチベーションに変えることでこれまで活動を続けてきた。

「私はそれをエネルギーに変えていくタイプです。容姿について言われたら、改善する努力をします。私は私だし、そんな声に負けるわけにはいかないんです。だから常に見てろよって思っています。『とうあちゃんがいるから生きていけます』と声をかけてもらうこともあるんです。『私が負けたらダメだ』という気持ちで戦い続けています」

 5年前に描いていた理想には「まだまだ達していません」と目標は高い。

「自分らしさを大切さにするということを、ずっと言い続けてきました。私が母親に教えてもらったように、私もみんなに伝えていきたいです。音楽やYouTube、モデルといろんな面から知ってもらえるように活動の幅を広げています。唯一無二を表現して、新しい時代のアイコンになりたいです」

□とうあ/Toua 2002年11月26日、岐阜県出身。高校2年生ごろからインフルエンサーとしての活動をスタート。インスタグラムやYouTubeで多数のフォロワーを獲得。若者への絶大な人気と影響力を誇る。とうあが発信した「おはようでやんす」は20年・21年と連続して若者トレンドワードに選ばれた。21年12月に自身初の書籍『生まれ変わっても自分でいたいって思うために生きてる』を出版。22年には『若者(Young)』でアーティストデビュー。24年11月27日に初のEP『I am I』をリリースした。また、23年9月には、アパレルブランド「BG」を発表するなど、多方面で活躍中。

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