「いだてん」は“和製アベンジャーズ”…中村勘九郎&阿部サダヲが撮影振り返った
NHK大河ドラマ「いだてん」が27日の放送から、1964年の東京五輪の様子を描いていく。物語がクライマックスに突入する中、10月1日には、撮影がすべて終了。このたび、前半の主人公を務めた金栗四三役の中村勘九郎(37)と、後半の主人公を務めた田畑政治役の阿部サダヲ(49)がそろって取材に応じた。
物語はいよいよクライマックスへ…1964年の東京五輪を描く
NHK大河ドラマ「いだてん」が27日の放送から、1964年の東京五輪の様子を描いていく。物語がクライマックスに突入する中、10月1日には、撮影がすべて終了。このたび、前半の主人公を務めた金栗四三役の中村勘九郎(37)と、後半の主人公を務めた田畑政治役の阿部サダヲ(49)がそろって取材に応じた。
――全体を振り返ってみて、改めて「いだてん」の面白さを聞かせてください。
阿部「近現代で知らないこともあったので、勉強になりました。改めて、近現代も楽しいんだなと思いました。最初、僕は『日曜の8時に笑いが起こる』と言っていたんですが、感想を聞くと『泣けた』という人が多くて、そこは間違っていたなと思いました」
勘九郎「歴史の授業では、女子には平安時代が人気だったりとか、男子は戦国時代や幕末が好きだったりします。そうした時代はよく勉強するが、明治の終わりとかは駆け足でやっちゃう。『いだてん』で歴史を知れば知るほど、自分たちが学んでおかないといけない一番大事なところかなと思いました」
――スポーツへのとらえ方は変わりましたか。
勘九郎「運動が苦手だったので、避けてきたが、この作品で走ることの楽しさを知りました。一瞬にかける選手のプレッシャーだとか、選手の精神、中身はすごく気を遣うようになりました。これは作品ですが、オリンピック前には白髪が増えたりしましたから」
阿部「何が何でもメダル、全種目制覇だとか言ってはいけないなと思いました」
笑えるシーンがある中で、泣けるシーンもたくさんありました
――宮藤官九郎さんの脚本で、驚くことが続いてきましたが、演じてみていかがでしたか。
阿部「毎回毎回、2回分くらいを詰め込んでいます。宮藤さんは『まだ書き足りない』と言っていて、そこがすごいなと思う。結構、面白いシーンもカットされている。笑えるシーンがある中で、泣けるシーンもたくさんありました。スポーツに関する話で、アスリートを応援するところで泣いたりした。(日本人女性初の五輪メダリストとなった)人見絹枝さんの回は泣けましたね。僕の回が始まったのに、主役じゃないのかなあと思ったりもしました(笑い)」
勘九郎「宮藤さんはやさしいなと思います。悲劇的なところも、感動するところも、ここでずっと泣いていたら疲れるだろうなというので、最後にふっと心を和らげてくれる笑いのシーンが最後にある。やっていても楽しいし、見ていても楽しいです」
――来年、東京でオリンピックがありますが、勘九郎さんは実際にサッカーと陸上のチケットがあたったそうですが、期待はありますか。
勘九郎「陸上の最終日が当たったのですが、もし、サッカーで日本代表が決勝にいったら、陸上ではなくて、サッカーの決勝に行くかもしれないですね」
――阿部さんはチケットを申し込まれたんですか。
阿部「してないです…」
勘九郎「でも、水泳は見ることができるんじゃないですか」
阿部「そういう甘えた気持ちがあったんですが…。見ることはできないですよね(笑い)。開会式はどういう演出なのかとか興味あります。ドラマの中で印象的だったので、選手村にも行きたいという気持ちがあります」
いいおじいさんになっていて、最終回で2人が顔を合わせるシーンは面白かった
――第2部から2人の共演がありましたが、その感想を教えてください。
阿部「アスリートの時の金栗さんと、引退してからの金栗さんがすごく変わってくる。引退してからの金栗さんはすごくかわいくて。いいおじいさんになっていて、最終回で2人が顔を合わせるシーンは、面白かったですね」
勘九郎「一緒のシーンは重かったが、オリンピックが好きという純粋な気持ちを持っている2人なので、一緒にやって楽しかったですね」
――大河の主役をやって得たものは何ですか。
勘九郎「後半はワンシーンでの出演が多かったのですが、現場に行くと、まだ発表になってない知らない人たちがいるんです。浅野忠信さんとか、井上順さんとかが(現場で)歩いていて、それまでも物凄い方たちが出ていて、“和製アベンジャーズ”だなと思いました。ミュージシャンがいて、お笑いの人がいて、役者がいて、落語家がいて、歌舞伎役者がいて、すごい人たちとできたことが、得たことですね。あと、走りに関しては、ヒザが悪いんですが、走っていると本当に調子がいいんです。終わって、今、歌舞伎の稽古をしているんですが、稽古していたほうが、ヒザが痛むという…。だから、歌舞伎が向いてないんじゃないかなと思うんですが(笑い)。ヒザのためにも走り続けようと思います」
阿部「これまでの大河と違って、出演する役者の数がすごく多いと思うんです。なかなか会えない方とお芝居できたのはよかった。もう一緒にお芝居できない方、ショーケン(萩原健一)さんとご一緒できたことは、自分の中に残るものです」
――1964年の東京五輪に向けての見どころを教えてください。
阿部「今までの『いだてん』とは違う見方ができると思います。いきなり、僕は落語を始めたりします。(古橋廣之進役の)北島康介さんがカエルを食べたりしているので、すごいですね。ホンモノでしたから。『飲み込めねえ』と言っていました(笑い)」
勘九郎「(東京五輪に向けて)ニトロのエンジンを積んで、アクセル全開で突っ走っている感じです」
□中村勘九郎(なかむら・かんくろう)本名・波野雅行。1981年10月31日、東京都生まれ。37歳。父は18代目・中村勘三郎さん。1986年、歌舞伎座「盛綱陣屋」小三郎役で初お目見え。1987年、「門出二人桃太郎」桃太郎役で2代目勘太郎を名乗り、初舞台。2012年、6代目中村勘九郎を襲名。2009年に女優の前田愛と結婚、2男がいる。
□阿部サダヲ(あべ・さだを)1970年4月23日、千葉県生まれ。49歳。1992年より松尾スズキが主宰する「大人計画」に参加。演技経験ゼロから役者人生をスタートさせた。数多くの映画やテレビドラマで活躍。宮藤官九郎らと結成したパンクコントバンド「グループ魂」ではボーカルを務める。