【スターダム】選手から絶大な信頼を寄せられるリングアナが見る景色「“トイレタイム”はない」
スターダムのスタッフとして、今や欠かせない存在の安藤頼孝リングアナウンサー。実は彼はフリーのままスターダムの興行に参加し、リングアナはもちろん、リング・音響設備に加え、調印式の司会までこなすマルチぶりだ。その安藤に、今年大きく変わったスターダムの景色について語ってもらった。
各試合の因縁が面白いでスターダム全体を楽しんでもらいたい
スターダムのスタッフとして、今や欠かせない存在の安藤頼孝リングアナウンサー。実は彼はフリーのままスターダムの興行に参加し、リングアナはもちろん、リング・音響設備に加え、調印式の司会までこなすマルチぶりだ。その安藤に、今年大きく変わったスターダムの景色について語ってもらった。(取材・文=橋場了吾)
今年春に大きな変革があったスターダム。安藤頼孝リングアナウンサーは、その変化を一番近くで見てきたといっても過言ではないだろう。
「それぞれの選手が自分で選んだ道なので、それについて言うことはないんですけど、フリーになる選手がいなかったのは良かったと思うんです。フリーの自分が言うのもなんですが(笑)。個人的には団体対抗戦は乱発するものではないと思ってはいますが、やはり自分が守るべき団体がある中で試合ができるって、幸せなことだと思うんですよ。自分が団体に所属しているから、ちょっと冒険もできるというのもあるので。今回の(スターダムから5名の離脱者が出た)件は、残る・辞めるはともかくとして、どちらかの所属で決着がついたのは良かったと思いますね」
リングアナウンサーといえば、常にリングの近くで試合はもちろん、会場全体に気を配っている存在だ。
「スターダムではタイトルマッチが決まって前哨戦が多く行われるんですが、タイトルマッチへのストーリーはもちろん、実はそのほかの試合も面白いですし、むしろなんでベルトも懸かってないのにこんなに選手たちが因縁つけているの? という試合を見てほしいですよね。それこそクマを巡る争い(コグマが対戦相手にクマポーズを強要する流れ)だったり。ベルトが懸かると緊迫した感じになると思いますが、それ以外のほっこりとした部分も見てほしいですね。そういう意味では、いわゆる“トイレタイム”みたいな試合はないと思います。どこかで何かしらの因縁や関係性があるので。選手たちは自分のカードを見て、それぞれのテーマを見出して試合をしていますから、いつも緊張感のある試合をしている選手が少し前の方でカードが組まれると全然違う試合をしていることもありますので。もちろん推し選手の応援はしてもらいたいですけど、スターダム全体を楽しんでほしいという気持ちも強いですね」
キッド「スターダムファミリーの一員」、玖麗「おちゃめなところもある」
ここでスターダムの選手に登場してもらおう。まずはスターライト・キッド。今年NEO GENESISというギャル系ユニットを立ち上げ、ノリにノッテいる選手の一人だろう。
「(安藤さんは)なんでもできる人。そして女子プロレスのリングアナウンサーの伝統を引き継いでいる人、ですね。実はキャッチフレーズも安藤さんが考えてくださっている部分もあって。あとビッグマッチのワイシャツとネクタイは、その日のメインに出る選手の色に合わせていたりします。フリーですけど、スターダムファミリーの一員だと思っています」
そしてもう一人、玖麗さやか。すでに新人の域を脱し、今年一番成長したといっても過言ではない選手だろう。
「実はセコンド業務を最初に教えてくださったのは、安藤さんなんです。何もわからない自分たちに、セコンドとはどういう存在か、何をすべきかを教えてくれました。当時は怖いイメージだったのですが、おちゃめなところもあって『今日もときめいてる?』(玖麗の得意技名が『ときめきスピアー』)と話しかけてくださったり、目が合ったら私のポーズを真似したりしてくれます」
玖麗の話にも出てきたが、安藤はセコンド論を語ることがあるそうだ。
「セコンドって何のためにいるのか……もちろん自分のユニットの仲間をサポートするのもあるんですけど、一番はリング上の選手が安心して試合をできるようにするためにいるわけですよ。私も本部席で一番近いところで試合を見ていますけど、試合とセコンド、レフェリー、会場のお客さんを見ているわけです。セコンドはリングの選手が安心して試合ができるように、例えばコスチュームの一部が客席に飛んで行ってしまったらすぐ回収しないといけないですし。リングを拭く雑巾が何かのきっかけで見える場所に落ちているなんてカッコ悪い状況になると、それはセコンドの責任なんだよと。そういう基礎的な部分というのができないと、いいレスラーにもなれないと思います」
最後に安藤がプロレスラーについて気になることを語ってくれた。
「あるレスラーが、会場の空気を動かすということを意識するようになったんですよ。レスラーとして、違うステージに入ったのかなと。こうなると、彼女はベルトがなくても興行の中で一番インパクトを残すことができるようになるんです。ほかにチャンピオンがいるのに、全試合終わったあとにスポットライトが当たっていたのは彼女だね、と。でも、ベテランと呼ばれる選手ががむしゃらにベルトを獲りに行くのも嫌いじゃないです(笑)。とにかく、今のスターダムは全試合を楽しんでほしいですね」