俳優の小西桜子（26）が映画『ありきたりな言葉じゃなくて』（12月20日公開、渡邉崇監督）でヒロインを演じた。同映画は前原滉主演作で、脚本家デビューのチャンスを得た青年がキャバクラでりえ（小西）と出会ったことをきっかけにトラブルに巻き込まれ、やがて成長する姿を描く。本作の出演を機に、大手事務所に所属した小西が、これまでの歩み、今後の目標について明かした。（取材・文＝平辻哲也）

　本作はテレビ朝日系列の制作会社「テレビ朝日映像」が初めて手掛けた長編オリジナル映画だ。同社の社員、渡邉崇監督が実話を基にした痛切な青春ストーリーを紡いだ。主人公の藤田拓也（前原滉）は、ドラマ脚本家を夢見る32歳のテレビ構成作家。ドラマ脚本家デビューが決定した矢先、キャバクラで出会った女性・りえとの関係をきっかけに、全ての信頼を失ってしまう……。

「テレビ朝日映像さんの熱意をとても感じました。これほど情熱が込められた作品に参加できることを本当にありがたく思い、全身全霊で務めさせていただこうという気持ちで臨みました。主人公である拓也の葛藤や感情をりえが引き出すことで、物語に良い化学反応が生まれれば、と期待しました」

　りえは主人公から強引に襲われたと主張し、主人公の前途を貶めていく謎めいた女性だ。

「りえは客観的に見ると、決してまともとは言えない行動を取る部分もあります。彼女は不安定さや図太さといった二面性を持ち、その複雑な魅力をどう表現するかが役者としてのやりがいでした。彼女を否定するのではなく、心を寄せながら演じたいと考えました」

　映画では、主人公との関係が次第に悪化していくが、撮影は和やかな雰囲気だったという。

「前原さんは飾らず気さくな方で、主演としての頼もしさも感じました。脚本の提案や解釈について監督を交えて相談することも多く、一緒に作品を作り上げている感覚がありました。普段は完成した脚本をそのままいただいて演じることが多いのですが、今回は脚本の提案や修正にも関わり、自分自身も作品作りに深く携わる経験ができました」と振り返る。

　本作をきっかけに、小西は今年9月に前原が所属しているトライストーン・エンタテイメントに所属した。

「まだまだ可能性を感じてもらえていることがありがたいです。（フリーであることは）不都合もありましたが、自由な面も大きかったです。さらなるステップアップを求めて、事務所に所属することを決めました。今はとても新鮮です。責任感も生まれ、自分がどれだけ返せるかを考えるようになりました」

　小西は大学時代に映画サークルに所属し、自主映画に出演した。

「自主映画を一般の方にも観ていただける機会があり、自分の世界ではない人々に作品が届くという体験に喜びを感じました。この経験がきっかけで、映画の世界を本格的に仕事としてやっていきたいと思うようになりました」

　その後、窪田正孝主演、三池崇史監督の『初恋』では応募総数約3000人からヒロインに抜てきされた。俳優として大きな経験となったのは、ヒロインを務めた初舞台だった。

「映画を観ることが好きで、自分も映画を通して多くの感情や励ましを受けてきました。その経験から芝居の世界に挑戦しようと思いましたが、お芝居を深く学ぶ機会は少なく、それまでは新人らしい純粋さで役をいただいていたと思います。舞台では稽古を通じて一からお芝居を学び直す経験をしました。稽古でお芝居を深く掘り下げられ、その体験がきっかけで、お芝居への向き合い方が変わりました」

　新たに所属したトライストーン・エンタテイメントは俳優の小栗旬が社長を務め、田中圭、綾野剛、若村麻由美 、木村文乃らベテラン実力派から新人までが幅広く名を連ねている。

　今後については「舞台や映画、ドラマなど、すべての作品に全身全霊で挑み、代表作と呼べる作品を残したいです。多くの方に良い影響を与え、映画祭にも出品されるような作品に出演することが目標です。舞台にも挑戦してみたい」と意気込む。さらに才能を開花してくれそうだ。

□小西桜子（こにし・さくらこ）1998年3月29日生まれ。埼玉県出身。応募総数約3000人の中から映画『初恋』（20）のヒロインに抜てきされ、注目を集める。そのほか映画『猿楽町で会いましょう』（21）、『はざまに生きる、春』（23）、『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』（23）など多数の映画に出演。『佐々木、イン、マイマイン』（20）、『初恋』（20）、『ファンシー』（20）の演技で、第42回ヨコハマ映画祭 最優秀信じん賞を受賞。近年には、ドラマ『猫』（20/TX）、『スイートモラトリアム』（23/TBS）、『御手洗家、炎上する』（23/ Netflix）などにも出演。今後、来年1月11日スタートのドラマ『風のふく島』（テレビ東京）、同14日スタートのドラマ『まどか26歳、研修医やってます！』（TBS）に出演する。