2020年の邦画ベストワンは「37セカンズ」に決まり!世界の映画祭でも高い評価
神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦…脇を固める俳優陣も素晴らしい
「37セカンズ」が今の形になったのは、佳山との出会いが大きいとHIKARI監督が言う。「オーディション時の脚本は50%くらいの形。(佳山)明ちゃんと出会ったことで、彼女自身の生い立ちや環境をストーリーに盛り込みました」。ラストの展開も、佳山の生い立ちをモデルにしている。佳山は身体障害を除けば、ごく普通の女性だが、映画は、彼女の魅力を余すところなく引き出している。ストーリーが進むにつれ、その輝きが増していく。全裸シーンにも臆することなく、文字通り体当たりの演技を見せる。
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今年8月に行われた湯布院映画祭のシンポジウムで、オーディションに応募した理由について聞かれた佳山は「なんと申しましょうか、今は一歩踏み出したということにしておいてください。本格的に芝居をしたのは初めてでしたので、共演者の皆さんにお芝居のことをたくさん教えていただきました。とにかく、もがきながらという感じでしょうか」と劇中同様の愛らしいか細い声で謙虚に語り、観客から温かい拍手が起こっていた。
脇を固めるベテラン俳優陣も素晴らしい。少し過保護ながらヒロインに愛情を注ぐ母親には神野三鈴、障害者専門のデリヘル嬢には渡辺真起子、そのデリヘリ嬢の常連客には映画「パーフェクト・レボリューション」の主人公のモデルになった熊篠慶彦、家出したユマの面倒を見る介護士役は大東駿介。友人の漫画家役は萩原みのり、インディーズ映画で活躍する芋生悠が重要な役どころで出演。石橋静河は理学療法士という小さな役だが、台本を読んで気に入り、「どんな役でもいいから出たい」と直訴したのだという。ユマを取り巻く俳優陣が、車の両輪となり、物語を力強く走らせる。
ただ、障害者が主人公の映画を敬遠するという人も少なからずいる。湯布院映画祭でも「最初は観るのをためらってしまった」という声が聞かれた。もちろん、映画は障害があるなしだけの物語ではないし、お涙頂戴の話でもない。清々しいまでに前向きに生きるヒロインの成長物語だ。2020年夏には東京パラリンピックも開催され、障害者と社会のあり方にも注目が集まっている。「37セカンズ」はそんな今の時代にふさわしいニュー・ヒロイン・ストーリー。これを観ずして、2020年の映画は語ることはできない。今からはっきり断言しておこう。