父は声楽家、母は演歌歌手 音楽一家に生まれた“謎オペラ”話題の藤澤ノリマサ「海外でも歌い続けたい」
ポップスとオペラを融合させた独自の歌唱法「ポップオペラ」で活動する歌手、藤澤ノリマサが、12月24日に東京・浜離宮朝日ホール音楽ホールでクリスマススペシャルコンサートを開催する。父は声楽家、母はカラオケ教室の講師で演歌歌手という音楽一家に生まれ、藤澤自身、大学で声楽を学んできた。2008年にデビュー。12年にアニメ主題歌『未来の僕らへ』を担当した際は、その歌唱法からアニメファンらの間で“謎オペラ”と話題となった。近年は作曲を手がけるなど幅広く活躍する藤澤に、音楽にまつわるさまざまな体験や思いを聞いた。
ポップスとオペラを融合「ポップオペラ」を実践
ポップスとオペラを融合させた独自の歌唱法「ポップオペラ」で活動する歌手、藤澤ノリマサが、12月24日に東京・浜離宮朝日ホール音楽ホールでクリスマススペシャルコンサートを開催する。父は声楽家、母はカラオケ教室の講師で演歌歌手という音楽一家に生まれ、藤澤自身、大学で声楽を学んできた。2008年にデビュー。12年にアニメ主題歌『未来の僕らへ』を担当した際は、その歌唱法からアニメファンらの間で“謎オペラ”と話題となった。近年は作曲を手がけるなど幅広く活躍する藤澤に、音楽にまつわるさまざまな体験や思いを聞いた。(取材・文=大宮高史)
――藤澤さんは、幼い頃から音楽が身近にあったそうですね。
「両親が接してきた音楽が、僕にとっての原体験です。父は僕と同じ大学の武蔵野音楽大学で声楽を学んでいて、母はカラオケ教室で教えていました。だからその頃から、クラシックとポップスの両方に縁がありました。家の中でもジャンルを問わずたくさんの音楽が流れていました」
――当時から、歌うことに興味があったのでしょうか。
「まだ、さほどの実感はありませんでした。何となくカラオケ大会に出たり、地元の札幌でコンテストを受けてみたりしましたが、音楽のすごさを実感したのは高校1年生の時です」
――どんな出来事でしたか。
「夏休みを利用してカナダに短期留学をしました。その際学校の授業でセリーヌ・ディオンの歌を皆で歌う機会がありました。ちょうど、映画『タイタニック』(1997年)が大ヒットしていた頃でしたが、それまで洋楽もセリーヌのこともほとんど知らなくて。でも(その授業をきっかけに)彼女の歌を好きになって聴いていったら、テノール歌手のアンドレア・ボチェッリと歌った『The Prayer』という曲にたどりついて衝撃を受けました」
――『The Prayer』は、『タイタニック』の直後のアニメ映画『魔法の剣 キャメロット』(1998年)の主題歌でした。
「セリーヌのポップスの歌唱と、アンドレアのイタリア語によるクラシックの発声法が違和感なく合わさっていて、衝撃的でした。音楽の力を感じましたし、『これを1人で歌えたらな』と思ったのが僕の『ポップオペラ』の原点です」
――大学を卒業し、2008年にデビューしてからはクラシックを歌う一方で、アニメ『新テニスの王子様』(通称“テニプリ”)の主題歌『未来の僕らへ』(2012年)を歌った際、ポップスな歌唱からサビに入るとオペラのベルカント唱法に切り替わることから、アニメファンらの間で“謎オペラ”と話題になりました。いわゆる独自の歌唱法「ポップオペラ」のことですが、これをきっかけに、さらに藤澤さんの名を上げました。ご自身は、どう感じていましたか。
「アニメの映像に僕の歌が流れたので、妙な壮大さと違和感がありましたね(笑)。でもアニメファンの皆さんが優しくて、いいインパクトとして受け取ってもらえました。“テニプリ”のおかげで、日本武道館でも歌うことができました」
作詞家・松井五郎氏とのコラボでの発見
――近年は作曲活動も。11月23日リリースのニューアルバム『Changing Point』は作詞家・松井五郎さんのプロデュースで、作詞を松井さん、作曲を藤澤さんが手がけています。ここ数年は松井さんとの共作が続いています。
「松井さんは作詞家としてすごい実績を持っている方ですが、僕と同じ目線で曲作りをしてくださる。それがうれしいです。松井さんの詞は、読んだだけでメロディーが浮かび上がってきて、僕の引き出しを増やしてくれるんです」
――松井さんと一緒に仕事をして、影響を受けたことは。
「接する音楽の幅が広がりました。『こんな曲を作りたいね』と知らなかった曲をたくさん教えていただいて。これまで僕はほぼボーカリストとして活動してきましたが、シンガー・ソングライターの道は松井先生が切り拓いてくれました。
それに、僕は実は緊張しがちのネガティブ思考で、コンサートでは歌いながら背中で冷や汗をかいていたりするんです。でも松井先生は、僕への作詞において、ポジティブになれるヒントをくれます」
――12月24日には東京・浜離宮朝日ホール音楽ホールで『藤澤ノリマサ クリスマススペシャルコンサート』を予定しています。
「昼公演の『il sole』と夜公演の『la luna』の2公演、歌います。僕のピアノの弾き語りで、クリスマスソングやカバー曲をお届けします。後半には森丘ヒロキさんのピアノ演奏で、これぞ「藤澤ノリマサ」と思っていただける音楽をお届けいたします。2公演でセットリストもガラッと変えるので、できればどちらも楽しんでいただきたいです」
――ではご自身にとって、クリスマスや冬へのイメージは。
「北海道育ちだからか、夏よりも秋や冬の方が好きです。ここ数年の暑さは本当にしんどくて(苦笑)。この時期は歌う機会も多いですし、アップテンポな曲より、冬が似合う、メロディーラインを聴かせるムーディーな曲の方が好みです。銀杏の香りがただよう、秋から冬の空気も吸うとホッとします」
――これまで多彩な音楽ジャンルで活動をしてきましたが、もし今、一緒に歌いたい方を挙げるなら。
「2010年にコラボした平原綾香さんと、また曲を作ってみたいです。映画『オーシャンズ』の主題歌として2人でベートーヴェンの『悲愴』のメロディーに詞をつけて歌いました。彼女も『Jupiter』で僕より先にクラシップとポップスの融合を開拓してきましたし、音域の広さも声色も彼女にしか出せない。だから年月を経て今の彼女と一緒になったらどんな曲が生まれるのか、曲作りからワクワクしてみたいです」
――最後に、これからの活動への抱負を教えてください。
「海外でも歌い続けたいですね。14年前、上海万博で日本産業館のステージで『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」をモチーフにした「VINCERO-ビンチェロ-」などを歌わせていただいた時、全く予期していなかったスタンディングオベーションをもらったことを覚えています。中国語もほとんど分からなくて『我愛?!(アイラブユー!)』しか言えなかったけど、興奮が忘れられなくて『音楽は国境を越えるんだ』と実感できた体験でした。ポップスもクラシックも世界に向けて届けていきたいです」
唯一無二の存在は、これからも音楽界に確かな足跡を刻んでいく。
□藤澤ノリマサ(ふじさわ・のりまさ) 1983年3月8日生まれ、北海道出身。武蔵野音楽大学声楽科を卒業後、2008年に「ダッタン人の踊り」でデビュー。2012年、アニメ『新テニスの王子様』(テレビ東京系)の主題歌『未来の僕らへ』が話題に。今年9月には自ら作曲した新シング『brightness』を発売。12月24日に東京・浜離宮朝日ホール音楽ホールでクリスマススペシャルコンサートを開催する。