名バイプレーヤー前原滉、全国レベルのサッカー強豪校進学も“丸刈り”イヤで入部しなかった10代

ドラマ『あなたの番です』や『スカイキャッスル』で知られる名バイプレーヤー、前原滉(32)。12月20日公開の主演映画『ありきたりな言葉じゃなくて』(渡邉崇監督)では、脚本家デビューを目前にトラブルに巻き込まれる青年を演じた。前原に、デビュー前の思いを聞いた。

子供時代はサッカー少年だった【写真:ENCOUNT編集部】
子供時代はサッカー少年だった【写真:ENCOUNT編集部】

12月20日公開の映画『ありきたりな言葉じゃなくて』で主演

 ドラマ『あなたの番です』や『スカイキャッスル』で知られる名バイプレーヤー、前原滉(32)。12月20日公開の主演映画『ありきたりな言葉じゃなくて』(渡邉崇監督)では、脚本家デビューを目前にトラブルに巻き込まれる青年を演じた。前原に、デビュー前の思いを聞いた。(取材・文=平辻哲也)

 前原は宮城県生まれの32歳。映画、ドラマに活躍し、最近では『あなたの番です』『スカイキャッスル』での名バイプレーヤーぶりが目立つ一方、『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』、『彼女来来』(ともに21)『散歩時間~その日を待ちながら~』(22)などでは主演もこなしている。

 10代の頃はサッカー少年だった。

「小中はずっとサッカーをやっていたんです。利き手も利き足も左。ポジションは左サイドバックやフォワードなど色々経験しました。小学時代の親友とは中学校が別になってしまったので、『高校でまた一緒にサッカーをしよう』と約束して、サッカーの強豪の工業高校に入ったんです。でも、実際に高校に入ったら、坊主頭になりたくなくて、入部しなかったんです。一方、親友がその後部長になって、全国大会にも進みました。僕は、彼を応援しながら、『自分も何か挑戦しておけばよかった』と強く思いました」

 その「何か」が芝居の道だった。

「高校3年のとき、母が仙台の舞台公演に連れて行ってくれたのがきっかけです。その舞台を見て『俳優という仕事をやってみたい』と思い、俳優として成功して、『あの時サッカーを辞めてよかった』と思える自分になりたいと頑張るようになりました」

 高校卒業後に上京し、小栗旬らが所属する「トライストーン・エンタテイメント」の養成所に入りし、4年間、演技を学んだ。

「当初は、東京でアルバイトをしながら劇団に入るつもりでしたが、母が反対し、『事前に良い学校を探しておきなさい』と養成所の募集広告を持ってきてくれました。養成所に入ったばかりの頃は、やりたいことをやっている自分に満足して、『学んでいるだけで楽しい』という感覚でした」

 ドラマ好きは母親譲り。福田雄一監督作品が大好きで、『33分探偵』や『勇者ヨシヒコ』シリーズがお気に入りだった。

「養成所時代はムロツヨシさん、大泉洋さん、阿部サダヲさんといったひと癖ある俳優さんに憧れていました。その後、運よく事務所に所属することが決まって、このままではダメかもと思い、気持ちを切り替えてもっと本気で取り組まなければならないと自覚するようになりました」

 一躍注目を集めたのは、日本テレビ系連続ドラマ『あなたの番です』(19年)での管理人役だが、自身の中では菅田将暉&ヤン・イクチュン共演の映画『あゝ、荒野』(17年)での経験が大きいという。映画では、大学の「自殺研究会」のカリスマ的リーダー・川崎敬三を演じた。

「それまではセリフの少ない役が多かったのですが、初めて大きな役を与えられた作品でした。クライマックスシーンでは、長いセリフを覚える必要がありましたが、岸(善幸)監督から『自由にやってください。編集でなんとかします』と言われ、信頼を感じました。その言葉に応えたいと思い、全力で演じたことが記憶に残っています。プロフェッショナルが多い現場で、その背中を拝見させていただき、自分ももっと頑張りたいと思いました」

 最新主演作『ありきたりな言葉じゃなくて』は、ドラマ脚本家志望の青年・藤田拓也が、連続ドラマ執筆のチャンスをつかみかけるも、その寸前でトラブルに巻き込まれ、窮地に陥る姿を描いた痛切な青春ストーリー。前原が一人前だと感じた瞬間はいつか。

「実際に俳優として活動を始めるまでには時間がかかったので、キャリアはそんなにあるわけではありません。それまではずっとアルバイトもしていました。まだ、一人前とは思えていませんが、そのバイトを辞めた時に『俳優でやっていくしかない』と覚悟を決めました。それが一つの大きな一歩だったと思います」と振り返る。

 好青年役からひと癖ある脇役まで幅広くこなしているが、「今後も、『こういう役といえばこの人』と固定される俳優ではなく、いろいろな役に挑戦できる俳優になりたいです。物語の大小や役柄に関係なく、さまざまな挑戦を通じて楽しみながら成長していきたいと考えています」と前原。俳優としてのゴールはまだずっと先にある。

□前原滉(まえはら・こう)1992年11月20日生まれ、宮城県出身。連続テレビ小説『まんぷく』(18/NHK)などのドラマ、各映画賞で高い評価を受けた『あゝ荒野 前編』(17)などの映画に出演。ドラマ『あなたの番です』(19/日本テレビ)でマンションの新管理人役を演じ話題に。近年のドラマでは、連続テレビ小説『らんまん』(23/NHK)、『VRおじさんの初恋』(24/NHK)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(24/読売テレビ)、『スカイキャッスル』(24/テレビ朝日)や、映画では『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23)、『沈黙の艦隊』(23)、『笑いのカイブツ』(24)、『マッチング』(24)など幅広く活躍する。

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