中村隼人、「役者の腕次第」とプレッシャー “そっくり顔”の二役早替わりに「テストみたい」
歌舞伎俳優の松本幸四郎、中村隼人、舞踊家の尾上菊之丞が16日、都内で行われた「令和七年一月歌舞伎座 松竹創業百三十周年『壽 初春大歌舞伎』」夜の部『大富豪同心(だいふごうどうしん)』の取材会に出席した。
松本幸四郎が歌舞伎座で初演出「『隼人くんが“ここにあり”』と言えるものを」
歌舞伎俳優の松本幸四郎、中村隼人、舞踊家の尾上菊之丞が16日、都内で行われた「令和七年一月歌舞伎座 松竹創業百三十周年『壽 初春大歌舞伎』」夜の部『大富豪同心(だいふごうどうしん)』の取材会に出席した。
『大富豪同心』は、幡大介氏の同名長編時代小説を原作とした新作歌舞伎。江戸随一の豪商・三国屋徳右衛門の孫で放蕩三昧の卯之吉と、将軍家政の弟・幸千代との出会いから、将軍の世継ぎ争いを描く。同作は2019年にNHK BS時代劇シリーズとしてドラマ化され、隼人が卯之吉と幸千代の二役を演じた。23年のパート3まで続き、24年の年末にはスペシャルも放送される。
新作となる歌舞伎版でも、隼人が主役の卯之吉と幸千代の二役を勤める。またドラマにも出演している幸四郎が、共演だけでなく歌舞伎座で初めて演出を手がけ、菊之丞が演出と振付を担当する。放蕩三昧の卯之吉(隼人)を見かねた徳右衛門は、金に物を言わせて同心(奉行の補佐)として働かせる。しかし卯之吉は腕っぷしも弱く刃物を見ると気絶するほど頼りない。一方、病に伏した将軍家政は弟・幸千代(隼人)を江戸へ呼び寄せていた。そして新年を迎えた八幡様で、卯之吉は自分と瓜二つの男とすれ違う、というストーリーだ。
ドラマと同じ二役で主演する隼人は、「もともと原作も読ませていただいていましたし、ドラマ化の時にこの作品に出会いました」と振り返り、「時代小説は主人公が活躍しカッコよく終わるイメージがある中で、この卯之吉は刀を見ると気絶してしまう。大富豪ということで小判をばらまくシーンや、ドラマではダンスシーンもありました」とドラマ版での卯之吉について説明。「それをどう歌舞伎に落とし込んでいくのか。原作をもとにして、二役早替わりをどうしていこうか。早替わりは普通、性別や顔の色が変わらないと面白くないと言われています。今回は顔の色はそのままになってしまうので、とにかくスピードが大事。幸四郎さんに伺って、(幸四郎)お兄さんの演出の意図に添えるようにやっていきたいです」と意気込んだ。
歌舞伎座で初の演出を手がける幸四郎は、演出家として紹介されると「はじめまして」とあいさつし、会場の笑いを誘った。「演出をさせていただくのは初めてでございまして。この作品は娯楽時代劇としてとても面白く、『こういう時代劇があったらいいな』と思っていた作品。隼人くんがそれに出会ったということが、とても素敵なこと。歌舞伎化するにあたって、『隼人くんが“ここにあり”』と言えるものを作れるように努めたい。彼のキャラクターを引き出せるように作っていきたいと思います」と語った。
早替わりについて聞かれると、「『顔が似た人が、顔が似た人に早替わりする』というのは、おそらく歌舞伎史上ないと思います。別人になるから驚くわけで。顔がそっくりそのままの二役を演じるというのはどうするか。スピードが大事になってくる」と難しさを語った。また「今、予定では11回早替わりをする」と明かすと、隼人は思わず「11回? 多いですね」と驚いた。
演出と振付を担当する菊之丞は、「ドラマを見た時に『隼人さん、すごくいいな』と思ったんです」と語り、「その感覚をお客様にどうお伝えできるか。早替わりが、『顔も衣装も同じなのに違う人物を表現する』という、もう、“役者の腕次第”ですから。それをしっかり見届けたいな」と期待した。隼人は「なんかもう、テストみたいな感じですね(笑)」とプレッシャーを吐露し、会場を笑わせた。