日本の象牙市場閉鎖へ滝川クリステルやローラの役割に期待する声が高まる

米国ワシントンDCに本拠を置くNGO、環境調査エージェンシー(EIA)が25日、都内で会見し、日本の象牙国内市場閉鎖を強く求めた。

「象を守ろう」ローラは密猟反対を訴える【写真:Getty Images】
「象を守ろう」ローラは密猟反対を訴える【写真:Getty Images】

環境調査エージェンシーが会見 象牙市場急拡大の日本に警鐘

 米国ワシントンDCに本拠を置くNGO、環境調査エージェンシー(EIA)が25日、都内で会見し、日本の象牙国内市場閉鎖を強く求めた。

 ここ数年、日本と米国を行き来し、日本の象牙市場の実態について調査を行ってきたアラン・ソーントン会長は「来たる五輪が開催される際、起きる出来事を危惧している。1000万人とも言われる人々が米国、欧州、中国など世界中から訪れる。この訪日客に対して象牙の製品を売ろうとする者もいるでしょう。それによって日本から海外への違法な象牙輸出が多く起きることを非常に脅威に思っています。五輪が開催される来年の7月までに象牙市場を閉鎖することの必要性を強く感じている」と話した。

 背景には急増する国内の象牙取扱業者の存在がある。EIAは2018年当初と比較した19年7月現在のデータを公開。それによると、個人を含めた象牙製品の製造業者は319業者から433業者に、卸売業者が584業者から763業者に、小売業者は8219業者から1万4685業者に、それぞれ増えた。登録業者全体では9122業者から1万6586業者と1・8倍に拡大した。インターネットオークションサイトなどが象牙製品の扱いを次々と禁じる中で、逆光する動きを見せている。

 日本はかつて世界最大の象牙輸入国だった。その名残りが文化として繁栄し、ハンコや楽器、工芸品などに象牙が使われてきた。

 しかし、主にアフリカ大陸で象牙目当ての密猟が横行し、アフリカゾウの数が激減。国際社会が象牙の取引反対の方針を打ち出し、各国も追従した。国内市場に関しても、16年に米国とフランス、17年に中国と香港、19年にオランダ、20年1月には台湾も閉鎖することが決定。先進国では日本だけが取り残されている状況だ。

「国内象牙市場閉鎖決議が16年に採択されて以降、日本はEUを横目に見ながら象牙市場の維持を主張してきた。『日本の市場は違法取引に関与していない』と主張してきた。しかし、EIAの調査では、日本には広く違法取引が蔓延しており、日本から中国、香港、台湾に密輸出されている事実も突き止めている」

 EIAは証拠に基づいて活動するNGOで、秘密調査を得意としている。1987年にはアフリカ、アジアにおける象牙の闇流通ルートを暴き、主に中国企業がケニアに拠点を置いて違法取引をしていたことを突き止めた。89年にはタンザニア政府を動かし、のちの象牙の国際取引禁止につなげた実績がある。

 実際、日本から密輸出された象牙が中国で摘発される例は多い。ソーントン会長は、「何よりもショックを受けることは日本からの象牙の輸出に関しては、実質的に何の管理もされていないに等しい現実です」と嘆き、日本の税関には象牙の密輸出を監視する専門的な検査官が1人もいないことを指摘した。

都内で会見を行った環境調査エージェンシー(EIA)のソーントン会長(左)とグラビエル主幹(右)
都内で会見を行った環境調査エージェンシー(EIA)のソーントン会長(左)とグラビエル主幹(右)

「なぜ日本は今もアフリカからの象牙の輸入を求めるのでしょうか。日本には現在かなりの量の象牙の在庫があります。にもかかわらず、輸入する大きな理由はアフリカから新たに輸入すれば安く手に入るからです。非常に納得がいかないと思うのは、日本政府は象牙を買うのはアフリカの貧困を解決するためである、とよく言っています。しかし、過去の2回の限定的な象牙取引で明らかになったことは、日本の業者の談合です。南アフリカ諸国で行われるオークションでは象牙の山をいくつか作り、山ごとに売っている。しかし、これに参加する日本の業者は裏で談合して価格を低くする操作を行っている。その結果、2回の取引の金額はかなり低いものになっている」

 象牙目当てにサバンナで流された大量の血は、アフリカ各国の観光業にもダメージを与えている。ソーントン会長は「アフリカゾウ連合(AEC)を形成する32か国は、ほぼすべてがアフリカゾウの生息区となっています。そのAECが日本に国内市場の閉鎖を求めました。しかし、日本ははっきりと拒絶している。日本はゾウの密猟についてはもちろん、象牙取引によって生きたゾウを見てもらう、観光業への悪影響についても配慮をしていない」と語気を強め、日本の政府の主張とはかけ離れた現実があることを明らかにした。

 8月にはワシントン条約締結国会議がジュネーブで開かれ、日本に対してより一層の監視の目が注がれることになった。「ワシントン条約締約国会議ではこれまで以上にはっきりと日本の国内象牙市場維持の方針に対して、各国の反対姿勢がますます強まっていることが表れた。日本はこの問題について、ますます孤立を深めつつあります」(ダニエル・グラビエル主幹)

 ゆゆしき状況の中、一筋の光となっているのが、日本の著名人の動きだ。小泉進次郎環境相(38)と結婚したフリーアナウンサーでタレントの滝川クリステル(42)やモデルのローラ(29)らが象牙問題に関心を持ち、反対活動を展開している。ソーントン会長は「非常に前進的な傾向。日本の著名人の人たちがアフリカゾウを保護することに強い関心を持つことは喜ばしいことです。著名人の人たちは多くのサポーターを持っていて、発信力も大きい。日本の社会に大きな影響力を持っている。いろいろな立場の人が関わることで、アフリカでの密猟を防ぐことができる」とこの流れを歓迎し、継続的な役割を期待した。

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