和田正人、箱根駅伝出場2回・実業団から俳優転身の過去 朝ドラでブレイクも「今もくすぶっています」
映画『くすぶりの狂騒曲』(12月13日公開、立川晋輔監督)で、売れないお笑いコンビ・タモンズの芸人、ツッコミ担当、大波康平役を演じたのが、俳優の和田正人(45)だ。キャリア20年のベテランが、ターニングポイント、箱根駅伝のエースとして活躍した大学時代を振り返った。
映画『くすぶりの狂騒曲』で芸人役に挑戦
映画『くすぶりの狂騒曲』(12月13日公開、立川晋輔監督)で、売れないお笑いコンビ・タモンズの芸人、ツッコミ担当、大波康平役を演じたのが、俳優の和田正人(45)だ。キャリア20年のベテランが、ターニングポイント、箱根駅伝のエースとして活躍した大学時代を振り返った。(取材・文=平辻哲也)
『くすぶりの狂騒曲』では、無名時代のお笑いコンビ・タモンズのツッコミ担当、大波康平を演じた和田。「自分の人生と重なる部分もあって、自然と感情移入できました。幸せになれそうでなれないような役柄が、自分の人生とリンクしている感じもします」と話す。
和田は箱根駅伝出場経験を持つ変わり種。2004年7月、『第1回D-BOYSオーディション』で特別賞を受賞。同年10月、D-BOYSに加入し、05年に舞台『ミュージカル・テニスの王子様』で本格的に俳優デビューし、そのキャリアは20年になる。
自身の「くすぶり時代は?」と水を向けると、「今もです」と笑って語る。「他の俳優さんと比べたり、同時期に始めた人や後輩がどんどん上に行くのを見て、まだまだ自分は足りないと思うことがあります。ただ、振り返ると、一歩一歩しっかりと階段を登ってきた感覚もあります。そういう視点で『まだまだだ』と思えるのも、逆に幸せなことかもしれませんね」と笑う。
ターニングポイントになったのは、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』(13)。ヒロインめ以子(杏)に一途な思いを寄せる幼なじみ、源太役で知名度が全国区になった。
「『ごちそうさん』に至るまでの積み重ねも大きかったです。あの時期、オーディションを受けてしっかり役をつかみ取れていて。(戦隊もののパロディーだった主演作)『非公認戦隊アキバレンジャー』(12年)では、大人向けに本気で作られた作品ということで、思い切り楽しみながら自分らしく演じられました。そういった経験が評価され、パート2も作られて、それが『ごちそうさん』につながったと思います」
元箱根駅伝選手というキャリアも出色だ。00年、9区(9位、1:13:16)、02年9区(5位、1:10:52)という成績を残している。箱根駅伝関連の番組に出演したり、Xでも独自の視点で発信を続けている。
「大学時代はエースとして活躍していましたが、怪我が多かったんです。僕の恩師は西弘美さん。今は明治大学陸上部のスーパーバイザーをされています。箱根駅伝の予選会(10月19日)では会場に行って、あいさつもさせていただきました」
忘れられないのは大学3年生の時だという。
「3区を走る予定だったのですが、その前日に体調を崩してしまい、最後の決断を監督に託したんです。『エースが走ってくれないと困る』と言ってくれたら、覚悟を決めよう、と。でも、実際は『よし、じゃあ交代しよう』って。言われた瞬間、膝から崩れ落ちて大号泣しました。親は毎年、見に来てくれましたし、期待もしてくれていたので、申し訳ないと思って……。この出来事は今でもフラッシュバックするほど強く心に残っています。そんな悔しい思い出が大なり小なりいっぱいあるんですよ」
4年時も、怪我に悩みながら、2年と同じ9区を任された。前回以上の好成績を残すことができ、卒業後はNECに就職し、陸上部に所属した。
「1年目の大半が怪我との闘いで、まともに練習できたのは、ほんのわずかでした。それでも、ハーフマラソンで結果を出すことができました。それで、『来年こそ』と思った矢先にまた怪我をしてしまい、最終的にはチームが廃部となってしまいました。俳優になっていなかったら、地元(高知)に戻って教職に就いていたかもしれません」
近年はNHK連続テレビ小説『虎に翼』(24)、映画『Winny』(23)、『オレンジ・ランプ』(23)、『シサム』(24)などに出演。中堅と言われるポジションにいるが、今が一番くすぶっていると感じているのだという。
「若い頃は“自分らしさ”で突き進むことができましたが、キャリアを重ねるにつれ、それだけでは通用しないと感じる場面が増えました。全く自分とは違う役柄を演じる中で、どうやって自分に引き寄せるか、どう向き合うかを悩むことが増えています。特に40代半ばという年齢は、上の世代と下の世代に挟まれている“狭間の世代”だと思っています。この立ち位置で何ができるのか、模索している最中です」
ただ、この「くすぶっている」状態は嫌いではない、とも語る。「最近は、俳優として、さまざまな役を通じて自分自身と向き合うことができています。人生って、くすぶっている時間が一番味があるのではと思えるようにもなりました」。駅伝出身の和田は、さまざまな経験を糧に、今後も俳優人生を走り続けるのだろう。
□和田正人(わだ・まさと)1979年8月25日生まれ、高知県出身。2005年に舞台『ミュージカル・テニスの王子様』で本格的に俳優デビュー。2007年に『死化粧師 エンバーマー 間宮心十郎』でテレビドラマ初主演を務め、以降TBS系ドラマ『陸王」(17)、『笑うマトリョーシカ』(24)、フジテレビ系ドラマ『教場』(20)、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』(13)、『虎に翼』(24)、映画『Winny』(23)、『オレンジ・ランプ』(23)、『シサム』(24)などに出演。
ヘアメイク/小林純子
スタイリスト/田村和之
衣装協力:カーディガン7700円、カットソー6600円
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