『週刊少年マガジン』が少年誌の限界に挑戦? 物議を醸した“大人向け”袋とじ企画
2010年代後半の『週刊少年マガジン』(講談社)で、連載中の漫画を舞台にした“大人向け”な袋とじ企画が実施された。通常の連載作品よりも過激な内容が描かれていたこともあり、当時の読者たちは親の目を盗んで読んでいた人も多かっただろう。本記事では「少年誌に掲載しても大丈夫なのか」と物議を醸したマガジンの袋とじ企画に注目しよう。
少年誌の限界に挑んだ袋とじ企画
2010年代後半の『週刊少年マガジン』(講談社)で、連載中の漫画を舞台にした“大人向け”な袋とじ企画が実施された。通常の連載作品よりも過激な内容が描かれていたこともあり、当時の読者たちは親の目を盗んで読んでいた人も多かっただろう。本記事では「少年誌に掲載しても大丈夫なのか」と物議を醸したマガジンの袋とじ企画に注目しよう。
14年から20年まで連載された『ドメスティックな彼女』(作:流石景)は、16年51号、17年18号、19年6号の計3回、袋とじ企画がおこなわれている。本作は主人公・藤井夏生と、彼が通う高校の教師・橘陽菜、そして彼女の妹・橘瑠衣の三角関係を描いた作品。夏生は陽菜に思いを寄せながら、合コンで出会った瑠衣と成り行きで関係を持ってしまう。さらに夏生の父親と、陽菜と瑠衣の母親が偶然にも再婚することになり、夏生たちは同じ家で新たな生活を送るようになる。
本作は夏生と瑠衣の関係を持った様子が描かれる展開から始まったが、袋とじ企画ではより過激な内容が描かれている。16年51号では夏生と瑠衣の“2回目”が描かれていて、この時の連載中の展開では2人が相思相愛になっていることもあり、甘い言葉をささやきながら求めあう姿が描かれている。一方、17年18号は打って変わって、夏生と陽菜のシーンだ。特に刺激的なのは教師である陽菜に高校時代の制服を着させて、同級生気分を味わっているところだろう。
しかし、夏生との関係が学校にバレてしまった陽菜は、彼を守るために他校へ異動し彼に会うことなく去って行く。それを知った瑠衣は夏生へのアプローチを開始する。そんな瑠衣に惹かれていった夏生は彼女と交際するようになり、19年6号の袋とじではそんな夏生と瑠衣が愛し合う姿が描かれている。
袋とじを読んだ読者からは「少年誌に掲載って大丈夫か?」「ちょっと少年にはまだ早い内容だったのではないか?」など、マガジンの思い切った企画内容を心配する声が続出した。
14年から18年まで連載された『風夏』(作:瀬尾公治)も過激な袋とじ企画が実施された作品だ。主人公は絶えずスマホを手放せない内気な高校生・榛名優(はるな・ゆう)。彼はマイペースに生きるクラスメイト・秋月風夏たちとバンドを結成し音楽に目覚めていく。その後、事故により風夏が帰らぬ人になるという不幸が生じるが、仲間の助けもあって優は立ち直っていった。そして風夏とよく似た雰囲気で同名の女性・碧井風夏に出会い、優は新たな一歩を踏み出すのだ。
そんな『風夏』は17年41号で袋とじ企画がおこなわれた。このエピソードは31号で実施された「風夏 袋とじ総選挙」で、読者に登場してほしいヒロインと描いて欲しいシチュエーションを募集した結果に基づき、碧井風夏の部屋で彼女と優との様子が描かれた。第2弾の袋とじは18年17号と18号の2週連続で掲載されており、袋とじの中で、本編ではすでに亡くなった秋月風夏と優とが愛し合っている姿が描かれている。
近年、コンプライアンスに対する意識が高まっている中で、今回紹介した袋とじ企画は出版社の大きな挑戦だったといえるのではないだろうか。