「進平は蘇ります!」斎藤工が“進平ロス”を超えて届けたい思い 『海に眠るダイヤモンド』の裏側とは

TBSで放送中の『海に眠るダイヤモンド』。本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語。主演・神木隆之介が演じるのは、端島の炭鉱員の家で生まれ育った明るくまっすぐな鉄平。戦後復興期から高度経済成長期の“何もないけれど夢があり活力に満ちあふれた時代”にあった家族の絆や人間模様、青春と愛の物語を紡いでいく、時代を超えたヒューマンラブエンターテインメント。

『海に眠るダイヤモンド』第7話【写真:(C)TBSスパークル/TBS】
『海に眠るダイヤモンド』第7話【写真:(C)TBSスパークル/TBS】

まさかの展開予想的中!?「ちょっと悔しい気持ちに…」

 TBSで放送中の『海に眠るダイヤモンド』。本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語。主演・神木隆之介が演じるのは、端島の炭鉱員の家で生まれ育った明るくまっすぐな鉄平。戦後復興期から高度経済成長期の“何もないけれど夢があり活力に満ちあふれた時代”にあった家族の絆や人間模様、青春と愛の物語を紡いでいく、時代を超えたヒューマンラブエンターテインメント。

 ここでは鉄平の兄・進平を演じる斎藤工にインタビュー。リナ(池田エライザ)と結ばれ、息子・誠が生まれた矢先に炭鉱の事故で命を落としてしまった進平。衝撃が隠せない展開となったが、果たしてその心境は。

――第7話でまさかの展開を迎え、SNSは“進平ロス”の声が溢れると予想されますね(放送前取材)。

「意外とロスには起きないと思っていますが、どうなっているでしょうね(笑)。そういえば、第1話の放送後に『進平あたりが7話あたりで死にそう』と、話数まで予想していた預言者がいたんです。あまりにもピンポイントで当てられてちょっと悔しい気持ちになりましたが、それだけ野木亜紀子さんの脚本を熟知している方なのかもしれませんね!」

――危険と隣り合わせの炭鉱員を演じるにあたってどのような役作りをしましたか。

「撮影現場に鉱山炭鉱の歴史についてのDVDがあったので、何度か見させていただきました。素晴らしい内容で、他の炭鉱員キャストの皆さんにも薦めたほど。炭鉱が活発だった時代の情勢はもちろん、死と隣り合わせだった現実が描かれていました。別の海外のドキュメンタリーでも、周りに入る炭鉱員は遺言書を残していたり、書類にサインしていたりする様子が描かれていて…」

――それだけ覚悟が必要な仕事だったのですね。

「進平が炭鉱内で亡くなってしまったのは偶然ではありますが、そうした方たちがいらっしゃったことを、炭鉱員の役として鎮魂という思いもこめて演じられたらいいなと思いました。いち視聴者としては、これまで出征した長男や福岡に疎開した姉妹など、数々を失ってきた荒木家がさらに進平を失ってしまうことを考えると、やはり苦しいですね。特に母であるハルさん(中嶋朋子)の心情を考えると、言葉にならない思いでいっぱいです」

――子どもが生まれ、幸せ絶頂のなかでリナと死別することになってしまいましたが、撮影で印象に残っていることは。

「使われているかわからないのですが、リナとの最後の別れになってしまうシーンで、進平としてどうしても『リナ』ではなく、『荒木リナ』と呼びたいと思ったんです。塚原あゆ子監督に相談したら『それいいかも』と言ってくださったので、本番だけやってみました。『荒木』という名字が、進平からリナに渡せる最後のものだったのかもしれないなと」

――再び愛する人を失ってしまったリナの悲しさも計り知れません。

「そうですね…。でも、進平の死がただ悔やまれるという以上に、進平が残していくものに意味がある。誠の誕生で命のつながりの一端を担ったということが、進平の最大の役目だったのかもしれません。“もっとリナと生きていきたかった”、“誠の成長を見守りたかった”という思いはあるけれど、荒木家をはじめ、これだけリナと誠を見守ってくれる人たちがいることは、進平を演じた人間としてはネガティブなことばかりではないなとも感じられています」

――展開を踏まえて、野木さんからはどんなお話がありましたか。

「野木さんに初めてお会いしたときに、開口一番『死んでもらいます』と言われました(笑)。釈由美子さんの『お逝きなさい』(ドラマ『スカイハイ』の主人公の決め台詞)みたいな口調で。でも、物語の味付けとして死が描かれているのではなく、戦争で亡くなってしまった方々や、原爆の恐ろしさと向き合っているところに、野木脚本の真髄があるのではないかと思います」

塚原監督の手紙がもたらす温かさ──監督業でも活躍する斎藤工が思う理想的なチームワーク

――ご自身も監督として活躍をされていらっしゃいますが、同じ作り手側から見た本作の制作チームは。

「塚原監督はオンエアの前に俳優部に手紙をくれるのですが、真摯な向き合い方に背筋が伸びます。本当に監督の鑑です。この撮影現場が雛形になるのではと思うほど。どんな現場でも、視聴率やスケジュールに追われることはありますが、長くやっていると集中力が散漫になってしまうこともあります。でも、本作はすでに半年近く撮影をしていますが、いい意味での緊張感とエネルギーの循環をキープしていて素晴らしい環境です。作り手としても、演じる側としても、どの角度から見ても理想的なチームですね」

――塚原監督からの手紙の中で、印象に残っている言葉はありますか。

「第4話で、進平がリナに瓜を渡し、来年も端島にいることを暗に約束させますが、『そこで振り返ったときの笑った顔が今回の進平のポイントです』と手紙に書いてあって。それに加えて『台本に書かれていない部分を作ってくれてありがとうございます』と、感謝の言葉が綴られていました。いつも感謝のお手紙をくれるのですが、こちらこそですよと思いながら、そのうれしさはやはり撮影でのエネルギーになるんです。だからといって役者のモチベーションを上げるために書いているわけではなく、率直な思いであることもわかる。だからこそ、皆さんもモチベーションが下がることがないんだろうなと思います」

――では、最後に最終回までの見どころをお願いいたします。

「終盤に向けて、進平は蘇ります!(笑)アクションゾンビ映画になる…というのは冗談で、これまでとはまた一味違う展開に。進平は亡くなってしまったけれど、彼の存在はずっとあって、それがとても丁寧に描かれています。進平の撮影は他の皆さんよりも早く終わってしまいますが、こんなに寂しさがないのは初めてかも。いつもならもっと作品から離れて客観的に見るようになるのですが、今回はまだ同じ船に魂が乗っている感覚です。生き残った人々に託した思いを見守りつつ、無事に最終話までたどり着くことを同じ船の中から応援していきたいです」

 斎藤工が進平として遺した存在感は、亡くなった後も家族や仲間の中で強く息づく。彼の死がどのように物語を揺るがし、そして再び希望を紡ぎ出していくのか。その過程で描かれる愛と絆の物語が視聴者をさらなる感動へと導いてくれるだろう。

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