日本から富裕層は「いよいよいなくなる」 慶大卒・元秘書の泉あすかさん、金融所得課税の強化に苦言

投資で一生暮らせるほどの富を築いた“職業・お金持ち”だが、ビジネスホテルにもにこにこ宿泊する――。慶応大生だった20歳、10万円の投資を皮切りに運用を成功させ、25歳で法律事務所秘書からアーリーリタイア。30代半ばにして資産総額は「いっぱい」とほほ笑む投資家の泉あすかさんは、1年のうち10か月をホテルで暮らしている。趣味の美食巡りや国内外を縦横無尽に行き来するという豪遊生活。一方で、金融所得課税の強化がにわかに取り沙汰され、富裕層の間でも話題で持ち切りだという。資産家の視点から見た”ぶっちゃけ”の本音を聞いてみた。

最近は2000万円のダイヤのネックレスを購入したという泉あすかさん【写真:本人提供】
最近は2000万円のダイヤのネックレスを購入したという泉あすかさん【写真:本人提供】

大胆提言 「金融所得1億円までは課税せず、それ以上のラインから課税を強めていく考え方もある」

 投資で一生暮らせるほどの富を築いた“職業・お金持ち”だが、ビジネスホテルにもにこにこ宿泊する――。慶応大生だった20歳、10万円の投資を皮切りに運用を成功させ、25歳で法律事務所秘書からアーリーリタイア。30代半ばにして資産総額は「いっぱい」とほほ笑む投資家の泉あすかさんは、1年のうち10か月をホテルで暮らしている。趣味の美食巡りや国内外を縦横無尽に行き来するという豪遊生活。一方で、金融所得課税の強化がにわかに取り沙汰され、富裕層の間でも話題で持ち切りだという。資産家の視点から見た”ぶっちゃけ”の本音を聞いてみた。(取材・文=吉原知也)

「最近のお買い物ですか? 金額の大きいものだと、2週間前に買った2000万円ちょっとのダイヤのネックレスですね。あとは、この間、夫と一緒にランボルギーニのディーラーに行ったのですが、新車が2~3年待ちと言われてしまって。ちょうど展示で新古車があったので、新車が来るまでの間にも乗りたいなぁと、両方同時に買っちゃいました」。超高級車は2台で計1億円。豪快なエピソードには事欠かない。

 美食巡りは思い立ったら旅行の計画を練っていく。数多くの一流店に通い詰め、世界中に常連のお店があるそうだ。直近では、主宰する投資コミュニティーの企画で香港・マカオへ。その後、福岡と兵庫に立ち寄り、「ごはんと空気がおいしい」を理由に拠点の1つとしている北海道に一度戻り、その後は再びパスポートを片手に、友人とバルセロナで現地合流。「地図を見ていたら日本への帰りにモルディブにも寄れることに気付いて、じゃあ寄ってこようかなと思って……」。旅行プランは“規格外”だ。

 結婚4年目の夫は、脳科学や心理学にも精通する経営者。自身も世界中の投資家や富裕層、経営者と親交が深い。

 日本居住用にタワマンを住宅ローンで購入したものの、ほとんどの期間を過ごしているのは自宅外。「この間、夫から『人の人生の10回分ぐらい旅行に行っているよね?』と言われました(笑)。春から天使のようなトイプードルを飼い始めたので、今は日本拠点を4つに増やし、なるべく陸路で一緒に移動できるように環境を整えています」。宿泊代と移動費は、昨年だけでも3000万円以上になるという。

 世界的な高級ホテルの上級会員で、大半の宿泊はラグジュアリーホテル。一方、突発で予定が入ることも多く、時にはアパホテルやドーミーインを選ぶこともあると言うから驚きだ。「きょうはとことん飲み明かすぞ! という日であればお部屋はただ寝るだけの場所になるので、利便性の高い駅近のビジネスホテルがお気に入りです。朝が苦手なので、数千円でレイトチェックアウトがかなうのもありがたいですね。ホテルによって追加料金が違うので、一番お得なところを選んで」。状況に合わせて順応することが、快適なホテルライフの実現につながっているようだ。

「ゴロゴロしている間に、お金にザクザク稼いでもらう。元来なまけもの属性なんですよね、私って」。億万長者の優雅な生き方。これが、FIRE(経済的自立・早期退職)なのか。

投資に成功しても「仕事をしている自分が好きなのであれば、続けたっていい」

 富裕層が最近注目しているのは、税制度の見直しを求める一連の議論だという。その中でも大きく関わるのが、金融所得課税の強化だ。年間所得が1億円を超えると税負担率が低くなる「1億円の壁」が問題視され、「富裕層優遇」との指摘や批判が噴出している。

 当事者の泉さんはどう受け止めているのだろうか。

「もし、この先日本で金融所得への課税が強まっていくとしたら、富裕層はいよいよいなくなるかもしれませんね。そちらがそのつもりならこちらにも考えがあります、というだけのことですが。私の周りも税金や教育を理由に続々と海外に移っていますし、その流れに拍車がかかることはもはや必至です」

 泉さんは2018年から数年ほど、シンガポールへの単身移住を経験した。そこでまざまざと感じたのは、お金の残りやすさと政府の性質の違いだ。

「シンガポールは個人が投資で得た売却益については非課税なので、投資家として住むにはもってこいでした。政府の対応で印象的だったのは、新型コロナウイルス対策のスピード感です。税金についてもシンガポール政府はどこにどう使われているのかをオープンにしてくれているので、みんな納得して気持ちよく払っていました。日本はどうでしょう。よく友人たちとも話すのですが、日本は使途不明金が多過ぎるように感じています。支払う税金の使い道が見えないまま気持ちよく払える人は、そう多くはないと思うのですが」

 さらに、「昨今『老後までに資産1億円』が1つの目安になっていますよね。今後もし、累進課税の新しい制度を作るにしても、例えば金融所得1億円までは課税せず、それ以上のラインから課税を強めていく考え方もあるのではないでしょうか」との持論を示す。

 そして、「今、海外移住組の知り合いや友人のうち大半が『老後はやっぱり清潔で医療が充実していて、食事もホスピタリティーも素晴らしい日本に戻りたい』と言っています。税金の問題がなければもっと早く戻ってくる人もいるはずですから、税収を上げたいのであれば、日本政府にはこういったことも考えていただきたいですね」。それまでの柔らかな口調から一転、真剣な目つきで語気を強めた。

 時間もお金もたっぷりとある悠々自適の生活を送りながら、「働き続ける」という選択肢も決して否定はしない。「仕事をしている自分が好きなのであれば、続けたっていいと思います。実際に、投資コミュニティーのメンバーには、投資で本業以上に稼いでいながら会社員として働き続けている方も少なくありません。資産という強力な後ろ盾があるおかげで無理をしてまで働く必要がなくなり、仕事にものびのびと取り組めているようです。投資はQOL(生活の質)を高める手段ともなりますので、それぞれの理想のライフスタイルに合わせて、より幸せで豊かな人生を送るために活用していただきたいですね」と優しく笑う。

「本当に、お金持ちって誰でもなれるんです。本気で望み、行動すれば、誰にでも必ず道は開けると確信しています」。力強いまなざしを送った。

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