柄本佑、『光る君へ』での剃髪「わがままを通してもらった」 撮影は10分弱「不思議な体験でした」
俳優・柄本佑が、完全受注生産フォトブック『柄本佑1stフォトブック「1(いち)」』(講談社)を出版し、今月2日から受注を開始した。柄本たっての希望で森山大道氏、荒木経惟氏に依頼した撮影は「とても刺激的だった」という。ENCOUNTの取材に応じた柄本は同書への思いを語り、藤原道長役として出演したNHK大河ドラマ『光る君へ』(日曜午後8時)の収録を振り返った。
構想から2年『柄本佑1stフォトブック「1(いち)」』出版
俳優・柄本佑が、完全受注生産フォトブック『柄本佑1stフォトブック「1(いち)」』(講談社)を出版し、今月2日から受注を開始した。柄本たっての希望で森山大道氏、荒木経惟氏に依頼した撮影は「とても刺激的だった」という。ENCOUNTの取材に応じた柄本は同書への思いを語り、藤原道長役として出演したNHK大河ドラマ『光る君へ』(日曜午後8時)の収録を振り返った。(取材・文=ふくだりょうこ)
柄本佑にとって初の著書となるフォトブック。「綴(と)じない出版物」に挑戦し、高品質の厚紙に印刷した写真をボックスに収納するという仕様となっている。制作の経緯は約2年前にさかのぼる。
「『誰か撮ってもらいたいカメラマンさんはいらっしゃいますか』と聞かれた時に『森山さんと荒木さんに撮ってもらえたらいいですね』とわりと無責任に言わせてもらったら、本当に実現して。おふたかたの写真集も持っていたし、大好きなんです。『実現していただいたからにはしっかり良いものにしたい』ということで、この“綴じないフォトブック”という形に帰結しました」
ともに収録される“私的マガジン”には柄本の半生が描かれているが、写真にも柄本の日常や歴史がにじむものとなっている。
「中高生のときに、歌舞伎町にある噴水はコマ劇場の前にあったものなんですけど、その周りが映画館だらけだったんです。で、時間の合う映画を片っ端から見ていました。青春を過ごした場所だったので、ぜひ、大道さんに新宿で撮ってもらいたかったんです」
衣装は今と過去の自分のイメージで2種類を自身で用意した。
「うちの母からもらったコートを使ったりしています。表紙の写真はTシャツにジーパンで下駄を履いているんですけど、それが当時、新宿に行っていたころのスタイル。ジーパンも実際に中学のときに履いていたものなんです」
中学生の頃に履いていたものが、今も履ける。当時から体形が変わっていないことに正直、驚かされた。
「意識してるわけじゃないんですけど、ある人に『体形を変えないのは俳優の仕事です』と言われたことがあって。そういえば、(義父の)奥田瑛二さんも『俺は体形が変わっていない』って言ってましたね」
フォトブックの撮影から1年以上がたつが、その時のことはよく覚えているという。
「荒木さんには、19歳の時に撮っていただいたことがあるんです。それから『また撮っていただきたい』という思いもありました」
実際に撮影を行ってみて、荒木氏と森山氏は「荒木さんが人を撮っているとしたら、大道さんは街を撮っている印象だった」と振り返る。
「荒木さんと僕との間に生まれた関係を撮っていくという感じでした。大道さんは『対僕』というよりは街を写していく。街を撮っている時に、そのフレームの中に入り込むような印象です」
しかし、撮られている中で、両氏に共通していることを肌で感じていた。
「あるシークエンスが決まったとしたら、何枚か撮っていく中で作りの始まりと終わりはピタッと決まっているのを受け取れました。そこは同じだったように感じましたね」
『光る君へ』後は「自主映画で長編を」
撮影時にはあった長い髪。11月24日放送の『光る君へ』第45話では、道長の出家を象徴する剃髪シーンがオンエアされたが、実際に髪を剃り落としていた。
「道長さんは実際にご出家されているので、『出家の場面が出てくるなら剃髪させていただきたい』ということは、早めに言っておきました。それでクランクインしてすぐ、去年8月ぐらいに。前後の撮り順その周りのスケジュールもあったのですが、わがままを通してもらいました」
剃髪のシーンは長く、道長の抱えていた苦悩、葛藤などが伝わってくる印象的なものになった。柄本自身は「不思議な体験でしたね」と振り返った。
「剃り始めはなんてこともなかったんですよ。ショリショリ、という剃る音が聞こるだけで。10分弱ぐらい回していたかな。どういう状況かも見えてなかったんですけど、手の上に髪が落ちてきたんです。そこからすごく不思議な感じでした。『長くやってきて、こういうシーンを迎えられて良かったな』ということもありますし、言葉にできない何かがありました」
そして、1年に渡る物語はクライマックスを迎えるが、「オンエアが始まったら、本当にあっという間でした」と目を細めた。
「準備期間とかがとにかく長かったですね。人の目に触れるまでは非常に狭い世界で撮っているから『これがどういう受け止められ方をするのか』というある種の不安を抱えている。オンエアが始まると、見た人の意見が耳に入ってきて、『じゃあ、こうしようかな、ああしようかな』と考えたりして」
と話した後、笑みを浮かべて言った。
「だから、欲を言えば、半月ずつ撮影を前倒しにしていったら、『将来的には撮り切りで大河ドラマがオンエアできるな』って。僕は全く気にしていないけど、それだったら視聴率に一喜一憂することもありませんし」
このアイデアを番組関係者に話したところ、「無理だ」と返されたという。だが、「撮り切り」でのオンエアなら出演者の心持ちも変わりそうだ。そんな思いも巡らせた同作が、今月15日にエンディングを迎える。次に柄本が向かう先はどこだろうか。
「大河を撮っている期間でも自分が監督した自主映画を公開できたんですが、『この大河をとにかく1年半務めあげてから』と思っていました。近年中には、その自主映画に関わってくれたスタッフさんやキャストの方々のためにも、『何か長編を撮らなきゃな』と思っています」
柔らかな空気をまとう柄本が話すと、場がふわりと和む。しかし、それぞれの作品で見せる顔はどれをとっても同じものはなく、時には鋭く、時に緩い。そんな柄本がフォトブックではどのような顔を見せてくれているのか、興味深い。
□柄本佑(えもと・たすく) 1986年12月16日、東京都出身。2003年公開の映画『美しい夏キリシマ』で主演デビュー。同作で第77回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第13回日本映画批評家大賞新人賞を受賞。数多くの映画、ドラマに出演するほか、自主制作映画も手掛ける。映画『きみの鳥はうたえる』などで第92回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞など受賞。近年の主な出演作は、日本テレビ系ドラマ「初恋の悪魔」『知らなくていいコト』、フジテレビ系連続ドラマ『ドクターホワイト』、NHK土曜ドラマ「空白を満たしなさい」、映画『ハケンアニメ!』『シン・仮面ライダー』『春画先生』『花腐し』など。待機作には、来年2月7日公開のアニメ作品『野生の島のロズ』(声の出演)がある。妻は俳優・安藤サクラ、俳優一家で生まれ育ち、父は柄本明、母は故角替和枝さん、弟は柄本時生。血液型B。
『柄本佑1st フォトブック「1(いち)」』(完全受注生産)/講談社
撮影:森山大道、荒木経惟
・全冊、柄本佑の直筆生サイン&シリアルナンバー入り
・撮影&プライベート秘話「私的マガジン」62P同梱
・2025年2月末頃お届け予定
・発売を記念し、初のファン感謝会の開催も決定。フォトブック発売前イベントとして、柄本佑本人との2ショット撮影や、購入者の方のお名前書き&サイン入り写真のお渡しなどを予定している。詳細情報は公式サイト(https://with.kodansha.co.jp/article/news-emoemo_book_2)に掲載。
<フォトブック受注締め切り>
イベント応募付きは来年1月9日午前11時59分。受注最終締め切りは同1月20日午前11時59分。