【マリーゴールド】躍進を陰で支えたAP風香が「人としても尊敬している」と絶賛する選手とは
マリーゴールドが今年5月に旗揚げ戦を行ってから半年が経過した。女子プロレス界の勢力図を塗り替える団体の旗揚げは大きな話題となったが、人知れず尽力した人物といえばアシスタントプロデューサー(AP)の風香だ。旗揚げ記者会見で元アクトレスガールズ勢とともに現れた彼女に、マリーゴールド合流のきっかけとこの激動の半年間を振り返ってもらった。
マリーゴールドにおける青野未来の存在の凄さ
マリーゴールドが今年5月に旗揚げ戦を行ってから半年が経過した。女子プロレス界の勢力図を塗り替える団体の旗揚げは大きな話題となったが、人知れず尽力した人物といえばアシスタントプロデューサー(AP)の風香だ。旗揚げ記者会見で元アクトレスガールズ勢とともに現れた彼女に、マリーゴールド合流のきっかけとこの激動の半年間を振り返ってもらった。(取材・文=橋場了吾)
マリーゴールドの旗揚げ記者会見が行われたのは4月。スターダムからの移籍組5人に加え、高橋奈七永・石川奈青の計7選手が参加して抱負を語ったわけだが、その終盤にアクトレスガールズを脱退した6選手を引き連れて登場したのが同団体でアドバイザーを務めていた風香だった。
「アクトレスからマリーゴールドへ移った選手の共通点は『もっとプロレスをしたい』『もっと知ってほしい』ということでした。アクトレスにはアクトレスの世界観や信念があって、私がいたときもみんなで同じ方向を向いて切磋琢磨していたんです。でも、やっていく中でプロレスをもっと追求したくなった選手が出てきて……方向性の違いですよね。プロレスをベースにしたエンターテインメントという企画は素晴らしいですし、残った人はその信念がぶれなかった。その中で少しずつ目指すものや足りないことが見えてきたのが6人(青野未来、翔月なつみ、松井珠紗、天麗皇希、後藤智香、CHIAKI)だと思うんです。今さら誰が、どちらが悪いということではないと思いますし、シンプルに目指す方向が違ってきたのが要因です」
マリーゴールド旗揚げ直前に、林下詩美もビクトリア弓月も「アクトレス出身の選手はプロレスができる」と太鼓判を押していた。6人の中で、特に中心となって活躍しているのは初代UN王者の青野だろう。
「普段の青野は、みんなでいても気配を消すような控えめな人。凄い選手なのに、謙虚すぎて近い人間ほどその凄さが伝わらない(笑)。俯瞰で見ていただいている方々ほど評価してくれますね。あれだけ(技を)受けても翌日にはケロッとしていますから、私も怖いくらい(笑)。どんなに疲れていてもピリついた空気のときでも変わらず後輩に優しくできるのが青野ですし、プロレスラーとしてもですが人としても尊敬しています」
元アクトレス勢が評価されるのはちょっと想像していた
マリーゴールドの旗揚げから半年、風香の目からはどのように映っているのだろうか。
「手前味噌かもしれないですけど、元アクトレスの選手が評価されるのはちょっと想像していたんですよ。もともと私はプロレス界にいた時期が長くて、輝いている選手をたくさん見てきました。愛川ゆず季、高橋奈苗(現・奈七永)、紫雷イオ、岩谷麻優、宝城カイリ……他にもたくさんいますが。たくさんのスター選手を見てきたけど、アクトレスを初めて見た時『なにこの団体……この子たちがプロレス界にいったら勝てる団体ないでしょ……』って衝撃受けたんです。そのくらい人材が素晴らしかった。移籍した6人はアクトレスのトップどころばかりではないですが、それでも知ってもらえたら絶対に評価してもらえると思っていたし、そんな話もしていました。
でも、その『知ってもらう』のが大変なので、お披露目があの旗揚げ会見というのも今思えば良かったのかもしれないし、輝く場所を与え続けてくれる(ロッシー)小川さんには本当に感謝です。なので、皇希にこのタイミングで他団体(ノアが創設したGHC女子王座の初代チャンピオンになった)でチャンスが回ってきたというのは、嬉しい予想外でした。ちょうどプロレスの激しさに体が順応してきたこのタイミングっていうのは、やっぱり『持っている子』なんだろうなと思います」
スターダムから合流した選手の中にも、風香が特に注目している選手がいた。
「元スターダムの選手は、さすが業界の先頭を走っていただけあってみんな凄いですよね。一人挙げるとすれば、ビクトリア弓月ですかね。試合内容だけじゃなくて、ノリも躍動感もすべてが様になっているというか、入場から退場まで見ていて楽しい。私がアクトレスにいるときに『スターダムにすごい新人が出てきた』と聞いていたんです。その後も『その新人が若手の中でぶっちぎっている』と。そのときはそんなに気になってなかったんですけど、それが弓月ちゃんだとつながって、今は試合見るたびに納得です。
今まで期待の新人が無理に売り出されてケガで早く引退するのを何度も見てきましたが、弓月ちゃんには“無理をさせている”と感じたことはなくて、人の10倍のスピードが彼女の成長の通常運転。数年後どんなことになっているのか恐ろしいです。もう今は、スターダムやアクトレス、そのほかの団体も含めて集まった選手たちが分け隔てなく良い距離感で混ざり合っている感じがします。家族って絆はあるけど普段からべったりしないじゃないですか。一緒に生活を円滑にするためのほどよい距離、そんな感じの距離を保ちながらマリーゴールドとしてひとつの団体の形になったかなと思います」
田中きずな、勇気みなみ、瀬戸レア。この3選手は、これまで話題に出た選手とはまた違う流れでマリーゴールドに合流した。
「きずなちゃん、めちゃくちゃいいと思います。(タッグパートナーの)弓月ちゃんが何でもできる天才だとしたら、きずなちゃんはできないことが武器になる人。声を出して応援したくなるんです。やられっぷりもいいですよね、彼女にしかできないポジションを得たというか、すごく好きなスタイルだし期待しています。そして勇気ちゃん。実は彼女のモチベーションは高いんです。リーグ戦にエントリーされなかった選手っていつも同じメンバーで対戦したり組んだりだからモチベーションが落ちがちだったんですけど、1試合1試合で結果を残していきたいという気持ちが強いのが勇気ちゃんでした。
背も高い(166センチ)ので、これからですね。同じ事務所の練習生(咲村良子、橘渚)もデビューするので、このトリオも面白いと思います。あとはレアちゃん……謎です(笑)。本当に謎な人なのか、謎っぽくしているのかはわからないんですけど、本当につかめない感じで、そこが不思議で魅力。でも、つかめないけど、先日、勇気ちゃんとの試合は後輩に負けたくない気持ちがすごく見えたので、今後後輩がたくさんできるともっと変わるきっかけになるのかなと思います」
(5日掲載の後編へ続く)