“危険”な裏投げ問題 渦中のSareeeを直撃「私だってワザとやっているわけではない」
令和女子プロレスに突如として「裏投げ問題」が湧き起こった。発端は、2日に札幌で開催されたマリーゴールド(MG)の大会で、Sareeeの裏投げを食らった高橋奈七永が動けなくなり(本人的には「動かさなかった」)、14日の後楽園ホール大会で実施されるはずだった、王者Sareeeとのタイトル戦にドクターストップがかかったことだった。高橋の診断名は「脊柱起立筋損傷」。今のところタイトル戦は12月13日、新宿FACE大会にスライドされる見込みだが……。渦中のSareeeを直撃した。
「裏投げは必殺技、それだけ威力がある」
令和女子プロレスに突如として「裏投げ問題」が湧き起こった。発端は、2日に札幌で開催されたマリーゴールド(MG)の大会で、Sareeeの裏投げを食らった高橋奈七永が動けなくなり(本人的には「動かさなかった」)、14日の後楽園ホール大会で実施されるはずだった、王者Sareeeとのタイトル戦にドクターストップがかかったことだった。高橋の診断名は「脊柱起立筋損傷」。今のところタイトル戦は12月13日、新宿FACE大会にスライドされる見込みだが……。渦中のSareeeを直撃した。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
本題に触れる前に、2024年のSareeeを振り返ると、まさに八面六臂の大活躍を果たしてきた。4月には、敗れはしたものの、因縁浅からぬ“スターダムのアイコン”岩谷麻優とのIWGP戦を実現し、これ以上ない激闘を繰り広げたかと思えば、7月のマリーゴールドではジュリアとの待望の一騎打ちを制し、シードリングのシングル王座と合わせて二冠王に君臨した。
そんな、飛ぶ鳥を落とす勢いのSareeeに待ったをかけるように降って湧いたのが「裏投げ問題」だった。
大前提の話として、プロレス技の危険度は、それこそ何かあると定期的に話題になる。まさに恒例行事のように。その際、SNS全盛の今、真っ当な意見を発する者もいれば、どう考えてもイチャモンのような物言いを展開している者もいる。
これに対してSareeeは、「しょうがない。いろんな意見があって、もちろん批判もありますし、それはプロレスラーである以上ついてくるものだと思ってます。表に出る以上は」と冷静に分析しながら推移を見守っている。
もちろん、Sareeeは高橋に限らず、対戦相手に対し、故意に怪我をさせようと技をかけたことはない。
「そんな人はいないですから。相手を殺めようとしてやっている人は誰もいないし、そこが分からない人がおかしい」(Sareee)と嘆きに近い感情をあらわにする。
Sareeeからすれば、「私にとって裏投げは必殺技、それだけ威力があるとしか言えない。だってプロレスは相手から3カウントとって勝ちなんですから」と答えるだけだ。
「裏投げなんか使わなくたってお前(高橋奈七永)に勝ってやる」
しかし、さまざまな声を集約した結果、Sareeeが出した結論は、13日にスライドされた高橋とのタイトル戦で「裏投げを使わずに闘う」だった。
「だってそう言うしかないじゃないですか。(高橋が)Sareeeの裏投げで首に強い痛みを感じた。動けたけど動かなかった。欠場。でもタイトル戦をやる。それって、分からないですよ、言っていることが。私だってワザとやっているわけではないし、勝つためにやってますし。それでも『タイトル戦を(高橋)本人がやる』って言うんだったら、私は裏投げなんか使わなくたってお前に勝ってやるよ。ただそれだけですよね。シンプルに。グチグチ言われてまで(タイトル戦を)やるもんじゃないと思うし。ただ、裏投げを使わなかったとしても、万全で、120%の高橋奈七永で来いよって思いますよね」(Sareee)
Sareeeの主張は見当違いには思えない。
ちなみにSareeeの裏投げで「死にかけた」と証言した、もう1人の女子プロレスラーが“Angel of Death”野崎渚になる。
野崎はシードリングの年内最終戦(12月27日、後楽園ホール)でSareeeの持つベルトに挑戦することも決まっている。Sareeeと野崎は、MGではタッグ対決ながら何度か肌を合わせたが、それがそのまま、今度はシードリングに舞台を変えて一騎打ちを行うのだ。
「楽しみですよね。やっとシングルで向き合える」とSareeeは喜びを隠さないが、「私と野崎さんはお互いフリーの立場でMGに上がっていて、普通だったらMGのタイトルをかけて闘ってもおかしくないけど、タイミング的にも噛み合っていると思う。私は闘えるのがうれしいですね」「12月27日は年内最終戦。集大成ですよ。締めくくりの試合。気合いを入れていきます。しっかり野崎渚を倒して真の強さを証明したい」と意気込む。
対する野崎は高橋同様、Sareeeの裏投げで「一個何かを間違えると、たぶん私は動けなくなっている」と恐怖体験を明かしながら、「でも、仕方がない。食らわないように気をつけようと思います」と前向きな見解を示した。
しかしながら、そう聞いてしまうとSareeeとしては「裏投げで仕留めたい」と言いたくなる気持ちも分からないではない。
「(里村が)引退されるまでに吸収したい」
ともあれ今現在Sareeeの存在は、令和女子プロレスにおける危険な存在の象徴。8月に“悪魔”中島安里紗が引退した今、Sareeeがその分野においてはダントツの1位をひた走っている。
そう言われても、Sareeeは「天使です」と笑顔を見せるところが、また心憎いというか、恐ろしい面でもある。
しかも首の調子次第で高橋戦が無事に実施されるのかは予断を許さないが、野崎戦は必ず実施されるだろうから、少なくとも年内のSareeeには「裏投げ問題」がついてまわる。
さらに年明けには「Sareee-ISM~ChapterVI~」(1月23日、新宿FACE)が開催されるが、18日には猪木元気工場で会見を行い、Sareeeの相手がセンダイガールズプロレスリングの里村明衣子と発表された。Sareeeにとって里村はデビュー戦の相手でもあり、これまでの対戦成績は1勝2敗。来年4月には里村の引退が決まっているだけに、タイミング的には最後の一騎打ちになる可能性が高い。
「今考えても、里村さんがデビュー戦の相手を務めてくださったのは大きいですね。私は里村さんが相手をしてくださって(女子プロレスラーとして)生まれているので、特別な存在です」(Sareee)
実はSareeeは会見上、「私は全て上回っていると思います。だからしっかり闘いで、結果で見せていきたいと思います」と発言していた。
興味深いのは、会見後に話を聞くと、自身の発言を覆す言葉を発したことだろう。
「さっき会見で、里村さんに全て上回っていると言いましたけど、勢いでそう言っちゃったけど、何かまだまだ足りない部分があるのかなって思いますね。だからこそ、(里村が)引退されるまでに吸収したいですね、いいところ全てを。それをSareeeのプロレス人生に上乗せしていきたい。盗めるものは全て盗みたいですね」(Sareee)
泣いても笑っても、2024年は残すところわずかひと月余り。Sareeeとしては激動の2024年を最後まで勝ち抜いて有終の美を飾り、来年につなげたいだろうが、果たして首尾よくそれは実現するか。
そして「裏投げ問題」は無事に落ち着くところに落ち着くのか。どうやら今年も最後の最後まで、Sareeeの動向から目が離せそうにない。