【スターダム】“女子プロレス界の象徴”安納サオリの本音、他団体との交流は「私だけでいいじゃん!」の真意
昨年、スターダムでは稀有な他団体に出場可能な専属契約を結んだ安納サオリ。2015年にプロレスデビューした後はさまざまな団体に出場し、その名を広めてきた。そして今、ポテンシャルが完全に開花、あの女子プロレス界の横綱・里村明衣子に「今の女子プロレス界の象徴」とまで言わしめた、安納の魅力に迫った。
安納サオリの存在感を出さなければスターダムに上がる意味はない
昨年、スターダムでは稀有な他団体に出場可能な専属契約を結んだ安納サオリ。2015年にプロレスデビューした後はさまざまな団体に出場し、その名を広めてきた。そして今、ポテンシャルが完全に開花、あの女子プロレス界の横綱・里村明衣子に「今の女子プロレス界の象徴」とまで言わしめた、安納の魅力に迫った。(取材・文=橋場了吾)
「情熱を秘めたクールビューティー」。筆者が安納に抱いていた印象だ。しかし、インタビュー開始すぐに、いや偶然待ち合わせ場所で鉢合わせた瞬間にその印象は大きく変わった。
「(クールという印象は)サイン会でもよく言われるんですけど、実際は全然違いますよ(笑)。よく『こんなにしゃべるんですか?』ってびっくりされます。試合のときは、スイッチが入って戦いのモードになっちゃうんですよね」
その安納、2015年にアクトレスガールズでデビューし、すぐにスターダムに定期参戦するようになった。その後、他団体所属やフリーを経て、2023年に6年ぶりにスターダムのリングに帰ってきた。スターダムに再参戦するようになり1年半、すでに安納はスターダムに欠かせない存在となった。
「ありがとうございます。でもそうならないといけないと思っていました。スターダムに上がるなら、安納サオリの存在感を出していかなくては意味がないですから。(男子の団体も含め)いろいろな団体に出て経験を積んで、辛かったこと・うれしかったことすべての積み重ねが今の安納サオリを作っているので、そのひとつでもかけていたら今の私はいないです。だからこそ、何年もスターダムに上がっていない時代はありましたが、私は自分が歩んできた行動に対して後悔はまったくなくて。胸を張って、本当にすべての経験が自分のためだったと思います」
この6年間、実はスターダムから安納にオファーがなかったわけではない。
「上がらなかった、それには意味があって。多くの方々からは『安納はスターダムに行くんだろうな』という意見が多かったみたいですが、その反発というか(笑)。その通りにはいかせたくないという気持ちと、今は上がるタイミングではないという気持ちの両方があって。やっぱり上がってない期間にスターダムはどんどん変わっていって、キラキラ輝いていく選手の姿を見ていると、悔しさとかもどかしさはめちゃくちゃありましたよ。正直、見たくないときもありましたけど、いつか絶対タイミングはあると思っていたので。そのベストタイミングが、2023年4月だったんです。ケガもしましたし、コロナもありましたから、しんどかったですよ。でも、輝けるタイミングが来るという自信はあったんですよね」
他団体との交流は「私だけでいいじゃん!」が本音
スターダム再参戦後、ワンダー・オブ・スターダム王座をはじめ多くのタイトルを獲得し、他団体のシングルのベルトも手に入れて安納。実は今年に入ってからの方がきつかったという。
「去年は(スターダムのリングが)新鮮でしたし、初心を思い出させてくれる場面が多かったのですが、今年に入ってからは安納サオリがいるスターダムが当たり前になってしまったので、壁にぶち当たるだろうなと。これは予想していました。なので、私自身どうやってプロレスを届けていくのがベストなのか、つい最近まですごく悩んでいたんです。特に今年はフリーから専属契約になったので、フリーという肩書が外れたことも私の中では大きな決断ではありました」
安納が再参戦してからのスターダムは「挑戦している」と感じているという。しかし、その裏側には強い思いがあった。
「今まで鎖国に近い状態で、他団体に上がることが少なかったスターダムの選手が、いろいろな団体との交流を持っている。これはすごい挑戦だと思っていますけど……これ、誰にも話したことがないんですが、正直、他団体との交流は『私だけでいいじゃん!』って思っていますよ。これまで他団体に出ていて、ほかの団体との懸け橋になっていたのは私だよ、と。この挑戦が当たり前になってしまうのは、すごく嫌で。ただ、私だけが懸け橋になるのでは足りないのかなと。その悔しさはありますよね。私はスケジュールが許す限り、もっといろいろな団体に出て、どこに出ても安納サオリのスタイルでやっていきたいと思いますし。もう、休みはいらないんです」
(26日掲載の後編へ続く)