単身上京も仕事ナシ、バイト生活で諦めかけた役者の夢 砂川脩弥の転機となった憧れの仮面ライダー役
一口に「俳優」と言っても多様だ。映画やテレビドラマに出演する映像俳優、舞台上で演技を行う舞台俳優、役に目を向ければ主役、メインキャスト、バイプレーヤーなど……。その中で、アニメや漫画などの2次元の世界を、現実の3次元の世界で表現する“2.5次元”で活躍の場を広げるのが、砂川脩弥だ。地元・沖縄で芸能活動を始めた少年も、11月17日で節目の30歳。アシックスジャパンのショートドラマ『ワンチーム、ワンホーム』で久々の映像作品に出演。改めて、“演じる”ことへの思いを強めている。
一度はやめようとも考えた俳優業
一口に「俳優」と言っても多様だ。映画やテレビドラマに出演する映像俳優、舞台上で演技を行う舞台俳優、役に目を向ければ主役、メインキャスト、バイプレーヤーなど……。その中で、アニメや漫画などの2次元の世界を、現実の3次元の世界で表現する“2.5次元”で活躍の場を広げるのが、砂川脩弥だ。地元・沖縄で芸能活動を始めた少年も、11月17日で節目の30歳。アシックスジャパンのショートドラマ『ワンチーム、ワンホーム』で久々の映像作品に出演。改めて、“演じる”ことへの思いを強めている。(取材・文=小田智史)
幼少期から地元・沖縄で芸能活動をスタートさせた砂川。2016年に日本最大級のファッション&音楽イベント「GirlsAward」と総合エンターテインメント企業のavexが開催する“イケメン”発掘オーディション「BoysAward Audition」にてBoysAward賞を受賞後、上京して俳優の道を歩み始める。
2019年、『仮面ライダーゼロワン』のオーディションで滅/仮面ライダー滅役を勝ち取り注目を集めることになるが、そこに至るまでの20代前半は「長くて、つらい時期もあった」と振り返る。
「(20~25歳は)お仕事を取れなかったし、役者を目指して独り身で上京してきて、いつの間にかアルバイトしかしていない時期もありました。芸能活動をやめることも考えましたけど、諦めてしまったら、自分に何が残るんだと悩んで。その瀬戸際のときは母親や周りの人が支えてくれて、『まあ、何とかなる』と乗り越えられました。自分の中で光が見えて、心が軽くなったときにお仕事をいただけたり、うまくいくようになったんです」
仮面ライダーシリーズは、スーパー戦隊シリーズ、ウルトラシリーズと並んで、幼少期の男の子の憧れ。砂川も例に違わず、「仮面ライダーになりたい」との思いを抱いていた1人だ。
「役者になりたいと思う前から、仮面ライダーは大好きでした。役者の仕事で一番やりたいと思っていたので、仮面ライダーのお仕事ができてうれしかったですし、映像や舞台の現場で役者さんやスタッフさんから『ライダー好きで見ていました』『子どもと見てました』と言われて、『こんなすてきな役者さんに、逆に憧れてもらえるなんて』と不思議な感覚になりました。仮面ライダーをやって、『これからもっと頑張らなきゃ』と気張るよりも、僕は仮面ライダーをやって未来が明るくなったというか、『これから楽しい人生が広がっているんだ』と期待の方が大きかったです」
共演した中村獅童から刺激
砂川はその後、映像から舞台・ミュージカルへと活躍の場を移し、『ROOKIES』や『弱虫ペダル』などに出演。アニメや漫画を題材にしたステージで存在感を放つ“2.5次元俳優”として注目を集めるようになる。
「仮面ライダーのお仕事を1年以上やらせていただいたあとは、主に舞台をやらせていただいてきました。(自分の俳優業は)映像から始まりましたけど、いつの間にか舞台の畑にいて面白いなと思いました。僕自身、『2.5次元俳優』の基準はよく分かっていなくて、難しいです(笑)。でも、王道とは違う2.5次元の良さがあって、すてきだなと思うことはたくさんあります」
今回、アシックスジャパンのショートドラマ『ワンチーム、ワンホーム』で、久々の映像作品に出演。中村獅童、兒玉遥とともに、建設業を舞台に「人と人との繋がりが良い仕事(≒家づくり)に繋がる。」模様を表現した。「映像作品に出させていただいて、懐かしい気持ちがしました」と砂川は笑顔をのぞかせる。
「映像現場の独特な雰囲気は気持ち良くて、『この感覚、久々だな』と思いました。舞台は目の前で役者が演じる“生”の感じ、エネルギー・熱量を感じられるのが魅力。それに対して、獅童さんとか他の演者さんのお芝居を見ていて感じたのは、声量のリアリティーは映像ならではだなと。今回で言うと、仕事に真摯(しんし)に向き合っている職人さんの人間性が詰まっています。現場監督役の僕も見てもらえたらうれしいですし、役者の僕しか知らない方にとっては作業服姿が新鮮かもしれません」
共演した22歳年上の中村獅童からは、俳優としてだけでなく、1人の人間としても大きな刺激を受けたという。
「獅童さんとはお仕事を一緒にするのも、ちゃんとお話させていただくのも今回が初めてでした。演技をしているときはもちろん、カメラが回っていないところでも、ずっと獅童さんなんだなと思いました。僕が緊張しながら待っていたら、(舞台の)『刀剣乱舞』に出ていたのを知ってくださっていて、歌舞伎にも『刀剣乱舞』がある関係で共通の役者さんの話をしたり、緊張をほぐそうと和ませてくださいました。僕のお芝居を見て『いいね』と声をかけてくださったり、現場の雰囲気を大事にして周囲をすごく見ている。素でかっこいいというか、男としてめちゃくちゃかっこいい、尊敬できるなと思いました」
30歳で目指す「渋い男」
上京し、俳優としてがむしゃらに走り続けてきた砂川も、11月17日で30歳になった。「先輩の背中を追いかけて必死にやってきましたけど、いつの間にか新人俳優ではなくなっていました。25歳からここまでは本当に早くて、今がすごく楽しいです」。目指すのは、「背中で語る男」だ。
「顔が濃くて、昔は金髪の時期も長かったので、怖い人なのかなと思われがち。『安心しました』とよく言われます。かっこいい男性を目指していて、背中で語ろうとするんですけど、いかんせん僕がそういうキャラじゃなくて、後輩にも『フワフワしている』と言われます(苦笑)。舞台現場では年下の子も多くなってきたので、自分がしっかりしなきゃいけないというか、貫禄を付けて、30歳に見合う渋い男になりたいです」
30代に突入し、砂川が思い描く今後の俳優像とは――。
「『あの生きざまかっこいいな』とか、尊敬する役者さんはたくさんいます。でも、目標の役者さんは自分の中で設けていません。主役として真ん中に立ちたいという思いは持ちつつも、いろんな役者さんを見てきて、バイプレーヤーにはすてきな魅力があると感じました。主役がいて、その隣で主役を華やかにする、献身的な姿がかっこいい。正直、気負いすぎず、気楽に楽しめるところもありますし(笑)。自分なりの色を出せていけたらいいなと思います」
砂川が本当の意味で“自分の色”を見出したとき、俳優としてさらに成長を遂げることになるだろう。
□砂川脩弥(すながわ・しゅうや)1994年11月17日、沖縄県出身。幼少期に地元・沖縄で芸能活動を開始。2016年、日本一のモテボーイズを決定するオーディション『BoysAward Audition 2nd』でBoysAward賞を受賞後、上京して本格的に芸能活動をスタートさせる。2019年、特撮ドラマ『仮面ライダーゼロワン』で滅(ホロビ)/仮面ライダー滅役を演じた。その後は舞台『ROOKIES』(21年)、舞台『弱虫ペダル』(23・24年)、舞台『刀剣乱舞』(24年)などに出演し、アニメやゲームを題材にしたステージで存在感を放つ“2.5次元俳優”としても注目を集める。