埼玉栄高の生徒死亡事故、保護者は学校の対応に不満 「顧問がちゃんと出てきてやるべき」「甘やかしてんなって」

埼玉栄高のグラウンドで生徒4人が乗った車が横転し、助手席に座っていた高校2年生の男子生徒が死亡した事故が波紋を広げている。同校は22日、ホームページ上に謝罪文を公開して「管理体制の見直しと生徒たちの心のケア」に取り組むことを表明したが、昨年に続く“不祥事の連鎖”に学校に子どもを預ける保護者は不信感を募らせている。

学校側は19日の会見で謝罪したが…【写真:ENCOUNT編集部】
学校側は19日の会見で謝罪したが…【写真:ENCOUNT編集部】

深夜に生徒が軽自動車を運転し死亡事故が発生

 埼玉栄高のグラウンドで生徒4人が乗った車が横転し、助手席に座っていた高校2年生の男子生徒が死亡した事故が波紋を広げている。同校は22日、ホームページ上に謝罪文を公開して「管理体制の見直しと生徒たちの心のケア」に取り組むことを表明したが、昨年に続く“不祥事の連鎖”に学校に子どもを預ける保護者は不信感を募らせている。

 この事故は16日午後11時50分ごろ発生。16歳の男子生徒が運転していたグラウンド整備用の軽自動車が陸上部用の坂路の側面に衝突して横転。助手席に乗っていた17歳の男子生徒が死亡した。後部席には当初男子生徒が1人と発表されていたが、もう1人乗っていたことが明らかになっている。

 軽自動車はサッカー部が使用し、鍵は顧問とコーチが管理していた。普段は助手席のグローブボックスに入れていたが、事故当日は最後に使用したコーチが運転席側のダッシュボードに置いていた。車は施錠されておらず、ドアを開け鍵の場所が分かれば誰でも運転できる状態だった。

 一方で、乗っていた4人は全員サッカー部ではない寮生で、所属する部活もそれぞれ異なった。サッカー部でない生徒たちがなぜ軽自動車を動かせることを知っていたのか。鍵がずさんな管理体制下にあることが生徒の間で広く知られ、ナンバープレートのない車を使った深夜の危険走行が常態化していた可能性が指摘されている。

 事故を受け、同校を運営する学校法人佐藤栄学園は19日、さいたま市内で会見。田中淳子理事長・学園長らが謝罪した。20日には臨時保護者会が開かれ、22日は公式サイトに町田弦校長名で「グラウンドでの事故に関するお詫び」と題した謝罪文を掲載した。

「11月16日(土)深夜に本校のグラウンドで起きた事故により、前途ある生徒1人の尊い命が失われました。亡くなられた生徒のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族に対し心からお悔やみを申し上げます。

 学校の管理下においてこのような痛ましい事故が起きてしまいましたこと、関係各位、ご心痛を抱かれた皆様に深くお詫び申し上げます。今後は、二度とこのようなことが起きぬよう、管理体制の見直しと生徒たちの心のケアを第一に努めて参ります。

 この度は誠に申し訳ございませんでした」

 再発防止を誓った学校側だが、保護者からは早くも懐疑的な声が上がる。

 会見の様子を見ていた在校生の父親は「まず一番初めの頭下げる時間が短いのと、下げた後いきなり座り出した。なんでそんなすぐ座ってんだみたいな感じはしましたよね。(謝罪も)結局棒読みというかね、なんなのかなって感じですよね」と指摘。

「前にサッカー部も問題を起こしたことがある。その時、甘やかしてんなっていうのはちょっと感じてたんですよね。今回もなんか、サッカー部のせいにしようとしてるなっていう印象を受けて。鍵がどこにあろうが、乗ってる本人が悪いでしょっていうのが率直な意見ですね。しかもハコ乗りしてたっていう話じゃないですか」と続けた。

 町田校長が公式サイトに「お詫び」を出すのは今回が初めてではない。昨年3月、サッカー部の生徒が東日本大震災の被災者を冒とくする動画がネット上に配信され、大騒動になった。この時も、「このようなことが二度とおこらないように」と記していた。ところが、学校側の対応は不十分で、学校に抗議する保護者が相次いだという。

学校法人佐藤栄学園【写真:ENCOUNT編集部】
学校法人佐藤栄学園【写真:ENCOUNT編集部】

役員だらけの記者会見「顧問がちゃんと出てきてやるべき」

 今回の事故ではさらに責任の所在が複雑だ。無免許で車を運転した生徒たち、その各部活動の顧問、鍵の保管に不備があったサッカー部の顧問やコーチ、そして問題を把握できていなかった学校側、深夜に複数の生徒が脱走した寮の管理体制も問われている。いずれも正常に機能していたら、事故は防げた可能性が高い。

 会見で、町田校長は「痛恨の極み」と話した。一方で、理事長や校長の進退についての質問には、横から高田直芳・教学本部長が口を挟み、「全容解明がなされた後に考えるべきもの」として、本人たちからの意思表示を拒んだ。高田氏は埼玉県教育委員会教育長の経歴を持ち、前出の保護者は、「なんか見えない力がいろいろあそこにはあるのかなっていう感じがしました」と首をひねった。田中理事長は再度コメントを求められて、責任はすべて理事長と校長にあると語った。

 司会も含めて全員が理事会の役員や教頭以上の管理職で、車に乗っていた生徒や軽自動車の管理状況を詳しく知る現場の教員が誰も出席していなかったことにも疑問を抱いた。

「まずは学校が謝る前に、親がちゃんと謝罪したらどうって僕は思いましたけどね。学校に迷惑かけてるわけですから。あとは、やっちゃったのはもうあれなんだから、その(乗車した生徒の)顧問がちゃんと出てきてやるべきじゃないのって思います。そこを隠す意味って全くない。寮の管理体制とかどうでもよくて、そもそも出ちゃダメでしょって話ですよね。それで出ちゃったんだったら、その担当の顧問の先生が保体科としてやっているんだったら出てきてほしいなと思いました」

 埼玉栄は1学年の人数が約900人のマンモス校で、普通科とスポーツの成績に優れて中学から推薦などで入学する保健体育科(保体科)に分かれる。部活動の盛んな学校として知られるが、普通科も難関大も含めて進学実績がある。3年生は受験シーズンを控え、不祥事による影響も懸念されている。

 学校の雰囲気は事故後、どうなっているのだろうか。

「子どもは、特に普通科のクラスの中はそんなに変わらないって言ってましたね。保体科のやってることだからね、みたいな感じっぽいです。保体科ちょっとやべえってしょっちゅう子どもは言ってたんで。一部の生徒でしょうけど、もう態度が悪かったり、電車の中のマナーだったりとかなってないみたいですね」

 警察の捜査は現在も続いている。二度と起こしてはならない痛ましい事故。事故の原因究明とともに学校側の徹底した対策が求められている。

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