メルカリで不正利用→“解決済み”のはずが5年越しの請求に被害者がく然…本社対応が一変、異例の展開
フリマアプリ「メルカリ」のスマホ決済サービス「メルペイ」が不正に利用され、“解決済み”のはずが5年越しに請求書が届いた――。そんな投稿がネット上で話題を呼んでいる。被害者は不正利用が発生した5年前、メルカリ側に問い合わせて「請求は停止」との連絡を受けていたが、実は債権譲渡が行われており、5年間、請求が“生きている”ことが判明したという。困惑した被害者がメルカリ側に訴えたところ、一転して事態解決に向けて動き出した。異例の展開の一部始終を聞いた。
当初は「第三者が誤って住所・氏名を登録」との調査結果だった
フリマアプリ「メルカリ」のスマホ決済サービス「メルペイ」が不正に利用され、“解決済み”のはずが5年越しに請求書が届いた――。そんな投稿がネット上で話題を呼んでいる。被害者は不正利用が発生した5年前、メルカリ側に問い合わせて「請求は停止」との連絡を受けていたが、実は債権譲渡が行われており、5年間、請求が“生きている”ことが判明したという。困惑した被害者がメルカリ側に訴えたところ、一転して事態解決に向けて動き出した。異例の展開の一部始終を聞いた。
今回、トラブルに巻き込まれた当事者は、ののさん。
「→5年前にメルペイで不正利用発覚。サポートから私への請求はしないとの回答を得る。
→何故かアカウント永久BAN。
→5年後、債権譲渡の通知。私の信用情報に傷がつく。
→メルカリに問い合わせるも泣き寝入り。
→弁護士さんへ相談(今ここ)」。今月中旬、嘆かわしい現状をXで報告した。
事の発端は、2019年7月に、実家に届いた身に覚えのない督促状だった。「当初は架空請求を疑い、こちらからメルカリのサポートに連絡を入れました」。請求金額や日時等の記載はなく、「〇月分のご利用分」といった葉書が届く形だった。ののさんはメルペイを利用しておらず混乱。メルカリ側とは、本人確認の情報提供に応じるなど、メールでやりとりを続けた。
一方で当時、被害額や購入したとされる物などの情報が伝えられず、「そもそも金額や何の商品を購入されているのかが開示されず、自分自身も(詳細を)把握できない状況でした」。その後、メルカリアカウントの「無期限の利用制限」についても通知された。
第三者によってアカウントが勝手に作られ、見知らぬままに物品購入の取引がされたとみられる事案。やりとりにおいてメルカリ側から、「第三者が誤って住所・氏名を登録し、弊社サービスを利用していることが判明いたしました」という事務局の調査結果と共に、「お客さまへの請求については、ただちに停止の手続きを行わせていただきました」との返答があった。このため、ののさんはトラブルは解決したと理解した。
そもそも見知らぬところで個人情報を使われてメルカリの別アカウントが作成されていたことに怖さを感じ、「第三者が誤って」という調査結果に不信感を抱いた。それに、アカウント停止処分は到底納得のいくものではなかった。
メルカリ側に抗議したものの、次第に返信がなくなり、アカウント停止によって問い合わせが困難になった。警察への通報・相談は断念した。不正利用の件が解決済みの認識であったことに加えて、「こちらとしては実家に届いた督促状以外の情報はなく、この時点ではあくまで『不正利用されたかもしれない』と曖昧だったため、警察にも届けることはできず、私個人としてもメルカリを今後利用できなくなるだけなのでもういいかという思いになりました」と話す。
再度問い合わせると「事務局の処理に不足」と一転して不手際を認めた
ところが、5年もの歳月がたち、驚がくの展開に。今年7月にある法律事務所から請求書が届き、この時点でメルカリから別会社への債権譲渡が行われていることを知り、ここで初めて請求金額を把握することに。「別会社の法律事務所から届いた通知によると、元金が『4万9866円』、損害金が『1万3635円』となっております。5年間分の利息が含まれているかどうかは分かりませんが、損害金がこれに当たると思われます。また、こちらには利用日が記載されており『190424』となっております。この通知により、初めて不正利用された日時を知りました」。
年月を経ての支払い要求。法律事務所側からは何度か督促状を送っていると伝えられたが、「実際にこれまでに私のもとに請求書が届いたことはなかったです。住所が実家であるため、気付かないということも考えられません」。解決済みだと考えていたののさんは再び混乱に陥った。
困り果てて消費生活センターに相談。メルカリ側に5年前のメール内容を開示するなどして連絡を入れたが、返答がない状態が続いた。
過去の借り入れや返済状況などの記録である「信用情報」は、お金に関する個人の生活に大きな影響を持つ。現状は履歴には残っていないが、このまま解決しないと、信用度が低下してしまう可能性が出てきてしまった。
ののさんは意を決して、「心が折れそうに」なりながらも、弁護士を立てることにした。弁護士に相談しながら今後の方針の検討を進めた。ただ、あくまで債権譲渡された先の別会社の法律事務所との交渉になり、歯がゆい思いを抱えていた。「いつかまた同じような通知が来るかもしれない」という不安もつきまとっていた。
メルカリを巡っては、売買での返品を巡るトラブルがSNS上で相次いで報告され、問題化。同社は今月17日に、「メルカリお客さまサポートの方針と体制の見直し・強化について」とする声明を発表。不正利用者への対策を強化することなどを打ち出した。
ののさんはこれを受けて、再度メルカリ側に問い合わせを行った。すると、これまで動かなかった山が、一気に動き出したのだ。
メルペイ事務局名義で返信が寄せられ、「事務局で改めて確認したところ、過去に覚えのない請求についてお問い合わせをいただいた際に、事務局の処理に不足があり、お客さまへ債権譲渡の通知が行われてしまっていたことを確認いたしました」とし、対応に不手際があったことが言及された。一転して、「不正取引により発生した債権」と認める内容だった。
そのうえでメルカリ側は、債権の譲渡先に対して、債権譲渡対象から除外することを求め、督促を停止するための連携を行っていることを明かした。
さらに、凍結されていたアカウントについて「利用制限を解除」したことが伝達された。
「メルカリは今回の件を企業としての転換期ととらえ、今後はさらに大きく躍進していただきたい」
身に覚えのない代金請求が、一度は蒸し返され、急転した今回の不可思議な事案。振り回され続けたののさんにとって、まだ安心し切れないというのが本音だ。
メルカリ側の対応について、「非常に問題があると思います。もしこのメールがなかった場合、どうにもならなかったと思います」と首を傾げる。
「サポートの方から『債権譲渡の督促停止』との回答は得たことで、確かに解決に向けて進んでいる印象はあります。しかし、5年前と同様にメルカリ側と正式に書面を交わしたわけではないため、実際に今後どうなるかはまだ不透明だと思っています」。慎重に考えざるを得ない。
今後は弁護士と再度相談し、メルカリ側と書面を交わすことで本件の解決を図っていくつもりだ。ののさんは「対応が遅い! と憤りを感じている部分も確かにありますが、メルカリ側も解決に向けて動いていただいているのも事実です。また、私個人としては職業柄メルカリという企業には尊敬と憧れの気持ちもあります。メルカリは今回の件を企業としての転換期ととらえ、今後はさらに大きく躍進していただきたいと考えています」とメッセージを寄せた。
ENCOUNT編集部はメルカリに対して、今回の事案について事実関係などを問い合わせた。同社は「(問い合わせの)内容については認識しております。メルペイでは、お客さまの故意または過失がなく、悪意のある第三者がお客さまの情報を取得して不正に『メルペイ』を利用した場合については、その被害について全額補償しております。本件についても、今後当社がお客さまへ請求を行うことはございません」と回答した。