兒玉遥「書き込みをする人は“通行人”」 ネット全盛時代にSNSと向き合う“マイルール”
2019年6月にHKT48を卒業し、俳優に転身して早5年半。兒玉遥は今年、夢だった“朝ドラ”デビューを果たした。11月にはアシックスジャパンのショートドラマ『ワンチーム、ワンホーム』にも出演。「見える世界が広がった」と、経験と成長を実感している。
念願だった朝ドラ出演の夢を実現
2019年6月にHKT48を卒業し、俳優に転身して早5年半。兒玉遥は今年、夢だった“朝ドラ”デビューを果たした。11月にはアシックスジャパンのショートドラマ『ワンチーム、ワンホーム』にも出演。「見える世界が広がった」と、経験と成長を実感している。(取材・文=小田智史)
兒玉はアイドル時代の休養期間に自分の将来について見つめ直し、「お芝居をしたいという気持ち」に気づいたという。2019年9月にHKT48卒業後初の舞台『私に会いに来て』へ出演。20年3月には舞台『改竄・熱海殺人事件』で難役の演技が好評を博した。
舞台や映画、ドラマなどジャンルを問わず活躍してきた兒玉。今年はNHK連続テレビ小説『おむすび』で、念願だった朝ドラ初出演を果たした。これまで、朝ドラや大河ドラマのオーディションを受けてきたが、ついにつかんだ役(警察官・川合紗香役)だった。
「朝ドラは俳優なら誰しもが出たい、演じたいと思う作品。出演は女優業を始めたときからの夢でした。漠然とした夢だったんですが、女優業をしていく中で、一つキャッチーな経歴があるとかっこいいなという感じで、オーディションも何回か受けていたんです。今回、まさか声をかけていただけるとは思わなかったのですごくうれしかったですし、出演が決まって『おめでとう』とたくさんの方に言っていただいて、家族・親戚も喜んでくれました」
主人公の米田結を演じる俳優・橋本環奈とはこれが初共演。「裏表がなくて、見ていたままというか、明るく元気な感じでした」と印象を語り、朝ドラの思い出を振り返る。
「撮影に入る前に大阪で顔合わせがあったんですけど、こんなに人数が多い顔合わせがあるんだって驚きました(笑)。会議室みたいなところに、橋本環奈さん、松平健さん(米田永吉役)らキャストさん、スタッフさんを含めて何百人と集まった光景が迫力があって、忘れられない日になりました。私は福岡が地元なので、生まれ育った街で撮影するのは不思議な感覚でした」
SNSに触れる上での“自分ルール”とは?
今回、兒玉はアシックスジャパンのショートドラマ『ワンチーム、ワンホーム』にも出演。歌舞伎俳優の中村獅童、俳優の砂川脩弥とともに、建設業を舞台に「人と人との繋がりが良い仕事(≒家づくり)に繋がる。」模様を表現した。アイドル卒業後は、グループでなくソロ活動となり、現場のたびに“人と人とのつながり”の力をより実感するという。
「ドラマ撮影、CM撮影はほぼ皆さん初対面の現場。その中でも、みんなが『いいドラマにしたい』『いい内容にしたい』という思いで気持ちがつながっている気がします。気持ちがつながっているだけでいい作品が作れたり、スポーツだったらいい試合ができる。つながることで、1人のときよりも大きな力を発揮することができるので、そういう温かさや楽しさを今回もすごく感じました」
共演した24歳年上の中村、2歳年上の砂川にはどのような印象を抱いたのか。
「撮影の前日から動画を撮っていた砂川さんは、ずっと笑っていて、笑顔が印象的な方。私も基本へらへらしているので(笑)、和やかで明るい現場にしてくださったと思います。獅童さんは私が小さい頃からずっと見ていた“大俳優”さんというイメージ。そんな方と共演できて光栄でした。獅童さんは私のお父さんと同い年なんです。年齢を知った瞬間に、『お父さんと同い年か』と思って、同じ俳優業の大先輩ではあるんですけど、いい意味でお父さんと思っていました(笑)。『お父さんに甘えさせてもらおう』『先輩よりも私はできなくて当たり前』の心構えというか、私なりに一生懸命頑張ろうと思いました。少しイジってみたり、現場で声を出して盛り上げてくださいました」
兒玉はアイドル時代、人と比べられることで自分を追い詰めてしまい、「そううつ病」と診断された過去がある。そこから7年が経過し、総合心理カウンセラーの資格を持つ立場から見た、SNS全盛時代の今はどのように映っているのか。兒玉は、「正直、傷付いてしまう人は、SNSを見ない方がいいと思います」と、自身の経験を基に語る。
「SNSは見ている人も、発信する人もメンタルケアが大切で、モラルを知ることが大事だと思っています。私は若いときからSNSを使い、たくさん触れてきたので鍛えられています、芸能人・一般人に関係なく有名になったりできますし、急にSNSでたくさんの人に見られて言葉を受け取ると、免疫が付いていないから落ち込んでしまったり、難しい状況に陥ってしまいます。書き込みする人は傷つけることは書いてはダメだと思いますが、受け取る側も意見を聞くことは大事だけど、自分の考え方を変える必要はないというか。(解決策は)慣れしかないですね(苦笑)」
兒玉自身、SNSと向き合うにあたっては“自分ルール”があると明かす。
「最近、自分の中でしっくりきているのは、SNSで書き込みをする人は“通行人”という感覚です(笑)。私は道端の木とか花で、『きれい』『好みじゃない』とか感想を言っているだけ。感想の内容は様々ですけど、私たちは気づいてもらえない方が悲しいので、まずは気づいてくれてありがとうの気持ちです。その上で、応援してくれている人はいるんだとちゃんと理解して、『感想を言っている人がいる』くらいでいないと心が持たない。『人対人』と思って向き合っちゃうと、感覚のずれがあるので、『あっ、そう』と流すくらいがいいと思います」
挑戦してみたい役柄はスパイ、海賊、地面師
15歳でアイドルデビューを飾った兒玉も、今年9月で28歳になった。俳優の道を歩み始め、多くの経験を積んできたが、「何をもって自信というのか、難しいですよね(苦笑)」と、決して構えずに自然体を貫く。
「若い頃には分からなかったことが、年齢や人生経験を重ねて、前よりも見える世界が広がりました。その分、自分の中に引き出しとか経験値が増えるので、演じる際の“幅”が今の方が広い感覚があって、より楽しいです。過剰に自信を持つ必要はないと私は思っています。自信に満ちあふれている姿がすてきに見える方もいますけど、『自分の中でできている』いう感覚があれば、それでいいんじゃないかなって」
兒玉は自身の演技について「(私は)憑依型じゃない」と表現し、「カットがかかった瞬間に兒玉遥って感じ」と笑い飛ばす。
「今回のショートドラマでは、自信がない内気な新人役を演じました。いろんな性格のキャラクターが出てきて、何かしらで共感できる部分があると思いますし、パワーが湧いてくると思うので、ぜひたくさんの方に見てほしいです。まだまだ自分が演じたことがない役柄があると思います。例えば、アクション系、スパイ、海賊とか。地面師も流行っていて、ああいう詐欺師という職業は自由度が高いので楽しそう。リアリティーではできない、お芝居だからこそできるような役を体験してみたいです」
次はどんな顔を見せてくれるのか。俳優としての兒玉の成長は止まらない。
□兒玉遥(こだま・はるか)1996年9月19日、福岡県出身。2011年7月にアイドルグループ・HKT48の第1期生オーディションに合格し、シングル曲『控えめI love you!』『12秒』などでセンターポジションを務めた。2019年6月にグループを卒業し、エイベックス・アスナロ・カンパニーに所属。本格的な女優活動をスタートさせ、現在放送中のNHK連続テレビ小説『おむすび』では、警察官役で朝ドラデビューを飾った。ピラティスインストラクター、温泉ソムリエ、総合心理カウンセラーの資格を持つ。