事務所なしでも次々オーディション合格…26歳“黄金世代”女優の作戦「全てに神経を擦り減らし」

芸能界はオーディションの連続だ。事務所に入るため、作品やイベントに出演するために競い合っている。そこを勝ち抜いていかなければ、未来は開けない。だが、事務所に無所属だった期間もオーディションに高確率で合格してきた俳優がいる。元non-no専属モデルの山田愛奈(やまだ・あいな)だ。ついには目標の1つ、NHK大河ドラマ出演も果たした26歳に、その極意を聞いた。

現在は事務所に所属し、さらなる飛躍を目指す山田愛奈【写真:荒川祐史】
現在は事務所に所属し、さらなる飛躍を目指す山田愛奈【写真:荒川祐史】

元non-no専属モデル 26歳・山田愛奈

 芸能界はオーディションの連続だ。事務所に入るため、作品やイベントに出演するために競い合っている。そこを勝ち抜いていかなければ、未来は開けない。だが、事務所に無所属だった期間もオーディションに高確率で合格してきた俳優がいる。元non-no専属モデルの山田愛奈(やまだ・あいな)だ。ついには目標の1つ、NHK大河ドラマ出演も果たした26歳に、その極意を聞いた。(取材・文=柳田通斉)

 山田は、信頼する女性マネジャーとともに弊社オフィスにやってきた。

「ちょうど1年前から今の事務所にお世話になっています。5年前に前の事務所を退所し、1年間はアルバイトをしながら、演技レッスンなどを受け、その後の4年間はフリーで活動していました」

 異色の経歴だが、芸能界入りのきっかけは新潟市内で受けたスカウトだった。

「中3の元日。普通に街中を歩いている時に声を掛けられました。その時点で推薦での高校進学が決まっていましたし、芸能界にも興味はありませんでした。地元で福祉の道に進むことを考えていたので」

 上京は考えられなかったが、事務所側から新潟市内でできるモデルの仕事を紹介され、活動を開始した。その後、東京でオーディションを受けるように要請され、2014年に開催されたミスiD2015に入賞した。それをきっかけにファッション誌でのレギュラーモデル起用が決まり、高2で上京。17年には、non-noの専属モデルに抜てきされた。

「習い事程度で始めたことがお仕事になっていた感じでした。そして、やるつもりはなかったドラマ出演も決まっていきました」

 同年11月公開の『最低。』(瀬々敬久監督)で映画初出演。演技レッスンを受けないまま、学校でいじめられ、生きることに迷いが出る役柄を演じ切った。同作は東京国際映画祭で高評価を受け、山田自身が演技に目覚めるきっかけになった。

「この時のオーディションは忘れもしません。東京の電車が分からな過ぎて、1時間も遅刻して半泣きで1次審査を受けました。監督や大勢の方々を前に、亡くなった人に向かって届かない思いを伝える演技をしました。途中で台詞が飛び、やり直しもするひどい状態でしたが、気持ちは入って涙は出ました。そして、この審査を通過し、その後の審査も受かって役をいただきました」

 瀬々監督の指導を受けた山田は「演技を基礎から学びたい」と思うようになり、演技レッスンを自主的に受け始めた。その後、しばらくして事務所から離れる決意をした。

「モデルの事務所だったので、俳優として生きていくために環境を変えたいと思いました。そして、1年以上はアルバイトをしながら演技レッスンを受けました。一番良かったのは、台本の読み方を基礎から教わったことで、海外舞台の台本も読解しましたし、落語やアクションも教わりました」

 休業中も複数の事務所から所属の勧誘はあったという。だが、最終的にはフリーでの活動を選択した。

「まずは『どこまで自分の力でやっていけるか』と思ったからです。さまざまな方から、オーディションの情報もいただけていたので」

 オーディションについては、「大きな仕事になると事務所に所属している俳優が有利」の現実はある。問題解決を含め、さまざまな交渉がしやすいからだ。だが、山田はマネジャーもつけずに、オーディションを受け、Netflix『今際の国のアリス Season2』のウルミ役、NHK『超人間要塞ヒロシ戦記』のみよ役をはじめ、ドラマ、映画、広告の仕事を続々と勝ち取った。その要因は「一つひとつのオーディションに懸ける思いが強かったから」と自己分析している。

「『やればどれかに当たる』ではなく、全てに神経を擦り減らしながら準備をしました。漫画原作の役があるなら、当日に向けて髪形、体形、服、話し方もそのキャラクターに近づけました。美容系の広告では食べ物を気にしながら、スキンケア、ヘアケアを心掛けました。『とにかく勝ちたい』という思いが強いので」

 結果、山田はフリーの4年間、出演が絶えることがなかった。ギャラ交渉、請求書の送付、メールのやり取りなども覚えた。一方で「自分の成果を世に伝えることの難しさ」は感じていた。そして、現在の事務所・ENPASSの関係者と出会った。社長は元大手事務所の広報担当。情報発信の術を心得ていた。

「そこには本当に魅力に感じました。そして、自分がやりたい役、向いている役、目指すべき方向などで話し合いができる。それができるファミリー感も決め手でした」

 事務所側も山田の持っている愛らしくも、ミステリアスな雰囲気にひかれ、「全力で売り出したい」の思いで全会一致。契約と同時に、山田が抱いてきた「大河と朝ドラに出たい」の実現に向けて動き出した。そして、山田は『光る君へ』のオーディションをへて、藤原延子役で大河初出演を果たした。

「事務所に入ってから出演した(テレビ朝日系)『科捜研の女』もそうですが、離れて暮らす祖父母、家族が喜んでくれたことが本当にうれしかったです」

「女優の仕事は一生、続けていきたい」と力強く語る【写真:荒川祐史】
「女優の仕事は一生、続けていきたい」と力強く語る【写真:荒川祐史】

トップ女優ひしめく1998年度生まれ

 山田は1998年度生まれ。同世代には広瀬すず、橋本環奈、福原遥、関水渚、長濱ねる、白石聖、平祐奈らトップ女優が多くいる。文字通りの「黄金世代」。その現実も直視した上で、「悔しさはないです」と言った。

「例えば、映画『シグナル100』(20年)でメインキャストとして共演した橋本環奈さんは、20歳にして座長でした。そして、今の活躍。そういった姿を見ていると、活力になりますし、『自分ももっと多くの人に知ってもらいたい』という思いになります」

 事務所側もその思いをかなえるべく、発売中の週刊プレイボーイで7ページのグラビア展開、デジタル写真集の同時発売に尽力した。山田自身は、1か月で8キロ減量の体作りで応えた。

「ジム、ピラティスで体を動かし、1日1食で焼き魚。空腹に耐えられない時は豆腐、昆布でしのぎました」

 何事にもストイックな26歳。「女優の仕事は一生、続けていきたい」と話す思いとともに、同世代のトップ女優たちを追っていく。

□山田愛奈(やまだ・あいな) 1998年9月6日、新潟市生まれ。中3でスカウトされ、高校入学後から芸能活動開始。高2で上京し、17年からnon-no専属モデルに。同年に出演した映画『最低』で演技に目覚め、19年からフリーで活動。数多くのオーディションに合格し、広告、MV、ドラマ、映画に出演。昨年11月、現在のENPASSに所属。テレビ朝日系『科捜研の女』、フジテレビ系『バントマン』、NHK大河『光る君へ』などに出演。160センチ。

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