のん、俳優にアーティストと多彩な顔 目標地点は「すごく遠い。本当に終わりなき道」
さまざまな分野で才能を発揮した故・伊丹十三さんの遺業を記念する「第16回伊丹十三賞」を俳優、ミュージシャン、アーティストとして活動するのんが受賞した。のんの受賞の喜びを、『ダウンタウンDX』を20年以上演出した読売テレビの西田二郎氏が直撃。のんは「表現を天井知らずでどんどん高めていきたい」と語った。
「第16回伊丹十三賞」受賞の喜びを語る
さまざまな分野で才能を発揮した故・伊丹十三さんの遺業を記念する「第16回伊丹十三賞」を俳優、ミュージシャン、アーティストとして活動するのんが受賞した。のんの受賞の喜びを、『ダウンタウンDX』を20年以上演出した読売テレビの西田二郎氏が直撃。のんは「表現を天井知らずでどんどん高めていきたい」と語った。
伊丹十三賞は、デザイナーや俳優、エッセイスト、テレビマン、雑誌編集長、映画監督などなど幅広い分野で活躍した伊丹さんが「これはネ、たいしたもんだとうなりましたね」とつぶやきながらひざを叩いたであろう人と作品に贈られる。これまでタモリ、星野源、是枝裕和氏、三谷幸喜氏らそうそうたる人物が受賞している。
西田「受賞おめでとうございます! 率直に今の心境は?」
のん「やっぱりすごくうれしくて、最初聞いたとき、本当かなと思って本当にびっくりしましたね。賞のことは宮本信子さんが主催されているし、知っていたんですけど、自分とは縁遠いものなのかなって思っていたから、本当に驚きました。
歴代の受賞者の方々も、クリエイティブな素晴らしい作品作られている方々ばかりだったので、私でいいんだろうかと本当にびっくりしました。俳優として賞をいただいたことはあったのですが、それ以外での自分のアートや映画、音楽など、自分の歩んできた道、活動全てに対する賞だったので、そこを見ていただいているというのは、本当にうれしい」
多岐にわたった活動も「全部本物のん」
2006年、モデルとしてデビューして以降、ドラマや映画で活躍してきたのんは、アーティストとしても20年から、継続的にリボンアートを発表し、23年に『のん Ribbon展 怪しくて、可愛いもの。』(仙台PARCO)で「こけし灯篭」「赤べこ」とのんのリボンアートがコラボレーションした新作を発表。ミュージシャンとしても、自ら代表を務める音楽レーベル「KAIWA(RE)CORD」を発足し、精力的に活動している。
西田「のんさんには、顔がいっぱいあるあるわけですよね。どこかにその本物があるのか、それともみんなが本物なのか。どういう感じでやられてるんですか?」
のん「全部本物のんだと思いますね。作られたものだったりとか演技だったりとか、いろいろあるんですけど、あまり話を盛ったりとか、うそをついたりとかも全くできない。のん全部本物で自分が表現していく中で、一番そのときに自分のいいものを出してるっていう感じですね」
西田「やっぱりいろんな活動をするからこそ、相互に高め合っていくこともあるんですかね」
のん「すごくあります。全部の経験が影響しあって良くなってるなって思いますね。俳優として映像の現場での世界しか知らなかったのが、音楽の世界の人に出会ったり、アートの世界の人に出会ったりして、個人の個性はみんな違うのは当たり前だけど、何かその世界の人のルールとか、言葉とか空気感とか全く違うって思いました」
西田「それはすごく刺激も受けるんですよね」
のん「そうですね。音楽の世界の人と出会ったときにすごく自由で、一緒にステージに立ったらもうみんな仲間みたいな、なんかそういう感覚も素晴らしいなって思った。また役者として、その映画だったりの現場に立ち返ったときに、そのときの感じた自由さや垣根のなさが、自分の自由な発想で演技していく頼りになったり、現場での集中力も好きだなって思えたり……。外の世界というか、いろんな世界を知ることで、発想だったり、考え方だったり、自分がどうやってそこに溶け込んだらいいかとか、振る舞いもどんどん自由になっていると思います」
西田「新しいところで活動しようかっていうときって、怖いとか、どうだろうなと思うことはなく、飛び込む感じですか?」
のん「恐怖を感じる前に飛び込んでるっていう感じなんです。表現することにはあんまり恐怖心がなくて、でも話をするのが得意じゃないから、人と対峙(たいじ)したときに、すごく恐怖心があるけどあるけど、カメラの前だったりステージに立ったりアートを作るっていう発表するとかそういうことに関しては抵抗がないですね」
現在の活動は「頂上がない山を登り続ける」
俳優としては、『この世界の片隅に』で第71回毎日映画コンクール 女優主演賞ノミネート、『さかなのこ』で第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。2022年には自身が監督・脚本・主演・編集・アートを担当する映画『Ribbon』も発表している。
西田「監督もされているし、演じることもしている。何か一つ演じるときに、自分の中で大切にしていることはかありますか」
のん「しいて言うなら自分の欠点と役柄の欠点をすり合わせていくっていうのを大事にしています。役柄の持ってるものを自分の経験などを自分の中から見つけて、実感を持った演技をするために、自分のウィークポイントなるところに共感のところ串刺しにして、そこにリアルを持ってくる。長所は台本によく書いてあったり、短所としても押し出されていたりとかするんですけど、それを自分に引きつけて解釈していくということですね。あとは、役の行動を裏付けてドラマチックにするために役柄の『ペイン(痛み)』を見つけるというハリウッドでノートを書くやり方があってそれも大事にしてます」
西田「最後にこれだけ広がってきているのんさんは、今後どうなっていくんですか?」
のん「今やっていることの表現を天井知らずでどんどん高めていく。頂上がない山を登り続けるっていう感じ」
西田「目標はない?」
のん「目標はあるんですけど、もうすごく遠い。伊丹十三賞をいただいて改めて思い出したんですけど、宮本信子さんに『もう毎日満足いかなくて、駄目だって感じなんですよね』って相談したことがあって、その時に『満足できないから続けられるのよ』って言われたことがあったんですね。ということは、『宮本信子さんも満足してないんだ』って気づいて、すごく途方もなくて、どうしようかって、打ちのめされたんです。けど、なんかそれもかっこいいなって思えちゃって、本当に終わりなき道なんだなと思っています」
□のん 俳優・アーティスト。音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動。2022年2月に自身が脚本、監督、主演の映画作品『Ribbon』公開(第24回上海国際映画祭GALA部門特別招待作品)。22年9月、主演映画『さかなのこ』で、第46回日本アカデミー賞を受賞。24年12月27日、主演映画『私にふさわしいホテル』公開予定。DMMTVでの実写ドラマ『幸せカナコの殺し屋生活』も24年冬に公開予定。音楽活動では、23年6月に、2ndフルアルバム『PURSUE』をリリース。24年、第16回伊丹十三賞を受賞。
記事提供:読みテレ(https://www.yomitv.jp/)