日産はなぜ業績不振に陥ったのか “筋金入り”日産オーナーたちに聞く本音「日本向けじゃない」「高級路線」

日産自動車が全従業員の7%にあたる全世界で9000人の人員削減を発表したことが大きな波紋を呼んでいる。「技術の日産」と自動車ファンに支持され、スカイラインGT-Rを始め、数々の名車をこの世に送り出してきた。ここにきての業績不振は、何が理由なのか。10日に埼玉県内で開催されたカーイベントで、“筋金入りの日産オーナーたち”に話を聞いた。

丸テールが特徴の1994年式スカイラインGT-R VspecII型【写真:ENCOUNT編集部】
丸テールが特徴の1994年式スカイラインGT-R VspecII型【写真:ENCOUNT編集部】

「日本向けじゃない」「高級路線」…日産オーナーが分析する日産の課題とは?

 日産自動車が全従業員の7%にあたる全世界で9000人の人員削減を発表したことが大きな波紋を呼んでいる。「技術の日産」と自動車ファンに支持され、スカイラインGT-Rを始め、数々の名車をこの世に送り出してきた。ここにきての業績不振は、何が理由なのか。10日に埼玉県内で開催されたカーイベントで、“筋金入りの日産オーナーたち”に話を聞いた。

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「他のメーカーと違って、日本のニーズのこと考えていないのかなと思いますよね。もうちょっと日本向けの車を出してくれたらなと思う」

 こう話すのは、1986年式サニー305Reニスモに乗る松田亨さん。

「父の仕事の関係で日産しか乗っちゃだめっていう縛りがあった。日産の車しか選択肢がない。ほかの車に乗るなら出ていけって言われるぐらい」という日産一家。免許取得後、初めて購入した車がサニーで、13年間乗り続けている。

 学生時代、デザインを学んでいた松田さんは、カルロス・ゴーン元会長と複数回にわたって意見交換したことがある。「ゴーンさんと何度かやり取りさせていただいた。当時ウイングロードが前期から後期に顔が変わった。『サニーもするのか?』と聞いたら、『サニーはあれでいいんだ』って言ってもらった。僕はゴーンさんのこと認めていた部分もあったけど、ゴーンさんに代わってから高級路線に変わってしまった」と嘆いた。

 スカイラインはスポーティー路線を変更。R34型からV35型への移行では「丸テールじゃなくなった」とデザイン面でも大きな衝撃を与えた。

 現在の日産車については、「いいなと思ってもなかなか手を出せない」と価格の上昇を実感。「あと車が大きすぎて狭い道のある住宅地はやっぱり乗りづらい。マーチとかキューブ乗ってても大きい感じがする」と続けた。現行ラインアップで買いたいと思う車は見当たらないといい、「現行の日産ノートのリア回りのライトとか配置がこのサニーのセダンの前期型の配置に似ていると思っていいなとは思うんですけど、e-POWER専用らしいので。ガソリン車に慣れちゃうと、車の音が静かで物足りない」と話した。

 また、94年式のスカイラインGT-R VspecII型に乗る相原裕二さんは、「GT-R一筋」という愛好家。24年間で、3台を乗り継いだ。業績不振の報に「日産ファンとしてはさびしいですよね。昔はスカイライン以外にもいろんな車が出ていた。今は少なくなっちゃってる。フェアレディZも値段が高くなっている。抽選だったり、納期が遅かったり、そもそも手に入らない」と声を落とした。

 代名詞の日産GT-Rは1444万3000円から、フェアレディZは549万7800円からと高額。「今のGT-Rはデカすぎ。試乗もしてみたけど、しっくりこない。性能はいいんでしょうけど、自分で乗ってる感がなくて……」。愛車は30年前のGT-Rだが、「これはくせがあるけど、運転している感じはする。日産には頑張ってほしいんですけど」と言葉少なだった。

サニー、シルフィ…多い生産終了モデル 「名前を消したことが問題」との指摘も

 また、4台のGT-Rを愛車として所有するベテランオーナーは「今はトヨタの一人勝ちだよね」と自動車業界の印象を告白。その上で、「まず名前を消したことが問題だよね。今までブルーバード乗ってましたって言ったって、ブルーバードの名前はもうない。シルフィだって、なんだシルフィ? ってなっちゃう。サニーもそう。サニーは初代と2代目、3代目と結構いい車が多かった。お客が離れちゃった」と日産の戦略ミスを指摘した。

 日産が最も輝いていた時代は「昭和40年代の半ばから後半」としつつ、80年代や90年代に入っても、「数は少ないけど、いい車は残っていた」との見方を示した。しかし、その後、ブランド力のある車は減少。「スバル系のオーナーは浮気しない。ずっとスバル。そういうのが今の日産にあるかといったらあんまりない。スカイライン好きな人はずっと乗ってきてるけど、ほかの車種はないもん」と話した。

 看板たる代名詞には時代の変化による逆風もあるとし、「GT-R、Z、そこらへんの需要はほんの一部だからね。シルビアがあっても、今はそんなに(台数)出ないと思うよ。みんな若い人だって車はお金かからないで、普通に走れればいい。そういう感覚。軽で十分。だってすごいよ、豪華で」と付け加えた。

 日産車との付き合いは50年以上。思い入れは深いだけに、「日産に元気出してほしいけどな」とエールも送る。一方で、「他社の車も魅力ある。最終的な原因、日産離れしたのは、他のメーカーもいろんな車出している。だから分散しちゃう」と競争力の強化を課題に挙げた。

 オーナーからは「新しい車なのに、旧車のほうが快適だと思う」との声もあった。いずれも日産車に愛着を持っているからこその本音。日産の復活を信じて今後の行方を見守っている。

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