市川團子「まさか僕が!」 12月歌舞伎座『天守物語』で祖父・猿翁も演じた図書之助役
歌舞伎俳優の市川團子が、東京・中央区の歌舞伎座で行われた12月歌舞伎座『天守物語』の取材会に出席した。
共演の坂東玉三郎から渡された泉鏡花全集「自分なりの感情で挑むように」
歌舞伎俳優の市川團子が、東京・中央区の歌舞伎座で行われた12月歌舞伎座『天守物語』の取材会に出席した。
『十二月歌舞伎座』の第三部では、泉鏡花の屈指の名作とされる『天守物語』を上演。同作は、兵庫県の白鷺城(姫路城)の天守閣にまつわる伝説をもとにした、“美しい異形の世界の者”と、“この世の人間”との夢幻の物語。天守閣の最上階に潜む美しく気高い天守夫人・富姫と、若き鷹匠・姫川図書之助(ずしょのすけ)の恋模様が描かれる。今回團子は、坂東玉三郎が富姫を演じる同作で図書之助役を勤める。
團子は「これまでは、澤瀉屋(おもだかや)のお芝居に出させていただくことが中心で、初めて違う家の方とさせていただく。自分がどのように食らいついていけるか、いっぱい学んでいきたいと思います」と意気込んだ。
玉三郎からは稽古に入る前に『泉鏡花全集』を渡されたといい、「それは全部読みまして、玉三郎さんは『感情を一番大切にして』と言われていたと思います。これまでの(役者の演技を見て)作って来るのではなく、『ちゃんと自分で考えた自分なりの感情で挑むように』とおっしゃっていました」とアドバイスを明かした。
図書之助は、團子の祖父で23年9月に亡くなった二代目市川猿翁さんが、昭和40年に日生劇場で演じている(当時は三代目市川猿之助)。團子は図書之助役に、「まさか僕が! というのが一番の思い」と驚き、「このお役は祖父が昭和40年の1月に、当時二代目中村扇雀さんだった四代目坂田藤十郎さんと勤められていた。祖父と同じ役でできるのはうれしいです」と喜んだ。
9月に京都・京都芸術劇場の春秋座に出演した際、当時の写真を見たという。「祖父の資料がアーカイブで全てある場所で、担当者が写真フォルダの中から当時の『天守物語』の写真をわざわざ探して、出してくださいました。2~3枚のお写真があって、ちょうちんを持っている祖父と扇雀さんの2ショットもありましたので、スマホで撮らせていただいた」と振り返り、「そういう資料を見ると、祖父と同じ役をやらせていただくことはうれしいですし、残念ながらビデオは残っていなかったですが、祖父がどういうふうに勤めたんだろうということは考えつつ、とにかく台本との解釈に向き合おうと思います」と語った。
また、「『天守物語』は自分ではあまり挑んだことがないタイプの作品というか、空気感がすごく精密に構成されている。そういう舞台に出させていただくのは初めてで、どう演じようという不安や緊張はありました」と明かし、それでも「楽しみという思いはあります」と前向き。「鏡花もの独特の、言葉遣いも違いますし、象徴的な言葉を使われることが多いので、セリフがより重要な役を果たしていると思います。その独特の雰囲気にどう立ち向っていくか」と課題を語った。
※澤瀉屋の「瀉」のつくりは、「わかんむり」