多目的トイレに入ろうとしたら「この状態」 車いす利用者が困惑…「どうかお願いします」悩ましい実情
車いす利用者が出先で使おうとした商業施設内の多目的トイレ。ドアを開けたら「この状態」……。困惑する事態に陥ってしまった。設備のベッドが広げられたままで、元に戻されておらず、「中に入ることも、ベッドを戻すこともできない」。トイレの入り口の前で困り果ててしまったのだ。日常生活において求められる心遣いと配慮。当事者に話を聞いた。
「多目的トイレの中にある介護用ベッドやベビーベッドの使用後は、元通りに畳んでもらいたいです」
車いす利用者が出先で使おうとした商業施設内の多目的トイレ。ドアを開けたら「この状態」……。困惑する事態に陥ってしまった。設備のベッドが広げられたままで、元に戻されておらず、「中に入ることも、ベッドを戻すこともできない」。トイレの入り口の前で困り果ててしまったのだ。日常生活において求められる心遣いと配慮。当事者に話を聞いた。
車いすの当事者は、難病の「後縦靭帯骨化症」を患い、2011年から歩行が困難になった。「病気の影響で握力もかなり弱く、現在要介護2認定です」という。
今回のトイレでの立往生。偶然通りがかった人がベッドを戻してくれたことで、なんとかトイレを済ますことができたという。SNSで「今日一番困ったこと」と報告し、「どうかお願いします。多目的トイレのベッドは使用後、元に戻しておいてください」と切なる思いを書き込んだ。
当事者は「多目的トイレの中にある介護用ベッドやベビーベッドの使用後は、元通りに畳んでもらいたいということを周知したいと思いました」と意図を説明する。
さらに、「広がったままだと、配置によっては今回のように中に入れないケースがあります。入ることができても、車いすから便座に移動するためのスペースが確保できないこともあります。付き添いや介助者がいればいいのですが、1人だと利用できなくなり、他の多目的トイレを探すことになります。その場合、施設によっては他に設置されていないこともあるので、緊急時には大惨事になりかねないのです。病院の多目的トイレでも同じ状況に遭遇することがあります」。車いす利用者が直面している切実な実情について教えてくれた。
「今の世の中、声をかけるのは難しいかと思いますが、協力していただけると幸いです」
投稿には「たまに見かけるので戻しておく。介助で使う事が多いけど出しっぱなしは本当にダメだよねぇ」「これはひどい 大人も使えるタイプって事は、介助者もいたはずなのに放置って……」「使い終わったら原状復帰。みんなが使う場所では心がけたいですな」など、悩みへの共感や注意喚起を受け止める声が寄せられた。
今回のことだけでなく、日々の生活で、マナー違反に心を痛めることも。「健常者が障がい者用駐車場を占拠してしまう、エレベーターで待っていると後から来た人が先に乗ってしまう……。そういうことがあると悲しくはなりますが、それぞれ事情もあることで、ある程度は仕方ないと思っています」。悩ましい本音を明かす。
バリアフリー仕様のトイレや公共スペースにおいて、設備の使い方には、より一層の配慮が必要になる。
「多目的トイレの利用方法について世間にもっと周知したいです。今回の投稿について、『広げた状態にしておくのが後から使う人にとっていいのでは、という認識で、広げたままにしていた』というコメントをいただきました。それはこちらも気付かない視点だったので、施設や設計側にも、分かりやすい位置にステッカーなりを貼ることをお願いしたいです。介護用ベッドやベビーベッドの使用方法は、畳んだ状態で読めるように貼られていることが多いので、トイレ内の壁面などにも貼ってもらえたらいいな、と思います」。より理解しやすい周知について提案する。
そのうえで、「今回、困っていたら声をかけてくださった方がいたので事なきを得ました。今の世の中、声をかけるのは難しいかと思いますが、もしそういう場面に遭遇したら協力していただけると幸いです」とメッセージを寄せた。