結婚してからも「やっぱりお金の使い方が違い過ぎる」 資産築いた妻と浪費家の夫、すれ違いが激変

投資成功でセミリタイアした人たちの暮らしぶり、配偶者が資産を築く夫婦の“お財布事情”はどうなっているのか。年収300万円の事務職OLから33歳で3000万円の資産を形成し、会社員を卒業して「ゆるFIRE」生活を送っている30代女性は、個人資産約9000万円ながら質素倹約を貫いている。さらには、逆プロポーズで射止めた夫との結婚生活を通して、浪費家だった夫が激変。貯金ゼロの金銭感覚から投資に目覚め、資産運用にチャレンジしているという。投資家夫婦が見る人生の夢とは。

「ゆるFIRE」に取り組むちーさんはミニマリストの生活を送っている【写真:本人提供】
「ゆるFIRE」に取り組むちーさんはミニマリストの生活を送っている【写真:本人提供】

会社員OLを卒業しても働く「ゆるFIRE」 夫は「オルカン一択ですね」

 投資成功でセミリタイアした人たちの暮らしぶり、配偶者が資産を築く夫婦の“お財布事情”はどうなっているのか。年収300万円の事務職OLから33歳で3000万円の資産を形成し、会社員を卒業して「ゆるFIRE」生活を送っている30代女性は、個人資産約9000万円ながら質素倹約を貫いている。さらには、逆プロポーズで射止めた夫との結婚生活を通して、浪費家だった夫が激変。貯金ゼロの金銭感覚から投資に目覚め、資産運用にチャレンジしているという。投資家夫婦が見る人生の夢とは。(取材・文=吉原知也)

 もうすぐ“億り人”の資産家女性はちーさん。自分のために使うお金は「年間40万円」だといい、耳を疑う。「夫婦の生活費は年間500万円ほどで、そのうち個人が自由に使える予算は夫100万円、私40万円ぐらいです。そこまでいかない年もあります」。ミニマリストで物欲はない。必要以上の物を持たず、買わない。

「大きな買い物ですか? 最近iPhoneを買ったことですかね。たまにいいコートが欲しいと思うことがありますが、服を買うのは年に数着です。今持っているもの以上に心ときめくものがなくて(笑)。本当にお金は使わないですね」。徹底したシンプル生活だ。

 20歳の時、ネット証券の広告を見て、「軽いノリ」で投資デビュー。ビギナーズラックもあったが、ライブドアショック(2006年)とリーマンショック(08年)の暴落が直撃。資産は半分以下に減ってしまった。

 とはいえ、就活から建設会社への就職、新入社員として働き始めた時期のことで、仕事に集中し、投資は放置していた。子どもの頃からの夢だった建築デザインの仕事で、最初は事務職採用ながら、資格を取得し、専門職への社内異動を実現させた。休日出勤もいとわない“バリキャリ”として猛烈に働いていた。1人暮らしを始めた頃はごみ屋敷のような“汚部屋”生活を送っていたが、彼氏ができて心機一転で片付けるようになり、20代半ばからミニマリスト志向にライフスタイルが変わっていった。

 2010年頃から本格的に投資を始め、本やネット検索の独学で株式運用に取り組んだ。会社員時代の年収は300万円~600万円。やりがいのある仕事に没頭して倹約生活で少ない支出だけに、年間100万円~300万円の余剰資金を投資に投入できた。

 国内の個別株をメインに、REIT(不動産投資信託)、米国株でも実績を重ね、資産3000万円に到達した30代前半でセミリタイア。時間的な拘束の長い会社員生活と、投資運用による資産の支えによって自由に動ける個人事業主のライフスタイルをてんびんにかけ、後者の道を選んだ。その後はインデックスの投資信託にも乗り出し、資産を増やし続けている。

 多方面で事業を展開。資産運用など情報発信のブログ、YouTubeチャンネル『ちーのゆるFIREな日々』の運営に加えて、著書『自由に生きるためにお金にも働いてもらうことにしました。』(かんき出版)などの著述業にも取り組み、自分のペースで働き続けている。

 大成功の投資人生だ。それでも、「私は試行錯誤しながらいろいろなものに投資をしてきましたが、もし(米国の株価指数)S&P500に絞っていたら、もう億を達成していたと思います」と率直に語る。投資初心者に向けては「私自身もそうでしたが、まずはやってみること。なんでも実践してみないと分からないものです。月5000円の積み立てからでも、まず始めてみてはどうでしょうか」とメッセージを寄せる。

個人資産約9000万円ながら質素倹約を貫く【写真:本人提供】
個人資産約9000万円ながら質素倹約を貫く【写真:本人提供】

「自分たちで設計して建てるマイホームの理想を持っています」

 ゆるFIRE生活に入る直前に、もう1つの決断も。同業者で知り合いだった会社員の夫との結婚だ。

 これがまた、アクティブなちーさんらしい。夫は当時、車購入などいくつかのローンを抱えていた。「ローンのことは知っていて、夫に『私が返します。だから結婚をお願いします』と伝えたんです。逆プロポーズですね(笑)。夫は私の押しに負けたのかな(笑)。でも、夫の人間性が本当に好きで、結婚したいなと素直に思えたんです」。結婚式の費用もちーさんが捻出したという。ウエディング秘話にびっくりだ。

 愛を誓った夫婦と言えど、根本的な価値観の違い、金銭感覚の違いは、大なり小なりあるものだ。そのギャップをどう埋めるか。そこは結婚生活の難しさでもある。

 ちーさん夫婦の場合は、夫はもともと浪費家。外に飲みに行くのが好きで、貯金する習慣が身についていなかったという。

「結婚してからも『やっぱりお金の使い方が違い過ぎる』と感じました。最初は夫婦のお金は別々に分けていました。一緒にしてしまうと、私の収入まで使われて共倒れになってしまう恐れがあったからです。しかし、コロナ禍になって外に飲みに行けなくなり、家飲みがメインになりました。これが大きくて、夫もお金が貯まるようになったんです」

 ちーさんの徹底した倹約ぶりに感化され、ミニマリストの生活スタイルに、夫も自然と近付いていく。

「給料日にマイナスになるかならないか。そんな金銭感覚だった夫が、人生で初めて100万円貯めて、通帳を見て感動していたんです。そこから資産を築く楽しさを知ったようです。それに、今は私が何か買おうとすると、『それ無駄じゃない?』と指摘してくれるほど、物を厳選するようになったんです」。夫の人生観も一変。夫婦で倹約家となったのだ。

 投資に目覚めた夫。2人でまずは新NISAの効果的な運用を追求している。ちなみに、夫が投資しているのは、オール・カントリー(全世界株式の投資信託、通称オルカン)だという。「夫はオルカン一択ですね。もし投資を始めるとしたら、私も一番オススメです」。

 現在はアプリを通して、夫婦で互いの口座や資産運用に関する必要な情報を共有している。夫婦とお金の考え方について、改めて「価値観が近いのであれば一緒にやった方がいいですし、全然違うのであれば別にした方がいいと思います。その夫婦に一番合ったスタイルを見つけることが大事ではないでしょうか」と話す。

 夫婦共働きで仕事を続ける理由。ちーさんは「働く楽しさ、やりがい」を重視し、あくまでセミリタイアの形で、YouTube配信にこだわりを持ってクオリティーを高め、熱量を込めてブログ執筆に励んでいる。それに、将来の子育て費用を見据えており、大きな夢もある。

「自分たちで設計して建てるマイホームの理想を持っています。つい最近夫と話したのですが、将来の家族構成にもよりますが、夫も自営業になることで2人が自由に働けるようになったら、いつか1年の半分を海外で過ごすような二拠点生活も考えています」。確かな人生設計と家族一緒の夢を描きながら、“無駄遣いしない億万長者ライフ”を歩んでいく。

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