「信頼できない人間にはなりたくない」 42歳・真木よう子が守り続ける“マイルール”
俳優の真木よう子がショートドラマ配信アプリ「BUMP」で配信されているドラマ『インスタントループ』に出演中だ。42歳となった今、真木の俳優業に対する思いに徐々に変化が生まれているようだ。個人事務所の代表も務める真木が見据える今後のビジョンに迫った。
40歳超えて変化した意識、徐々に芽生えた“裏方思考”
俳優の真木よう子がショートドラマ配信アプリ「BUMP」で配信されているドラマ『インスタントループ』に出演中だ。42歳となった今、真木の俳優業に対する思いに徐々に変化が生まれているようだ。個人事務所の代表も務める真木が見据える今後のビジョンに迫った。(取材・文=中村彰洋)
――どのような経緯で今回の出演が決まったのでしょうか。
「これまでに現場で何度かご一緒した方がプロデューサーをされていたこともあって、今回のお話をいただきました。新しいものを作ろうとしている自分よりも若い世代の人たちの作品だったので『私でよければお願いします』と二つ返事で快諾しました。
私自身、BUMPというものを今回初めて知りました。私たち世代は知らないけど、Z世代の子たちには人気があるというものも増えてきたと思います。冒険やチャレンジが大好きなので、そういうところに参戦してみるのもいいなと考えました」
――ショートドラマという新しい形となりますが、表現手法の変化をどのように感じていますか。
「私も最近はテレビをほとんど見なくなりました。15歳の娘と一緒に過ごしていると、配信サイトで好きな時間に好きなものを見ることが増えてきました。アニメや2.5次元とジャンルの豊富さにびっくりしますね。若い人たちが注目しているものをどんどん吸収していきたいです。年を取ったからといって、『興味がないから見ない』ということはせず、これからも作品を作る側の人間でいるのであれば、絶対に触れていった方がいいですよね。表現の自由度も広がっていると思います」
――娘さんからいろんなことを吸収されているんですね。
「教わることは多いですね。はやっていると思っていた言葉を私が話すと、『今は誰も使ってない』って言われたり(笑)。娘とのやり取りが面白いです。割とギャル化していて、はやりに乗っている子なので、なんとかついていこうとしている母親がウザいみたいです(笑)」
――ここ数年は実際に母親役を演じられることも増えてきましたね。
「実際の母親とそうではない人の母親では、どうしても違いが出てしまうんです。だから、私にも母親をやっているからこそ出せる“母親オーラ”があると思います。42歳になったので、全く抵抗もないですし、この年齢なりにできる役柄をやっていきたいです。そこに無理はしたくないというのが最近の思いです。
いつまでも『若くてきれい』と言われることはすごいことだと思いますが、それはそういった方々に任せて、私は普通に役者として、人間として生きていきたいんです。これまでの経験がオーラや年輪として表れる年齢にもなってきたので、それを生かしていきたいです」
――考えが変化したタイミングなどがあったのでしょうか。
「年相応のかっこいいお芝居をしている役者さんを見ると、感動するし、尊敬するんです。20代の頃、年輪に嫉妬していた時期もありました。年を重ねて、ただ立っているだけでオーラがあって、説得力がある。『今の私には絶対できない』って。でも、年を重ねれば、『私もいつかはなれる』と希望を持っていたこともありました。いつか私もそう思ってもらえたら役者冥利に尽きますね。あえて年齢には逆らわず、等身大でいたいです」
――年輪やオーラには実際の経験が色濃く反映されるかと思いますが、そのために日々意識されていることはございますか。
「人としても俳優としてもいつまでも成長していきたいです。自分だけは自分をちゃんと信じられるようにしていきたいです。例えば影口を言わないとか、そういった約束事を自分の中で守っています。信頼できない人間にはなりたくないなって。バカ正直で真っすぐで危なっかしいかもしれないけど、そういった芯はしっかりと持っておきたいです。
この年になると、ネガティブなことを考えようと思えばいくらでも出てきますが、そういった側面ばかりに目を向けるのではなく、ポジティブに考えたり、解決策を積極的に考えたりするようにしています。そういった手段を間違えないように気を付けています」
“真木よう子=強い女性”像を今後は変化?「チャンスがあれば面白いことにも」
――あまり裏と表を作らないようにされているんですね。
「多分できないんだと思います(笑)。裏でワーワーやるくらいだったら、表でもワーワーしちゃおうみたいな感じです。全員に好かれようとは思っていないし、好かれるとも思っていません。それでも応援してくれる人たちを大切にしていけたらいいですね」
――パブリックイメージみたいなものを意識することはございますか。
「私のイメージってこれまで“強い女性”みたいなものが割と先行しているなと感じています。でも実際は、家に帰ったらふざけるし、バカなこともやっています。どちらかというと“お笑い担当”みたいな部分もあるんです。コメディーで『あの人の作品に出たいな』と思うこともありますが、『真木よう子ってこんなことやらない』と思われているだろうなとも思います。チャンスがあれば面白いことにも挑戦していきたいです」
――俳優をずっとやりたいという思いは今までもこれからも変わることのないものになるのでしょうか。
「演じることに疲れるとかはないのですが、ずっと人前に立っていることに疲れてしまう時はあります。どんどん新しい才能を持った人たちが出てくる中で、『自分はどのように携わっていけるんだろう』と考えることもあります。これまでに作り手側に回ってほしいというオファーをいただいたこともありました。今までは自発的にやろうと思うことはなかったのですが、いい機会ですし、勉強にもなるので、今後はやってみたいなと思い始めています。もちろん役者も続けていきたいですが、新しい人たちを応援してあげたいという気持ちが湧いてきています」
――演じることにこだわらず、作品を作り上げる中でのいろんな携わり方を考えているということでしょうか。
「そうですね。新しい才能を見つけて、『この子を生かすにはどういう役が1番面白いか』とか考えたりしていきたいです。今も、私の事務所に所属している子がいて、そういったことを考えることもあるのですが、全く苦じゃないんです。自分のことよりも、若い人たちの才能をつなげていく役割に徹するのもいいかなと思っています」
――そのような形が今後広がっていったら、役者との比重が変化していく可能性もあるということですね。
「いつまでも役者をやるかと言われたら、自分の中で確約は持てないんです。それよりも、いろんな作品を見ていて、『この人すごいな』と思う役者さん、監督さんや脚本家さんがいらっしゃるので、そういう人たちとのいろいろなつながりを作っていきたいですね。自分がどこのポジションでそれに携わるかには、そこまでこだわっていないです」
――年齢を重ねられたからこそ、変化した価値観ですね。
「『今の若い子たちは』って言ってしまう大人もたくさんいらっしゃいますよね。その気持ちは分からなくもないのですが、自分が若い時のことを考えると、そう言われるようなものに熱中していたこともありますし、大事なことなんて後から分かってくると思うんです。『今はこれを通る時期なんだな』って分かるので、若い子たちにもそういった道をあえて通らせてあげたいんです。どうしても若い子を見ると、そういうお母さん的な考えになっちゃうんですよね。『あぁ、頑張ってほしいな』って(笑)」