自民惨敗選挙のウラ事情 新人候補の応援に来た大物は“アイドル並み”人気→去った瞬間に聴衆解散
第50回衆院選の投開票が27日に行われ、政権与党・自民党が惨敗を喫する結果となった。“政治とカネ”を巡る裏金問題の逆風が吹き、大失速。一方で、立憲民主党や国民民主党などの野党は議席を大幅に伸ばし、日本の政治に“地殻変動”が起きた。12日間の短期決戦となった今回の選挙。ENCOUNT編集部は、選挙期間中、注目候補者や大物政治家の動向を多角的に取材。記者3人による座談会を通して、意外なエピソードや裏話をお送りする。
「『みんなが聞きたいのは裏金の話』となってしまうことにギャップ」 野党関係者の意外な本音も
第50回衆院選の投開票が27日に行われ、政権与党・自民党が惨敗を喫する結果となった。“政治とカネ”を巡る裏金問題の逆風が吹き、大失速。一方で、立憲民主党や国民民主党などの野党は議席を大幅に伸ばし、日本の政治に“地殻変動”が起きた。12日間の短期決戦となった今回の選挙。ENCOUNT編集部は、選挙期間中、注目候補者や大物政治家の動向を多角的に取材。記者3人による座談会を通して、意外なエピソードや裏話をお送りする。
記者A:街頭演説の現場でひしひしと伝わったのは、自民党の悲壮感だったね。ある候補は焦ったように「野党はヤバイです!」と絶叫して、聴衆から失笑が漏れたり。開票速報を見守った石破茂首相の険しい表情が物語っていた。
記者C:選挙戦最終日が象徴的だったなあ。長らく「党内野党」を自認してきた石破首相の“らしさ”あふれる演説は裏目だった。丸川珠代氏の応援演説で、「こんな国ではなかった」と何度も繰り返して、「こんな国でいいはずがない」「悪口ばかり、足の引っ張り合いばかり」「何が先進国だ」と。この現状批判は、ある意味これまでの自民党政治を全否定する内容にも聞こえたよ。
記者B:結局、皮肉的な結果になったね。その丸川氏は落選。参院からのくら替えがあえなく失敗に終わった。
記者C:丸川氏はガラガラ声で精力的に動き回っていたことは分かったけど、街頭演説の日程を一切明かさない“ステルス選挙”はどうだったのかな。「お助けください」「もう一度チャンスをください」を連呼して、涙の訴え。すっかり“悲劇のヒロイン”だった。
記者B:実は、その裏金問題を追及し、批判を強めてきた野党にもジレンマがあった。丸川氏と同じ東京7区の野党候補は「きちんと政策を訴える選挙をするべきだと思いますが、『みんなが聞きたいのは裏金の話』となってしまうことにギャップを感じています。残念です」と複雑な表情だった。
本来は政権交代の実現、経済政策や社会保障をどうするのか、といった政策論争をしたかったけど、道行く有権者から求められるのは、裏金の話ばかり。そこは野党の候補者としても歯がゆい思いを抱えていた。
多彩ゲストでまるで“公認”の非公認候補も
記者C:“裏金議員”と言えば、東京24区から出馬した、自民党非公認の萩生田光一氏が何かと炎上した。終盤には2000万円の活動費問題も浮上して、燃えまくった。でも、自民関係者や有力者による応援のオンパレードだったな。
記者B:そうそう。非公認とは名ばかりで、街頭演説には自民党の高市早苗前経済安全保障担当相や茂木敏充前幹事長、コバホークこと小林鷹之元経済安全保障担当相らが相次いで参加した。岸田文雄前首相までもが応援に駆け付けて、実質的な“公認”と言った感じだったね。しかも、日本維新の会前代表で前大阪市長の松井一郎氏まで選挙カーの上でマイクを握って……。それでやっとの辛勝だ。
記者A:築き上げた人脈はすごいと思うけど、まさに自民“挙党体制”の応援だった。
記者B:ちなみに萩生田氏に当選を許したのは、野党がまとまりきれないのも大きな原因だった。立憲はジャーナリストの有田芳生氏を起用したけど、同じ選挙区の野党からは評判がイマイチだった。「対立候補として立てるんだったら、あの候補はないだろうと正直思ってる」と報道陣の前で話す候補者もいたよ。
記者C:同じ“裏金非公認”でも東京11区の下村博文氏は落選、厳しい審判が下された。下村氏の第一声は、集まった50人ほどの有権者の9割9分が高齢者。地元では一定の支持層を持つ典型的な自民古株議員の選挙という感じだった。ただ、政治とカネの問題を巡る釈明をしていたけれども、「批判だけで日本がよくなるんでしょうか」と野党に対する非難ばかり。
記者B:一方で、玉木雄一郎代表の国民民主党は獲得議席が4倍増で、勢力が急拡大した。度肝を抜かれたのは、26日夜の東京駅前での演説。東京都知事選への立候補で話題を集めた石丸伸二氏が、いきなり選挙カーに登壇した。自民党との関係や、有名人の候補者擁立など玉木代表の次なる一手に注目。
記者A:れいわ新選組も議席増。街頭演説は代表の山本太郎色が全開だった。ジャズバンドの演奏に合わせて、マシンガントークを繰り出すんだ。演奏の締めとマイクパフォーマンスは息ぴったりで、まるでショーのように感じたよ。来場者からその場で“質疑応答”を募集して山本代表がアドリブで答えるコーナーにも驚かされた。質問と秒数を絞って「30秒間で1問」、時間がなくなってくると「10秒で一問一答」に変更になった。オーバーするとゴング音が鳴ったり、ピンポン音のBGMを使っていたり、テレビ番組みたいだった。
最近の記者会見は特に不祥事会見で質問数の制限に批判の声があるけれど、国政政党の野党が時間を区切ってQ&Aを進行していることに、マスコミ業界人として新鮮な感覚になった。
「アイドル並みの人気」の大物に人々が殺到
記者C:自民で大人気だったのが岸田前首相。新人候補の応援では、警備スタッフの制止もお構いなしで即席サイン会に応じていて、「再登板!」と歓声が上がっていた。ちなみに、岸田前首相が去った瞬間、聴衆のほとんどが解散。肝心の新人候補の演説は3割ほどしか人が残ってなかった。
記者A:岸田前首相のこぼれ話と言えば、もう1つ。ある新人候補の応援演説で、新人候補の人柄やこれまでの実績を紹介する際に、これがまた“かみかみ”で(笑)。うまく話し切れるかなあと、聞いてるこっちが少し心配になった。
記者B:まあ、全国津々浦々、いろいろな候補の応援弁士を務めたからね。
記者A:そうそう。少し間を置いて思い出そうとするようなしぐさが印象的だったな。ちなみに、自分の総理時代の実績については本当に雄弁だった。「新しい資本主義」「異次元の少子化対策」とか、立て板に水のごとく、自分の政策を強調していたよ。
記者B:やっぱり、自慢話は流ちょうになるよな。
記者A:自民では、麻生氏がアイドル並みの人気だった。横浜での最後の街頭演説では、フォーとかワーとか、「長生きしてね」とか歓声が沸いてたよ。握手して回った麻生氏に観衆が殺到して、厳重警備の警察官もどっと駆け付けて……。候補者そっちのけでもみくちゃ状態になっていた(笑)。陣営スタッフは目を丸くしてその光景をただただ眺めていて、どっちが主役なんだろうという気持ちだったと思う。結局、その候補者は落ちちゃったね。