桂三実、NHK新人落語大賞の頂点に 師匠・文枝から事前アドバイスも「1個も採用しませんでした(笑)」
入門15年未満の若手落語家が腕を競うNHK新人落語大賞の本選が26日、都内で行われ、新作落語「早口言葉が邪魔をする」で笑いをさらった上方の落語家、桂三実(2012年入門)が大賞に輝いた。早口言葉をこれでもかと詰め込んだネタで、かむ可能性の高いネタをあえて大舞台にぶつけた理由は「賭けですね」。師匠の桂文枝にも「ネタ見てやるわ、と気にかけたもらった」という今回。気になった点を指摘されたが「1個も採用していない」と笑わせた。
老若男女みなが知っている早口言葉に着目し創作「噛んだら終わりですね」
入門15年未満の若手落語家が腕を競うNHK新人落語大賞の本選が26日、都内で行われ、新作落語「早口言葉が邪魔をする」で笑いをさらった上方の落語家、桂三実(2012年入門)が大賞に輝いた。早口言葉をこれでもかと詰め込んだネタで、かむ可能性の高いネタをあえて大舞台にぶつけた理由は「賭けですね」。師匠の桂文枝にも「ネタ見てやるわ、と気にかけたもらった」という今回。気になった点を指摘されたが「1個も採用していない」と笑わせた。(取材・文=渡邉寧久)
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2年連続の本選出場。今年は過去最高となる130人の落語家が栄光の座を目指してエントリーした。
1次予選、2次予選を突破し、この日の本選に挑んだのは(登場順で)桂九ノ一(16年入門)、鈴々舎美馬(18年入門)、春風亭一花(13年入門)、桂三実(12年入門)、昔昔亭昇(15年入門)、笑福亭笑利(14年入門)の6人。三実は4番目という好位置で、高座を務めた。
「隣の客はよく柿食う客だ」といった老若男女が知っている早口言葉を取り入れた創作。幅広い共通項に着眼したことが勝因のひとつだが、「かんだら終わりですね」という一か八かの側面もある。
かまない心がけは「練習しない方がいい、けいこでは早口言葉の部分だけあまりやらない」と明かし、本選をノーミスでクリア。審査員を務めたフリーアナウンサーの赤江珠緒をして「(早口言葉を)生で一つもトチることなく」と驚かせたほどだ。
昨年、本選に進んだ際は、「アドバイスしたら緊張するから」とあえて遠巻きに見ていた師匠・文枝も、今年は「ネタ見たるわ」と弟子に寄り添ってくれたという。
「ここが気になったけどな、といろいろ言ってくれましたけど、直さんでいいんでって。1個も採用してませんけど、気にかけてくださいました」と感謝し、最初に生報告したい相手は「もちろん師匠です」と即答し、師匠孝行できたことに頬を緩めた。
実はこのネタ、2年前に挑んだ際にも選んだが、予選敗退したという過去を持つ。「再トライしました。早口言葉の状況が現実に起こったらどうやろうな、と発想したネタでしたが、後半がワンパターンでした。親子の関係とか前半に振ったことで、後半を変えることができた。師匠の創作落語は主人公に哀愁があったり、お父さんが困ったりすることがあるので、そういう点がヒントになっている」とバージョンアップの裏に師匠の教えがあることを明かす。「人間味が加わりました」と、自信作に胸を張りつつ、師匠に導かれたありがたみを次のように語る。
「師匠には、常日頃から新作で一番大事なのは作り続けることと言われている。何10本も作った中から1本ぐらい、どこでも使えるネタができる。上方では新作の需要があんまりないので、心が折れかけたんですけど、師匠の言葉で作り続けることができました」
現在までにこしらえた新作落語の数は「93作です。もうすぐ100です」と明かす。「短い新作しか作ってない。30分の新作を作って、(寄席や落語会の)トリを取れる新作を作れる落語家になりたいですね」と目標を掲げた。
ちなみに文枝の弟子がNHK新人演芸大賞を受賞するのは、桂三若、桂三度に続いて3人目。最多記録である。